〜それは未来への贈り物〜
個人開発する若者たちに聞いてもらいたいお話
半年ほど前、老後の楽しみにアプリ開発を始め、
「タブレットは文具」を目指して、子ども向けアプリを作っている。
人生初リリースは
Flutter大学共同開発第五期の「はじめてのえにっき」。
そして今日は記事デビュー。
アドベントカレンダーの、しかもイブなので、贈り物の話を書きます。
二部構成です。
前半は11月24日Flutter大学共同勉強会での発表をまとめています。
大学の有料会員であれば
大学アプリからvimeoで見ていただくことができます。
一言で言えば「子どもアプリをどう企画するか」という話です。
後半は「作ったアプリをどう届けるか」について書きました。
リリースはしたけどDLされない、
という悲しい現実に対する一つの提案です。
〜だれもがみんな、子どもだった〜
人生の大半を子どもたちに関わってきて思うのは、
子どもたちはみんな違うということ。
だからアプリを考えるときも、
「子ども一般」ではなく、「あの子」を具体的に考える。
一人一人思い浮かべながら、さまざまな企画を考えるのは楽しい。
アプリ市場は飽和状態、というけれども、
教育系アプリに限って言えば、圧倒的に足りていない。
公教育を支援する大掛かりなアプリはもちろん
現場の教員を支えるアプリも
子ども一人一人の個性を想定したアプリも
どれを取ってもまるっきり飽和などしていない。
いくら少子化でも、子どもは次々生まれ、育ってくるし、
我が子のタブレットに何をダウンロードしたらいいか迷っている
若い保護者も次々と現れるのだから、
需要が滞るということはない。
供給は足らないだけでなく、偏ってもいる。
教育系アプリは果てしないブルーオーシャン。
だからといって、入れ食いで一攫千金、と煽っているわけではない。
というのも、この分野にはいくつかの参入障壁があるからだ。
教育業界の構造的な問題だけでなく、
開発者側が先入観として持っている心理的障壁もある。
「自分は教育の専門家じゃないし」という躊躇だ。
でも、だれだって昔は子どもだったのだ。
だから「教育一般」としてじゃなく、
「あの頃の自分だったら、どんなアプリがほしいかな」
という発想で十分だ。
いや、むしろ、そのほうが大切だ。
大人が与えたいモノじゃなく、
子ども本人がほしいのはどんなアプリだろう。
子どもたちは声なき発注者。
その心に刺さる小さな体験を作りたい。
というわけで、私はこう思うのだ。
個人開発を志す全ての人が、
たった一本ずつでいい、
昔のアナタ自身に贈るアプリを作ったら、
子どもアプリ市場は今よりずっと豊かになり、
昔のアナタに似た今のダレカへの
素晴らしい贈り物になるだろうと。
〜人は物語を買う〜
アプリが製品であり商品(たとえ無料でも)である以上
そこには流通とか小売りとかいう側面があって然るべきだと思うけれども
リアルな物質ではなくデータである、という姿に囚われすぎて
とても変な事態になっている、と私は思う。
アプリを売る場所は全くの寡占状態だ。
「何か作ったんですか、素晴らしい、もちろん置いてあげますよ」
と表向きは優しい。
が、表示序列という先行者利益の障壁は、手の施しようもなく高い。
個人開発のアプリは砂浜に投げられた小石だ。
よっぽど大きいとか、キラキラ光るとか、
そうでもなければ、誰の目にもつかないまま終わることになる。
そんなもんだよ、仕方ないよ、と諦めていないだろうか。
勉強のために作ってみただけさ、とか、嘯いていないだろうか。
試しに、ごく普通の商品のことを考えてみよう。
「妻せつこ」という熊本県産のトマトがある。
農産物が農協に納品され、トマトはただトマトとして流通していた時代から
産直野菜が生まれ、さらに
生産者の写真がパッケージに印刷された「顔の見える」系が流行り、
今は「物語マーケティングの時代」と言われている。
人は商品そのものより、その背後の「物語」を買うのだ。
「妻せつこ」にまつわるどんな物語を人は思い描いて
そのトマトを選ぶのだろう。
そう思って見返せば、AppStoreにもストーリーというコーナーがあるではないか。
そこで取り上げられたら効果絶大だ。
だけど、取り上げてもらうのをただ待っていたって始まらない。
だから、自分たちで取り上げよう。
自分たちでストーリーを作ろう。
それは「こういう技術を使って、こんな工夫をしました」という
エンジニア仲間に向けた情報提供ではない。
こんな人に、こんなシーンで、こんなふうに使ってもらいたい
こんな笑顔の未来を思い描きながら作りました、と
ユーザーに語りかける物語だ。
個人開発者よ、連帯しよう
個々の開発者がてんでばらばらにやっても、効果は薄い。
だから、みんなで物語を持ち寄って、
セレクトショップ(展示だけ)作ったらいいんじゃないか。
見本市、でも、道の駅、でもいい。
そうか、LPカタログ、とかね。
へえ、アプリって、
こんな人たちが、こんなふうに思いながら作っているんだ、と
ユーザーに知ってもらおう。
もしかして、こんなアプリはありますか、みたいな
双方向のコミュニケーションもできたら素敵だ。
とりあえず私は、次のアプリを出したら
たった二冊の「こどもノート」を並べた文具店を
ネット上に開きたいと思っている。
でも、一緒にやるよ、といってくれる人がいたら
別に、文具専門店でなくていい。
おしゃれなセレクトショップを作ろうじゃない。
さあ、個人開発者よ、連帯しよう。
そしてせっかく作ったアプリを、ユーザーの手に届ける工夫をしよう。