エンジニアも (エンジニアこそ?) 当然避けては通れない人事考課。フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書) | 中原 淳 を読んだのでその感想。
【本書の内容】
第1章 なぜ、あなたの部下は育ってくれないのか?
第2章 部下育成を支える基礎理論 フィードバックの技術 基本編
第3章 フィードバックの技術 実践編
第4章 タイプ&シチュエーション別フィードバックQ&A
第5章 マネジャー自身も成長する! 自己フィードバック・トレーニング
特別コラム 現役マネジャーが語る匿名「フィードバック」経験談
著者について(著者略歴) 中原 淳(なかはら・じゅん)
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授 / 東京大学大学院 学際情報学府(兼任) / 大阪大学博士(人間科学)
「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」
職場で流行って知った本。
例えば上司自身も意図にそぐわず、部下にとって意に反した結果となった人事査定を伝えなければならないケースが有る。耳の痛いことに上司自身も納得できていない場合どういう気持でそれを伝えればよいのか?そんな疑問を持ちながら読み始めた本書である。以下響いた部分をピックアップした読書感想文です。
フィードバックとは
「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」
1. 情報通知
- ティーチング的
- 部下のパフォーマンスなどに対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)
2. 立て直し
- コーチング的
- 自己のパフォーマンスなどを認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画を建てる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)
近年の特徴
マネジャーの悩みが増えていること、ニーズが高まっていること、ハラスメントに対する意識が過剰に高まったこと
→何も言わないほうが得策、と考える人が出てくるのも無理はない
しかし、フィードバックは、「科学知」と「実践知」が融合してようやく語り得る分野
- 部下育成やフィードバックの基礎的な理論、学問的な知見(科学知)
- 現場のマネジャーからヒアリングを通して抽出した実践的な知見(実践知)
2つをバランスよく盛り込むこと。
実践編(目次)
5つのチェックポイント
- あなたは、相手としっかりと向き合っているか?
- あなたは、ロジカルに事実を通知できているか?
- あなたは、部下の反応を見ることができているか?
- あなたは、部下の立て直しをサポートできているか?
- あなたは、再発予防策を立てているか?
Tips
- フィードバック前には必ず「脳内予行演習」
- フィードバックの内容も記録する
- 耳の痛いことを行った後で無駄に褒めない
- フィードバックは「即時」と「移行期」にこそ行う
- フィードバックで沈黙されたときには時空間を変える
- フィードバックがもたらす強烈なストレスと向き合うには?
- 「嫌われるのも仕方がない」という覚悟を持とう
- どうしてもフィードバックが難しいときもある
第一章: なぜあなたの部下は育ってくれないのか?
- 具体的エピソード
- そもそもマネジャーは社内調整や人間関係のトラブルと言った「ただちには白黒つけられない難しい問題」の解決を迫られる役職。
- 近年マネジャーは「マネージングプレーヤー」という職位ではなくプレーヤーに求められる役割になってしまった。
- 今の若手社員は、パワハラやセクハラなど、「ハラスメント」にすごく敏感
- ポストバブル世代の孤独
- ピープル軸のプロセス
- 業務支援
- いわゆるOJTの項目
- 教えること、助言すること
- 内省支援
- 振り返りを促してあげる
- 客観的な意見を言って、気づかせる
- 精神支援
- 励まし、褒めること
- 感情のケアをする
- 業務支援
第二章: フィードバックの流れ
- 【事前】情報収集
- 信頼性の確保
- 事実通知
- 問題行動の腹落とし
- 振り返り支援
- 期待通知
- 【事後】フォローアップ
0. 情報収集
- 情報収集のSBI
- Situation(シチュエーション/どのような状況で、どんな状況のときに)
- Behavior(ビヘイビア/どんなふるまいが、行動が)
- Impact(インパクト/どんな影響をもたらしたか、何がだめだったか)
- 常にメモれ
1. 信頼性の確保
- もちろん普段から相互理解は進めておくべき
- 最低でも相手の意思をリスペクトする態度から始めるべき
2. 事実通知
- 目的をストレートに述べること
- 一緒に改善策・打開策をみつけるんだ。だから正直に言うんだ
- 「私には、先日のあなたの行動は○○のように見えるけど、どう思う?」という聞き方も良い。まず事実を相互で客観的にしていく
3. 問題行動の腹落とし
- 対話をもって相手の理解を得る
- 相互の理解が一致する段階まで
- 今の現状が目指すべき目標とかけ離れていることを認識してもらうこと
4. 振り返り支援
- 部下自身に自分の過去・現在の状況を「言葉にさせること」
- What?(何が起こったのか)
- So what?(それはなぜなのか)
- Now what?(これからどうするのか)
5. 期待通知
- 上司がしっかりと期待を伝えること
- 継続的に向き合え
- 再発予防
6. フォローアップ
- 手間暇かける
第三章: フィードバックの技術
- 冒頭の「5つのチェックポイント」
- フィードバック後も「1on1」などの面談を定期的に行い、フォローし続けること
フィードバックをしても変わらない部下がいるのは事実
- フィードバックには期限を設ける
- 相手は「変わらない」を選択している
- 感覚的には3~4回で変わらなければしかたない
- そうなったら外科手術(配置転換、降格、リストラ
- もちろん、安易に外科手術に走ってはいけない。まずは部下の成長を信じて期待し、フィードバックを与え続ける
第四章: タイプ&シチュエーション別フィードバックQ&A
- 人から指摘される痛みを最近味わってないなという人がいたら、それは自分の実力がついたからというより、成長が止まりつつある危険信号
- ティーチングとかコーチングとかどうでもよい。成長に焦点あたっていればなんでもいい。そんなことよりフィードバック
- コンフォートゾーンにいさせるな。常にラーニングゾーン(ストレッチゾーン)におけ
- 成長を期待しているが故にストレートにフィードバックを今からしますって言うような前置きで心理的な安全性を一部担保するべき
- 一番誠実なのは「相手の気持ちを考えたうえではっきり伝えること」でしかない
- 率直なフィードバックをしないのは「不誠実」
- 怒った相手へのフィードバックは「そんなに怒るということは、こうした方がいいという強い思いがあるんだよね。それを聞かせてくれないかな」
- 無理に話そうとしないで相手に喋らせておけば落ち着きを取り戻す
- フィードバックは場数。シャドーフィードバックもやるべきだし、フィードバックした自分の点数を自分につけて振り返るべき
あとは実践あるのみ...
環境が変われば仕事の質が変わることもよくある
第五章: マネジャー自身も成長する
上司と部下の間のフィードバックを高めていくことは、個人だけが努力しなければならない問題ではなく、組織が本気で取り組んでいかねばならない課題。
経営者や人事責任者は、フィードバックを現場のマネジャー任せにするのではなく、自らも立ち上がり、自らの組織をフィードバックに満ち溢れた組織にする責務がある。
良きフィードバックの中にあれ!
そして人生は続く。
まとめ (感想文まとめ)
読みやすく、頭の中が整理できる本だった。
冒頭の私の疑問「上司も部下の査定結果が不本意なときはどうするんだろう」に関して私なりの答えは、いずれにしても上司と部下と、目線を合わせて、一緒にその「バグ」をとりにいきたいよね、という感じであった。
筆者: 中原氏
http://www.nakahara-lab.net/
https://twitter.com/nakaharajun