MOVの機械語

MOV AX,BXのようなレジスタ間移動のMOVの機械語は[オペコード] [ModR/M](2バイト)からなります。

MOV 命令オペコード一覧（Mod=11 / レジスタ間）

オペコード	オペランド大きさ	命令形式	意味
`88 /r`	8bit	`MOV r/m8, r8`	レジスタ → レジスタ/メモリ（8bit）
`8A /r`	8bit	`MOV r8, r/m8`	レジスタ/メモリ → レジスタ（8bit）
`89 /r`	16bit	`MOV r/m16, r16`	レジスタ → レジスタ/メモリ（16bit）
`8B /r`	16bit	`MOV r16, r/m16`	レジスタ/メモリ → レジスタ（16bit）

※オペランドが2つともレジスタの場合、2通りのオペコードが存在します。
例えば8bitの場合は下に載せたMod R/M中のreg及びr/mにどちらのレジスタを入れるかによって88と8Aが入れ替わります。

Mod R/Mの構成

フィールド	ビット幅	説明
Mod	2ビット	レジスタ間操作の場合は `11` 固定
reg	3ビット	レジスタを3ビット値で指定
r/m	3ビット	レジスタ若しくはメモリを3ビット値で指定

(レジスタのビット値は下の表を参照)

Mod値

Mod値	意味	例
00	オフセットなし（※BPは例外）	`[BX+SI]`
01	8ビットオフセット	`[BX+SI+5]`
10	16ビットオフセット	`[BX+SI+1000]`
11	レジスタ間移動	`AX ← BX`

今回はレジスタ間移動のみに絞って話を進めるため、Mod=11で固定です。00,01,10は今回使用しません。

レジスタ3ビット値

レジスタ	ビット幅	3ビット値	バイナリ
AL	8bit（下位）	000	000
CL	8bit	001	001
DL	8bit	010	010
BL	8bit	011	011
AH	8bit（上位）	100	100
CH	8bit	101	101
DH	8bit	110	110
BH	8bit	111	111

実際にNASMが生成した機械語

ubuntu@ubuntu:~/kaihatsu/demo$ nasm -f bin demo.asm -o demo.bin
ubuntu@ubuntu:~/kaihatsu/demo$ ndisasm -b 16 demo.bin
00000000  88D8              mov al,bl
00000002  88C8              mov al,cl
00000004  88D0              mov al,dl
00000006  88C3              mov bl,al
00000008  88CB              mov bl,cl
0000000A  88D3              mov bl,dl
0000000C  88C1              mov cl,al
0000000E  88D9              mov cl,bl
00000010  88D1              mov cl,dl
00000012  88FC              mov ah,bh
00000014  88EC              mov ah,ch
00000016  88F4              mov ah,dh
00000018  88E7              mov bh,ah
0000001A  88EF              mov bh,ch
0000001C  88F7              mov bh,dh
0000001E  88E5              mov ch,ah
00000020  88FD              mov ch,bh
00000022  88F5              mov ch,dh

`mov al,bl`が何故`88D8`になるのか

alもblもレジスタなのでMod=11
レジスタ→レジスタへの移動なのでオペコードは88(実際には8Aでも良いのですがそれは下の節で説明します)
3ビット値 AL=000 BL=011
reg=BL
r/m =AL
よって
11 011 000 となり16進数にするとD8となる。
オペコードが88の場合はMOV r/m8, r8であり、BLからALへ代入すると解釈する。

[オペコード]  [Mod][reg][r/m]
   88          11   011  000
               |    |     |
            Mod=11 reg=BL r/m=AL

命令意味: MOV r/m8, r8
          AL ← BL

`mov al,bl`のもう一つの機械語

NASMはオペコードを88として機械語を生成していました。
以下のようにオペコードを8Aにして、regとr/mを逆にすると、8A C3（AL ← BL）になります。

[オペコード]  [Mod][reg][r/m]
   8A          11   000  011
               |    |     |
            Mod=11 reg=AL r/m=BL

命令意味: MOV r/m8, r8
          AL → BL

88D8と8AC3が等しいことを証明するためにMS-DOSのdebugのe命令を用いて実際に16進数で88D8と8AC3を書き込み、u命令で逆アセンブルしたものが以下の写真になります。
機械語は違いますがどちらもmov al,blとなっています。

NASM