はじめに
私が高度情報で1発目に抜いたのはエンベデッドシステムスペシャリストなのですが、この試験に関しては、高度情報の中では結構特殊な試験なので、そもそも「受けない」とか「よくわからん」的な人が多い気がしています。
ただこの試験、逆に統計をみると不思議な感じを受けると思います。
エンベデッドシステムスペシャリストは当然高度試験なのですが、他分野と比べて学生の合格者が一定数コンスタントにいます。(しかも高度情報の対策本が出だす2003~4年より前から受かってる人がいたりしてたわけです。)
その反面、IoTで飯くってるはずの現役エンジニアが受けても受からないという話も聞くのです。これはどういうことなんでしょうか。(誤解を招かないように結論を先に書いておくと、学生のレベルが高かったり低かったりというわけでもないですし、現役でIoTで飯食ってるエンジニアのレベルが高かったり低かったりというわけでもないです。単に試験制度が合う層が、学生に一定数いる、というだけの事なのですが。)
私としては、ここにどうにもギャップがある気がしてまして、いわゆるところの「ITエンジニア」的なもの(想定している層としてはSESとかオープン系とか混ぜた感じです)とエンベデッドシステムスペシャリストの何が違うのか、あまりわかりやすいネット上の情報が無い気がするので書き残しておこうかと。
合格報奨金などで良いお小遣いになる会社もまだまだ多いと思うので、役に立てば幸いです。
まず強く意識しておく事
エンベデッドシステムスペシャリスト試験の説明のHP ( https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/es.html ) には、次のように記載があります。
2.役割と業務
組込みシステムに関するハードウェアとソフトウェアの要求仕様に基づき、組込みシステムの開発工程において、開発・実装・テストを実施する業務に従事し、次の役割を主導的に果たすとともに、下位者を指導する。
(1)組込みシステムを対象として、機能仕様とリアルタイム性を最適に実現するハードウェアとソフトウェアのトレードオフに基づく機能分担を図り、設計書・仕様書の作成を行う。
そう、エンベデッドシステムスペシャリストに対して求められる最重要ポイントは、「ソフトの世界とハードの世界を(ソフトウェア側から)つなげられる」事なのです。
受かるためにやる事
身も蓋もないのですが、ざっくり言うと(やっぱり)3点しかやる事はないです。
- 適当な教科書で基礎打ち
- 午前1、午前2対策
- レベルを上げて物理で殴れ
適当な教科書に費用がかかるのと、過去問印刷に費用がかかる感じはあります。
過去問に関しては、会社が試験取得を推奨してるのであれば会社で刷っちゃうのもいいとおもいます。
(発注先企業の社員でもなければ、請ける時のアピールにも使えますし、資格が取れてプロジェクト的にミスマッチでなければ普通は会社にそれ以上に還元されるので…)
1. 適当な教科書で基礎打ち
他の分野では出てこない「コンピュータ構成要素」「ソフトウェア」「ハードウェア」「システム開発技術」は他の分野の教科書では拾えないです。(例えば伝送路符号とか… NRZ符号やFM符号なんかは磁気券(※よく改札機に通したりするアレ。)などでも使われてたりしますが、実運用で触れる人は極めて少ないでしょうし。)
なので本を買って参考書的に引けるようにしておくことが大事です。(ただし、そもそも内容が大きく変わる分野でもないので、お古を先輩からもらえたりするのであればそれでもいいと思います。本書いてる人には怒られそうですが、毎年買いなおす必要も無いでしょう。)
なお、解答能力を上げるために参考書が要るのは圧倒的に午前2ですが、無いとさっと疑問が解決できないケースはあるので1冊ぐらいは買っておいてよいでしょう。出版社に関しては翔泳社とかメジャーどころであればどこでもいいと思います。見てフィーリングが合うのが大事。
2. 午前1、午前2対策
セスぺ対策で書いたのとほぼ一緒になるのですが、簡単に言うと過去問を7年分ぐらい目途でやりましょう。
紙ベースでやるのなら試験本番とは異なりますが、片面印刷を推奨しておきます。
(※注:理由はミスノートを作るのに都合がいいから。やり方は後述します。)
あまりIPAの試験を受けてない人には認知されていない気がするのですが、
午前1・午前2の多岐選択試験(基本情報や応用情報、セマネの午前もたぶんそう)は
問題と選択肢まですべて一緒の形で、過去問からそっくりそのまま再出題されます。
(※注:そっくりそのまま出てこない場合は新問です。)
また、前回試験の問題で出た問題は出ません。
よって、前々回(2019年の試験受験者に対して、ここを基準に言うと2017年試験)から遡って7年分(2011年試験)ぐらいの過去問をやっておくとサクッと抜けます。
あと、用語を選ばせるタイプの問題はそれらの対策に加えて、各選択肢の
用語の説明を資料なしで半分~6割ぐらい説明できるようになっておくと、
最終的に良い感じだと思います。
(だいたいこうだよね レベルでいいんですが。)
私の過去の感覚だと、
午前1が(試験時間50分+確認25分)×7回
午前2が(試験時間40分+確認20分)×7回
ぐらいを流せば、平均的に7割ぐらい回答できるようになると思います。
はじめはわからない問題が多くて、時間がかかると思いますが、やっていくうちに
過去問で見たことある問題ばかりになるので、そのうち1回30分ぐらいで流せるようになります。
また、各問題に関連性などは全くないので、一回のテストをきっちり終わらせていくよりかは、
時間を決めて、時間になったらバッサリ切って終わるぐらいでも良いのかなと。
なお、間違った問題はA4のルーズリーフにテープのりを使って貼って集約し、
ミスノートを作ると高速に取りこぼしが取れるようになっていきます。
ミスノートはこんな感じです。(下記例はDBスペシャリストのですが。)
テープのりは100均とかでもいいのですが、コクヨのドットライナーがストレスフリーに使えて詰め替えもできるので超楽です。こういうところにはお金を使いましょう。
3. レベルを上げて物理で殴れ
この試験に関しては、現実世界の物理法則とITをつなぐという特性上、午後に関してはこれをやっとけば100%取れるというのが無いんですよね。出題範囲のITがだいたいわかっている前提で、強いて言うのであれば物理のリテラシーがあってそれとITを結び付けられるかが大きい気がしています。
先の「学生の合格者が結構昔からいる」というのもおそらくそこらへんに理由があって、ロボコンとか出てる学生さんだと、嫌でも午後試験で出てくるような事象は幅広く経験できる(というか経験してしまわないと大会に出るレベルに行かないのでは?と思う)ので、解答できてしまうんだろなという気がします。(私も高校が電子科、大学の研究室がフィードバック制御だったので午後の解答は余裕でしたし…)
その上で、そんなことをわざわざ改めてやってられない社会人は要点を抑えて脳内で挙動をシミュレーションしつつ、過去問を3年分ぐらい解いてみるのが良いのではないのかなと思っています。ぱっと思いつく要点は以下にまとめておきますので、ここらへんを気にしつつ解いてみるのが良いのではないかと思います。
・速度と加速度について説明でき、解析・フィードバック方法を説明できるか(要は微分すると一次元下がるので…って事がわかってればよいでしょう。)
・ロボットアーム系の出題は結構多いので、1つの平面のあらゆる方向を向くのに、1周360度、これをXYZ軸で3軸もてると空中のあらゆる方向を向ける事が理解できていて説明できるか(3DCGの極座標系、アフィン変換とかとも絡む感じの概念ですね。)
・自然界にはノイズ源があるのでそれの捌き方(統計でいうところの最大・最小値を捨てて後を平均取るなど)と、そのメリットデメリット(動きが外乱(ノイズ)の影響を受けにくくなる半面、データを得られるのが平準化している時間分だけ遅くなるのでオーバヘッドが発生する みたいな。)
・物理世界には慣性が存在するので、入力があってから出力をフィードバックするまでのタイムラグにも車とか飛行物体は進んでたり動いてたり、外部の状況が変わっていたりする(ので、フィードバック制御等だとオーバーシュートが発生したり…)
・力のつり合いが取れると加速度がなくなったり、車やロボットの移動が止まる。併せて、〇力 ってつくキーワードはだいたい解答できる様に引き出しを作っておく。(重力とか…)
おわりに
セスぺ編が地味に受けている気がするので嬉しくなって続編を書いてみた次第です。セスぺがまだの人はこちらもどうぞ。
https://qiita.com/ditflame/items/21908ef8fb2f9e35d544
ちなみにバリバリの制御系スキルスタックだった私がエンベデッドシステムスペシャリストをしばらく受けるのをためらっていたのは単純にプロジェクトロックインされたくなかったが為です…(オープン系とか業務系システムも開発したかったのですが、組込みのチームにひょんなことから入ってしまってかなり深くまで浸かってた時期がありまして…)
組込みは2010年ぐらいまでやってましたがエンベデッドシステムスペシャリスト取ったのは2014年だったかな。(そんな経緯だったので試験の傾向性はずっと追ってました。)
個人的にはやっぱりIoT系で客観的に刺さりやすい資格というと、今もエンベデッドシステムスペシャリストが頭一つ抜けていると思うので、メリットがあるなら取得する価値はあると思いますし、システムアーキテクトも大問の選択肢にエンベデッド系設問が必ず含まれますし、情報処理技術者試験をバリバリ受けるのであれば取っておくメリットは大きいと感じています。
何か気づいた事があれば追記しますね。