はじめに
この記事は 3GPP TS38.300(V17.6.0)を読んでいく Advent Calendar 2023
の12/21の記事として執筆したものです。
その他の記事は、Qiitaのアドベントカレンダーページから辿れます↓
https://qiita.com/advent-calendar/2023/3gpp_ts38300
本記事では、"6.1 Layer2 Overview ~ 6.5 SDAP Sublayer"を読んでいきます 5GにおけるL2の仕組みの大枠を、理解できたような気がします。
読んでいく章の原典↓
https://www.tech-invite.com/3m38/toc/tinv-3gpp-38-300_g.html#e-6
※筆者の勘違いなど含まれてる可能性があるので、ぜひ原典もご覧ください
昨年のアドベントカレンダー https://qiita.com/advent-calendar/2022/3gpp_ts23501
内容まとめ
説明のために原典と記載順がやや前後します
1. 5Gにおけるレイヤ2の構造
NRにおけるレイヤ2(L2)の構造を示す前に、L2データフローの図と各プロトコルのざっくり説明を書きます
上位レイヤから来たIPパケットは、各L2レイヤーでヘッダが付与されながら下層レイヤーで処理されていきます。
LTEにおいてフレーム連結機能はRLCで実装されていましたが、NRではMACで実装されています。
各レイヤの機能概要
- SDAP (5Gで新規追加) : QoS flowとData Radio Bearerのマッピング, QFI付与
- PDCP : ヘッダ圧縮/伸長, 順序制御, セキュリティ機能など
- RLC : セグメントARQ(再送制御), シーケンス制御など
- MAC : スケジューリング/優先ハンドリング, 無線リソース割り当て, HARQ(再送制御), フレーム連結、など
UpLink のL2構造
引用 : https://www.tech-invite.com/3m38/toc/tinv-3gpp-38-300_g.html#e-6
Radio Bearers
SDAPレイヤではQoS FlowsをRadio Bearersにマッピングされます。
Radio Bearersは、以下2つの用途別に分かれます
- data radio bearers (DRB): ユーザデータ用
- signalling radio bearers (SRB): 制御通信用
論理チャネル
Mac layerでは、論理チャネルをトランスポートチャネルにマッピングします。
論理チャネルの説明と、マッピングの図を以下にまとめます
コントロールチャネル
- Broadcast Control Channel(BCCH): システム制御情報をブロードキャストするDLチャネル
- Paging Control Channel(PCCH): ページングメッセージを送信するDLチャネル
- Common Control Channel(CCCH): UEとネットワーク間で制御情報を転送するチャネル、ネットワークとRRC接続のないUEで使用
- Dedicated Control Channel(DCCH): UEとネットワーク間で専用の制御情報を送受信するポイントツーポイントの双方向チャネル、RRC接続を持つUEで使用
トラフィックチャネル
- Dedicated Traffic Channel(DTCH): 1つのUEに専用のユーザー情報を転送するためのポイントツーポイント・チャネル。DTCHはULとDLの両方で存在できる
図の引用: https://www.nrexplained.com/chmap
2. IAB (Integrated Access Backhaul)
5Gでは、Integrated Access Backhaul(無線アクセス・バックホール統合伝送)と呼ばれる構成が定義されており、IABと呼ばれます。
バックホールとは、基地局からコアネットワークに接続する回線のことを言います。
5Gでは、バックホール部分を無線で実現するための仕様を定義しています。
5G無線の特にミリ波では通信可能エリアが狭いことから、光ファイバを用いたバックホールの数が多くなってしまう問題がる。そのため、ある光ファイバーバックホールに接続された5G基地局の近隣の基地局間を無線で繋ぎバックホールの代わりとする技術である(図-3)
上記の引用: https://www.kendenkyo.or.jp/wordpress_test/wp-content/uploads/2021/08/kisokouza_5G_20210803.pdf
図の引用: https://www.metaswitch.com/knowledge-center/reference/what-is-5g-integrated-access-and-backhaul-iab
用語解説
- IAB Donor : IABノードの親となるノードでCNと接続する機能を持つ, IABノードとバックホールを接続する
- IAB Node
- IAB-MT : IABドナー, 親IABノードに無線アクセス回線(NR Uu)でバックホールを接続する機能
- IAB-DU : UE, 子ノードをアクセスリンクとして接続する機能
IABを含んだL2構成は以下の画像なります。
IABを利用する場合は、先述のL2 sublayerに加えてBAP(Backhaul Adaptation Protocol )というプロトコルが使用されます。
BAP sublayerの機能
- IAPトポロジのルーティング
- 通信の優先制御やQoSBHのために、 "BH RLCチャンネル"に通信をマッピングする
IAB-donorにおける DL U-plane L2構造
図の引用 : https://www.tech-invite.com/3m38/toc/tinv-3gpp-38-300_g.html#e-6
以下は翻訳メモ 6. Layer 2
6.1 overview
5GのLayyer2は以下のサブレイヤーに分かれる
- Medium Access Control (MAC)
- Radio Link Control (RLC)
- Packet Data Convergence Protocol (PDCP)
- Service Data Adaptation Protocol (SDAP)
Radio bearersは用途別に2つに分かれる
- data radio bearers (DRB): ユーザデータ用
- signalling radio bearers (SRB): 制御通信用
IABのために、MAC, RLC, Backhaul Adaptation Protocol (BAP), PDCP, optionally SDAPが含まれている。
BAP sublayerの機能
- IAPトポロジのルーティング
- 通信の優先制御やQoSBHのために、 "BH RLCチャンネル"に通信をマッピングする
IABとは
Integrated Access Backhaul(無線アクセス・バックホール統合伝送)のこと
5G無線の特にミリ波では通信可能エリアが狭いことから、光ファイバを用いたバックホールの数が多くなってしまう問題がる。そのため、ある光ファイバーバックホールに接続された5G基地局の近隣の基地局間を無線で繋ぎバックホールの代わりとする技術である(図-3)
参考:
- https://www.kendenkyo.or.jp/wordpress_test/wp-content/uploads/2021/08/kisokouza_5G_20210803.pdf
- https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol28_3/vol28_3_010jp.pdf
バックホールとは、基地局からコアネットワークに接続する回線のことを言う。
5Gのミリ波帯ではバックホール部分を無線で実現するための規格を定義している。
- IABドナー : IABノードの親となるノードでCNと接続する機能を持つ, IABノードとバックホールを接続する
- IABノード
- IAB-MT : IABドナー, 親IABノードに無線アクセス回線(NR Uu)でバックホールを接続する機能
- IAB-DU : UE, 子ノードをアクセスリンクとして接続する機能
(図に対する説明は特に無し)
6.2 MAC sublayer
6.2.1 Services and Functions
主なMACサブレイヤのサービスと機能
- 論理チャネルとトランスポートチャネルのマッピング
- 同一または異なる論理チャネルに属するMAC SDUをトランスポートブロック(TB)にMultiplexing/demultiplexingし、物理層でトランスポートチャネル上で送受信
- Scheduling information reporting
- HARQ(CAの場合、セルごとに1つのHARQエンティティ)を通じたエラー訂正
- Priority handling : 動的スケジューリングによるUE
- Priority handling : 論理チャネルの優先順位づけによるUE
- Priority handling : UEのオーバーラッピングリソース
- パディング
単一のMACエンティティは、複数の数値、送信タイミング、およびセルをサポート
論理チャネルの優先順位づけにおけるマッピング制限は、論理チャネルがどの数値、セル、および送信タイミングを使用できるかを制御
6.2.2 Logical Channnels(論理チャネル)
論理チャネルは「コントロールチャネル」と「トラフィックチャネル」に分けられる
コントロールチャネル
- Broadcast Control Channel(BCCH): システム制御情報をブロードキャストするDLチャネル
- Paging Control Channel(PCCH): ページングメッセージを送信するDLチャネル
- Common Control Channel(CCCH): UEとネットワーク間で制御情報を転送するチャネル、ネットワークとRRC接続のないUEで使用
- Dedicated Control Channel(DCCH): UEとネットワーク間で専用の制御情報を送受信するポイントツーポイントの双方向チャネル、RRC接続を持つUEで使用
トラフィックチャネル
- Dedicated Traffic Channel(DTCH): 1つのUEに専用のユーザー情報を転送するためのポイントツーポイント・チャネル。DTCHはULとDLの両方で存在できる
6.2.4 HARQ
HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)は、L1でのピア通信を保証する。(データ誤り訂正的な意味?)
物理層が下りリンク/上りリンクの空間多重化(Spatial Multiplexing)で構成されていない場合、HARQプロセスは1つのトランスポートブロック(TB)をサポートする
物理層が下りリンク/上りリンクの空間多重化(Spatial Multiplexing)で構成されている場合、HARQプロセスは1つまたは複数のTBをサポートする
6.3 RLC Sublayer
6.3.1 Transmission modes
RLCサブレイヤは、以下の3つの転送モードを持つ
- Transparent Mode (TM);
- Unacknowledged Mode (UM);
- Acknowledged Mode (AM).
RLCの構成は論理チャネルごとにあり、numerologies(*)および(または)送信期間に依存せず、ARQは論理チャネルが構成されている任意の数値および(または)送信期間で動作できる
numerologiesとは
異なるサブキャリア間隔やシンボル時間などの物理的なパラメータの数値ことと思われる
- SRB0、ページング、およびシステム情報のブロードキャスト : TMモード
- 他のSRB : AMモード
- DRB : UMモード or AMモード
6.3.2 Services and Functions
RLCサブレイヤの主なサービスと機能 (翻訳すると逆にわかりにくいので一部原文まま)
- transmission mode and include:
- 上位レイヤーのPDUの転送;
- Sequence numbering independent of the one in PDCP (UMとAM);
- ARQ(AMのみ)による誤り訂正
- RLC SDUsのセグメンテーション(AM, UM) と リセグメンテーション (AMのみ);
- Reassembly of SDU (AM and UM)
- Duplicate Detection (AM only)
- RLC SDU discard (AM and UM)
- RLC 再確立
- プロトコルエラー検知(AMのみ)
6.3.3 ARQ (Automatic Repeat reQuest)
RLCのARQの特徴
- ARQは、RLCステータスレポートに基づいてRLC SDUまたはRLC SDUセグメントを再送する
- RLCで必要な場合には、RLCステータスレポートはポーリングで使用される
- RLC受信側でも、欠落したRLC SDUまたはRLC SDUセグメントを検出した後に、RLCステータスレポートをトリガーすることができる
6.4 PDCP Sublayer
6.4.1 Services and Functions
- データ転送 (user plane or control plane)
- PDCP SNs(シーケンスナンバー)のメンテナンス
- ROHC protocolのヘッダー圧縮と伸長
- EHC protocolのヘッダー圧縮と伸長
- uplink PDCP SDUsの圧縮と伸長(DEFLATE based UDC only)
- 暗号化と復号
- 整合性保護と検証
- Timer based SDU discard
- For split bearers, routing
- Duplication(多重化?)
- 並べ替えと順序付き配信
- 順序外配信
- 重複廃棄
PDCPは、DLおよびULでCOUNTのwrao around(数値が上限や加減に達した後に巻き戻る)を許可していないため、ネットワークによって発生しないようにする責任がある
たとえば、対応するラジオベアラーの解放および追加やfull configration(文意わからず)の使用など
6.5 SDAP Sublayer
SDAPの主なサービスと機能
- QoS flow と data radio bearer のマッピング
- DLとULパケットの QoS flow ID (QFI)のマーキング
SDAPの単一プロトコルのエンティティは、それぞれの独立したPDUセッションに合わせて設定する