自分自身の経験を思い出しつつ学習過程を書いてみる。
私自身、先人たちの合格体験記を参考にしながら試験勉強をしてきた経緯もあったので、
いつかは私もそこに加われると良いなと思っていた。
2017年という少し古い情報ながら、合格を目指す方々の参考になれば...。
はじめに
当時の私は金融系SIerのアプリケーションエンジニアという立場であって、
特にNW管理業務に直接携わっていたわけではなかった。
ただ、NW技術との接点としては開発環境の維持管理の一環でNW担当部署にACL申請を書いて提出したりすることはあった。
その関係でNW担当と会話する機会は比較的多かったものの、自分自身のNW技術知識などが足りていないからか、
たまに会話が成立しづらい場面があって、なんとかしようと思っていたことが受験の背景。
別の記事で述べたように先に情報処理安全確保支援士を先に受験し2017年春に合格、
その流れで2017年秋にネットワークスペシャリストを受験してこちらも合格した。
情報処理技術者試験の試験対策本を多数執筆されている三好康之氏も
情報処理安全確保支援士試験とネットワークスペシャリスト試験は必要とされる知識がかなり似通っているので
同時に対策するのが良いようなことを述べられていたが、まさにその通りだったと思う。
私自身、情報処理安全確保支援士試験対策の学習を通じてNW技術に関してもある程度は知識の蓄えができており、
そこを起点にさらにNW技術関連知識を積み上げていった。
応用情報合格水準からいきなりネットワークスペシャリスト試験対策を始める場合は、
後述の学習量では足りないと思うので適宜補うことをお考えいただきたい。
学習のロードマップ
他の高度試験合格時に確立した方法論を適用。
大別するとおおよそ以下4段階で学習を進めた。
1.基礎知識習得フェーズ
2.午前II対策フェーズ
3.午後I対策フェーズ
4.午後II対策フェーズ
学習期間はおおよそ半年ぐらい。
1.基礎知識習得〜2.午前II対策を極力早期に終えて、
3.午後I対策、4.午後II対策にできる限り多くの時間を割くペース配分とした。
1. 基礎知識習得フェーズ
教科書的な本をさらっと一通り読み通す。
瀬戸(2017). 徹底攻略 ネットワークスペシャリスト教科書平成29年度 インプレス

試験範囲を網羅している教科書として購入。
とりあえずARPをキーワードに何冊か読み比べてみて最もわかりやすく解説されている本を選んでみた。
どこに何が書かれてあるか把握する程度にさらっと通読する。
竹下等(2012). マスタリングTCP/IP入門編 第5版 オーム社

名著と名高い一冊。
データリンク層からアプリケーション層に至るまで豊富な図解付きで丹念に解説してある。
この本も通読した後、午前・午後の対策フェーズで不明点が出てきたら戻ってきて再読するような辞書的な使い方をした。
2022年12月現在では第6版が出ているようだ。
購入される場合は最新版を選ばれた方が良いかと思う。
2. 午前II対策フェーズ
IPAが公開している過去問を解んでは答え合わせを繰り返す。
解説を読む時は問題文に対する正解を覚えるのは当然のこととして、
間違いとされる選択肢がなぜ間違いなのか説明できる程度に理解していく。
理解度が足りないと感じるところがあればスポット的に教科書に戻って読み直す。
4〜5年分ぐらい解いていくと、だいたいコンスタントに7割程度取れるようになってきたのでそこで学習終了。
別区分の高度試験の試験対策をしていた頃は、午後対策に完全集中しているうちに
午前の対策効果が薄れてきているのではないか?と不安になって、問題を解き直してみたこともあったが、
初見で8割近いスコアが出て完全に杞憂だったことが判明した経緯があった。
貴重な時間をロスしないためにももう午前対策には戻らない。
3. 午後I対策フェーズ
ようやくここからが試験対策の本番。
個人的にはいかに早く基礎を固めて(≒午後IIでコンスタントに合格点が取れるようになって)
午後問題の対策期間をどれだけ長く確保できるかが合否を分けるポイントになると考えている。
ひたすらIPA公式の過去問を解いては解説を読むことを繰り返す。
左門・平田(2017) ネスペの基礎力 技術評論者

午後対策をするうえでは問題文の読み解き方も含めて丁寧に解説されている本を選ぶのが必須だと考えている。
この本は2017年春試験で出題された過去問の午後問題だけをスコープに、問題文を含めてわかりやすく
丁寧に解説してあり、私の思惑と完全一致していたので購読してみた。
情報処理安全確保支援士の方でも似たようなコンセプトで左門至峰氏の一派が「絶対わかる」シリーズを出版していて、
それが試験対策に非常に有効だったので、そのネットワークスペシャリスト版として迷わず購入。
解説のわかりやすさは素晴らしいのだが、一冊で試験1回分のみの解説となっているのが惜しい点。
私の場合は過去数年にわたって問題を解いて解説を読んでいきたいので、
この場合はこのシリーズの本を全部買っていかなくてはならないことになる。
ということで、このシリーズのバックナンバーで出版されている限り全ての本を順次購入していった。
左門・平田(2016) ネスペ27礎 技術評論社
左門・平田(2015) ネスペ26道 技術評論社
左門・平田(2014) ネスペの剣 技術評論社
時系列に沿って過去に遡りながらひたすら解いては解説を読んでを繰り返した。
一応自宅のPCにWireSharkをインストールしてパケットの中身を見てみる位のことはした。
CCIE試験などだと自宅ラボを構築する勢もいたりするようだが私はそこまではしていない。
「マスタリングTCP/IP」などを読み返しながらPPP、IPv6、VoIP、VLAN、RIP、BGP...etcしっかり基礎を固めていく。
午後Iは制限時間90分で3問出題され、うち2問を選択するので
1問あたりにかけられる時間は最大45分となる。
氏名・受験番号を書いたり問題選択をしたりする余裕も加味すると実際にはもっと短時間で解かなくてはならない。
ただ過去問演習をするうえでは、私自身は制限時間を経過したらそこで切り上げるようなことはせず
たとえ制限時間をオーバーしても一旦最後まで解ききってから解説を読むことにしていた。
心配しなくても、解答スピードも精度も徐々に上がっていく。
演習を繰り返すうちに徐々に1問あたり45分未満で解き切れるようになり
だいたい6割以上の得点が取れるようになってきたところで午後IIの対策も並行して開始する。
午後Iは午後IIと並行しながら進めて「ネスペ」シリーズがカバーしている範囲は全て対策した。
4.午後II対策フェーズ
午後IIの対策の進め方も午前Iと同様。
ひたすら過去問を解いては「ネスペ」シリーズの解説を読むことを繰り返す。
基本的には午後Iであれば単独で問われているテーマを複数絡めて複雑化させているだけで、
しっかり午後I対策をして基礎を固めていれば十分に太刀打ちできる印象。
制限時間も120分だが時間内に解き切れる程度のボリューム感。
(正解できるとは言っていない)
「ネスペ」シリーズがカバーしている範囲は全て対策した。
2016年午後2問2はSDNがテーマとして登場してきていて難しい問題だと言われていたようだが、
意外と問題文が易しくガイドしてくれていて、基礎知識がしっかりしていれば
問題文をじっくり読み解くことで十分太刀打ち可能だなという印象をもった。
試験当日
午前I
免除。
午前II
さすがに余裕。
大幅に時間を余らせて終了。
2周ぐらい見直しをしてそれでも10分ぐらい時間が余って最後はぼーっとしていた。
毎回思うけど最後の10分は退室禁止ルールは撤廃にならないかな。
(解答用紙回収時の混乱防止のためだろうから無理だろうけど)
午後I
問1のSSL-VPNの問題、問2のVDIの問題を選択。
問1では1問目から危殆化したハッシュアルゴリズムの種類だとか、
安全なTLSプロトコルのバージョンだとか、がっつりとセキュリティの知識が問われていた。
あれ?情報処理安全確保支援士と試験区分間違ってない?と思って表紙を見返したほど。
問2でもVDIを導入するセキュリティ上の利点が聞かれたりしていた。
他にも...

もはやネットワークスペシャリスト試験と情報処理安全確保支援士試験との垣根がなくなりつつあるな...
午後II
問1は「SDNとクラウドの活用」というキーワード
前年度もSDNがテーマになっていて意外と太刀打ちできた経験を踏まえて問1を選択。
問題文を読み進める。
1ページ目、2ページ目、3ページ目...
やはり問題文が丹念にガイドしてくれていてちゃんと理解しながら読み進められる。
6ページ目...
ひたすら問題文を読解している。
設問と見比べながら設問と絡む記述がないか探しているがまだ設問と対応する記述が出てこない。
埋めきれたのは配点が低いであろう穴埋め問題ぐらい。
制限時間の4割ぐらいをほぼ読解だけで消化している。
時間配分的に大丈夫だろうか?と不安になりつつも問題文は理解できている手応えはあったので自分を信じて読解を続ける。
11ページ目。
問題文が終わり。
すでに残り時間を6割ほど消化している。
読解の内容を踏まえて順調に解答欄を埋めていく。
あぁなるほど。
思いつかなかった...
概ね解答欄を埋めきって少し見直しをして終了。
あまり時間に余裕がある感じでもなかったな。
結果
2017/12/20合格発表
午後Iの点数は微妙すぎるけど午後IIは7割を確保できた。
おわりに
資格を取ったからといって自分自身の業務内容が変わったりということは特になかったが、
課題意識を感じていたNW担当とのやりとりに関しては完全に対等に進められるようになった。
後日、私の異動でNW担当との窓口を離任することになった時、件のNW担当からは
「え?むらしーさん居なくなっちゃうんですか?○○部門のことなら何でも相談に乗ってもらえてありがたかったのに...!」と残念がってもらえた。
(これは良し悪しか)
また、NW関係の知識が増えたことでNWの知識が必要な書籍は苦もなく読めるようになった点も良かった。
おまけ:今からネットワークスペシャリスト試験を受験するなら
幸いなことに左門至峰氏が「ネスペ」シリーズの執筆を続けてくださっている。
もし私が前提知識のない受験生で今からネットワークスペシャリスト試験を受けるなら、前述の勉強法をなぞるようにして学習を進めると思う。もちろん情報処理安全確保支援士試験と同年度合格を目指す形で。