前置き
私は複数の会社でQAチームのリーダーポジションに就いた経験があり、現在も同様か一歩下がってチームを支えるようなことをやっております。
チームビルディングの手法は調べればすぐに色々な記事が出てくるので、大半の内容はそちらを参考にした方が早いと思いますが、立場上チームビルディングについて考えることが多いので、経験を基にQA現場でどんな手法がチームビルディングに役立っているか、紹介と考察をしてみました。
この記事はマネージャーやリーダーなど主導的にチームビルディングを行える立場を前提に考えて書いています。また、この記事では5人前後のまとめ役についてもリーダーという言葉で扱うことにしています。
「チームビルディング」は、その言葉通りチームを作るということなので、良いチームを目指すことを前提として進めます。風通しが悪いよりは良い方がよいですし、対応が遅いよりは早い方がよい、精度が低いよりは高い方がよい、バグが多いよりは少ないほうがよい。ですよね。
よくあるチームと問題点
大抵の組織ではトップダウンで進めた方が意思決定が早く推進力が高いと思います。QAチームも同様で、リーダーが細かく指示を出す方が効率が良い場合が多く、特にテスト業務ではリーダーが担当範囲を決めて動くことが場合が多いことと思います。
ゲーム系QAなどは人数が多くなり、チームを細分化することが多く、経験の浅い人、纏めるのが不得意な人、適切な判断を下せない人がリーダーをやるという悲惨な現場をよく見かけます。また役割の固定化は縦割り組織になりやすくボトルネックによって意思決定に時間が掛かったり、個々の問題が表面化し辛かったりします。
状況のまとめ
前項を踏まえると、QAチームはトップダウンで動ける方が効率が良いが、人数が増えてくるとリーダーの人手不足問題が出てきます。12年ほど複数のQA組織に属していた経験則ですが、良いチームの共通点を1つだけ上げるなら、リーダー(マネージャー)が良いことです。これは属人化を認めるというよりはリーダーの意向がチームに反映されるという理由からです。このリーダーの意向、判断と言い換えても良いですが、ここが不安定だととたんにチーム内から不協和音が聞こえてきます。
次項ではどのようなことに意識してリーダー不足やチームメンバーの不満を取り除きながらチームビルディングを行っているかをご紹介します。
意識していること
- チーム(グループ)の指針はマインド重視で示す
- リーダー未経験者を積極的に抜擢しても滞りなく業務が回る体制を目指す
- QA現場に必要なスキルセットを提示して教育と共通させる
- 有能なリーダーを引っ張ってくる
実践したことの詳細
チーム(グループ)の指針はマインド重視で示す
- 心理的安全性を感じるわかりやすい言葉を選ぶと良い
- 現在所属している組織では「 機嫌よく働く」という標語を掲げていて、この標語は自身と他者の機嫌のどちらも適用することを前提に考えるように伝えています。このことでチーム内のみならず関係各所と良好な関係を築くべきであるということを伝えられます。
- マインド以外のこと、目標、成果といった業務履行上当然必要なことを前面に推し出すと、そちらを優先するあまり人間関係に悪影響が出て結果としてチームのパフォーマンスが落ちてしまうので注意した方が良いでしょう。
- メンバー各々が意識出来ているかを定期的に確認
- 1on1などを取り入れてチーム指針について話し合い、マインドがズレた方向を向いていないかを定期的に話し合う
- 各々が経験を基に不満を溜めている事が多いので、マインドと合う経験の活かし方を一緒に考える
リーダー未経験者を積極的に抜擢しても滞りなく業務が回る体制を目指す
- 役割としてのリーダーを意識してもらう
- スケジュール、工数管理、折衝などに集中してもらう
- リーダー側の苦労を理解していただくことも目的のひとつ
- 性格分析を行い、その結果を公開して紹介し合う
- お互いの性格を意識して相手を理解しやすい
- 自身の弱点を把握できる
- 性格をタイプで捉えることで個人攻撃に繋がり辛い
- ※診断は エニアグラム と コーチング式タイプ分け を使ってます
- リーダーより能力のある人を補佐に付ける
- 性格的に反目しないレベルでお互いを補える組み合わせが良い
- 補佐の方が能力が高いことをリーダー本人、補佐共に理解してもらう
- 技術的なフォローを選任で行う人を用意する
- 複数のチームを跨って管理やテスト技術をフォローする
- 進捗管理の補佐や相談窓口
QA現場に必要なスキルセットを提示して教育と共通させる
- 以下のカテゴライズでそれぞれ5~10項目程度のチェック項目を設けました
- 管理
- テスト技術
- コミュニケーション
- IT知識 / プログラム知識
- プロダクト知識
- 改善活動
- リーダーシップ
- テスト技術以外もスキルとして捉えることで総合的な評価につなげる
- 定期的に評価とフィードバックを行うことでスキル向上に意識が向く
- 詳細なチェック項目は提示せず求めている方向性を伝えられれば良い
有能なリーダーを引っ張ってくる
- 採用は妥協せずに作りたいチームマインドに合致した人を選ぶ
- 過去の人脈から良い人材を連れてくる
※最後に持ってきているのは、ゼロから立ち上げるより立て直しとして入る状況が多いので、まずは既存のメンバーで構築し、難しい場合に使う切り札としたい
まとめ
実践していることで、満足できない結果が出る場合もあり日々試行錯誤していますが、ゴール(QAの理想やチームの理想)を見据えて何が足りないか、今の状態はどうかを考え、改善していこうという行為自体が有意義で、チームが成長していくのを感じるのは非常に楽しいです。