今回は、Ethereum DAOへの<期待>を書く
Bitcoin改的な取組みは普及するか、を自分なりに考察してみるシリーズ。
今回は、EthereumのDAO(Distributed Autonomous Organization)のへの個人的な期待を書いておきたい。
"非技術的な考察"とタイトルに入れたものの、技術的ソリューションへの批判的な指摘(いわゆる批評)については、まずは実際にお試ししてみた上で行うのが筋と思っている。
ただ、今回取り上げるEthereum DAOは、その名の通り、Distributed(分散的)で、Autonomous(自律的)なOrganization(組織体)の作るためのもの。
単にDAOサーバーを立ちあげてみた、というレベルではなく、実際に機能するOrganization(組織体)をEthereumをベースとしたシステムによって運営することにある程度トライした上ではじめて"お試し"してみたと言えるだろう(そして、その組織体が安定的にEthereum DAOに基づいて運営された場合を、Ethereum DAOが実稼働しているということになるだろう)。...お試しの敷居は、なかなか高い。
ということで、サーバ構築と組織立ち上げの試行錯誤を終えた上で、まともな考察ができるものと覚悟した上で、まずはお試しに向かう気分を盛り上げるために、(非現実的ではない程度に)肯定的・楽天的にEthereum DAOへの期待を書き初め。
今回も勢いで書くので、BGMは、ミリオン超えアニソンのひとつ、『Grilletto(トリガ)』あたりで:
限界なんて自分次第、リミッターを外して。
Nobady knows もう誰も、この先を知らない。
信じては裏切られてる、見渡せばいつでも。
Nobady else もう誰かに、頼るのはやめて。
...ねぇ次のカードをひいてみて。
勝つのはさぁどっちだ?。
原作では、勝つのはお兄様と決まっているようですが...
前提とする動向 : FintechnewsによるCommerzVentures Report紹介
スイスのFintechnewsは、CommerzVentures社の新たなホワイトペーパーを、『ブロックチェーン、新たな決済システム、そしてAIといった技術動向が、IoT(またはindustry4.0)やドローンの普及と紐づくことで起きるであろう保険産業の変革』、というにが起こるという観点から、紹介している(CommerzVentures Report: Blockchain Tech, Wearables & AI to Transform Insurance, April 26, 2016)
金融機関と保険産業のグローバルな比較など、紹介の委細は元記事を読んでいただくとして、ここでは、元記事から印象的な図式を引用しておく。
読み解くと、
- Webのデータが多量に蓄積された社会において、さまざまなセンサーを積んだドローンやウェアラブルデバイスなどのconnected deviceが普及するとデータ量とその組み合わせがさらに爆発的に増大(いわゆるエッジヘビーデータ)
- AIや新たな決済システムがこれらのデータ群と紐づく。ぁ、Fintechのニュースだから、ブロックチェーンがデータ群の非改ざん性を保証するってことも付言しておくよ。
といった感じ。
ドローンやウェアラブルデバイスなどが構成するセンサーネットワークもたらすデータは、"フィールドデータ"ということができるだろう。フィールドの実データは、予測の精度を上げ、多くの場合、保険の守備範囲を広げる(アメリカの大規模農業における天気予報と紐付いた保険が古典的な事例かな)。
DAOの存続可能性と<保険>
才気あふれる10代の呼びかけで誕生したEthereumチームは、当初から、Ethereum ContractのDAOへの適用可能性について言及していた。自分の理解したところとしては、契約書本体と、その適切(又は不適切)な履行過程とをすべてブロックチェーンに記録することで、可監査性を上げ、分散的な組織の運営コストを自律的に下げる可能性がある、といったところ。
現時点でのEthereumホワイトペーパー日本語版によると、
分散型自律組織 Decentralized autonomous organization (DAO) とは、一般に、『会員あるいは株主が、67%以上の多数派を占めると、contract コードの修正や、資金の消費が可能となる、仮想団体』とのこと。その上で、このDAO をコード化する方法は、概要、
それは「もし、2/3の会員が賛同すれば、変更する」といった (規約/定款の)自己修正コード
とされる。
法人の定款を扱うにおいても、持ち分比2/3の賛同が必要という、強行法規(国家が定める商法/会社法等のルール)を定める国は多い。DAO、又はその会社形態であるDACorp(decentralized autonomous corporation)について、自己修正のディフォルト値が2/3という契約コード雛形はたしかにありうるだろう。
ただし、DAO/DACorpの対人関係は、分散型という性質から、既存組織より、より”疎”なものとなりやすい(既存の会社、特に大企業に”縛られたくない”人が、DAO/DACorpなどに惹きつけられやすいわけで)。このことは、既存会社等の企業内政治とは、別種の組織統治状況を生みやすいことを意味すると考えられる。なんていうか、内部対立が過激になりやすいというか(…先例については後ほど)。…そのため、既存会社において安定株主兼良識ある株主(?)にあたる持ち分がDAO/DACorp(以下、長ったらしいのでDAO等)内に存在することが望ましいと考えられる。
こうした安定株主的な存在をDAO等の中に以下に確保するかは、Ethereumのブロックチェーンの技術的なところ(例、PpWかPoSか)よりも重要なところと考える。Ethereum DAOサーバが安定稼働していたとしても、組織内対立で定款が自己修正されまくりでは、DAO等は安定的に運営されれないだろうということで…
AI DAO !?
この点について、2年前はあんま踏み込んで考えなかったのだけれども、今ならば1つのソリューションを作り出せる気がしている。それは、端的に、DAOに関するフィールドデータを解釈するアプリ(AIアプリ)に、一定条件下での議決権を与えるルールを設定すること。
(今、自分が関与するようになった)果樹園産地存続プロジェクトを例にすると、特定の圃場(果樹林)のプロジェクトマネージャーの指名投票に関しては、プロマネ候補の実績データを気候データとひも付けた解釈に、一定の投票権を認める、など。要するに、組織が客観的と認めたルールの下で結果を出している人をきちんと評価するメカニズムをDAO等に導入するということ。一説によると、何らかの権力欲ある(?)男性の多くの嫉妬は50歳代にピークに達するのだとか(…おそらくは男性社会で闘うキャリアウーマンも!?)。こうした人々は社会的地位を築いていることも多い。こうした人々のパワーは、DAOにとっては諸刃の刃。手綱を付ける意味で、客観データによる判断をベースとしたい。
多量のフィールドデータと、それに基づく新たな損保スキームが発達するであろう近時の動向(前述)は、その追い風。
じゃあ、**AI付きDAOをベースに保険VBやろうぜ!**ってことになりそうだし、実際それに近いことは始まる(またはもう始まっている)と思う。
が、一気にテック系に走る前に、主に大企業に”縛られたくない”人々が集まってDAOという集まり(アソシエーション)を作る、という出発点について、少し立ち止まって考察しておく必要があると思う。例えば、スタートアップも、主に大企業に”縛られたくない”人々の集まりの場合が多いだろう。スタートアップって、売り上がってない時のピボットや、急に売り上がった時の忙しい時や、その他もろもろの時に、人間関係に問題が起きることがけっこうあるよね。
AI的な意味でハイテク化されたDAOにおいても、時として、ウェットな人間関係の問題で組織が機能しなくなることは、十分に起こりうるケース。
次回 : トランスクリティーク
今回は、AI付きDAOへの期待をちらりと述べたあたりと、DAOという組織でも予想されるウェットな人間関係の問題への言及まで。後者のほう、完全に非技術的な考察に入りました。
次回は、ブロックチェーンなしで自律分散型組織を作ろうとして**痛い内ゲバ(ウェットな人間関係の問題)**に陥ったっぽい、柄谷行人氏呼びかけの取り組みNAM(New Association Movement)と、その理論本『トランスクリティーク』について軽く考察した上で、DAO的アナーキズムの都(?)、ロンドン発のehtereum VBのslock.itのDAOを取り上げたい。
てなことで、終わりはSex PistolsのアナーキーインザUKで、と思ったが、最近はアナーキーインザJKなんだね。...眼帯にツインテール、似あわねぇ〜