はじめに
5Gの「SA (Stand Alone) 方式」が商用向けだけでなく、個人利用向けにもサービス提供され始めました [1][2]。
これまでの5Gは、「NSA (Non-Stand Alone)」 であり、5Gの機能も限定的でした。しかし、SA方式により、5Gの特徴であるネットワークスライシングも利用できるようになります。
そのネットワークスライシングの概要について、3GPPをベースに整理しました。
なお、あくまで概要の理解を図るため、本記事で出てくる内容については参考として詳細について、3GPP等をご参照いただければと思います。
5G NSA / SA 方式
- NSA (Non-Stand Alone) 方式 [3]
- 非スタンドアローン型のシステム構成であり、4G LTEのコアネットワーク(EPC)と5Gの基地局(en-gNB)とを組み合わせた構成になっています。この構成は、ネットワーク内のインタフェースが4G LTEで使用されているものをそのまま流用できることから、通信事業者や通信機器ベンダーにとって導入障壁が低いことが特徴です。つまり、それだけ早く5Gサービスを導入・展開できることになります。
なお、NSA構成では、端末と基地局が通信する際には、制御信号(コントロールプレーン)に関しては、LTE側の制御機能に依存します。5G側はデータ信号(ユーザープレーン)のみの搬送を行います。
このNSAの5G通信時には、4G LTEと5Gの通信を同時に行う「デュアルコネクティビティ」や、同時に複数の周波数帯での通信を行う「キャリアアグリゲーション」などの技術も使用されます。特に4G LTEと5G NRでのデュアルコネクティビティのことを「LTE-NRデュアルコネクティビティ」と呼ぶこともあります。
- 非スタンドアローン型のシステム構成であり、4G LTEのコアネットワーク(EPC)と5Gの基地局(en-gNB)とを組み合わせた構成になっています。この構成は、ネットワーク内のインタフェースが4G LTEで使用されているものをそのまま流用できることから、通信事業者や通信機器ベンダーにとって導入障壁が低いことが特徴です。つまり、それだけ早く5Gサービスを導入・展開できることになります。
- SA (Stand Alone) 方式 [3]
- スタンドアローンのシステム構成は、コアネットワークも含めて5Gの新しい技術に基づいたものとなります。スタンドアローン5G NRは2番目のNRという意味で「Phase2 NR」と呼ばれることもあります。スタンドアローン型の5Gは、4G LTEのコアネットワークに頼らず、コントロールプレーンとユーザープレーンの両方に5Gを利用します。
ネットワークスライシング
- ネットワークスライシングは、要件に応じて仮想的に独立したネットワークを生成することです。5Gでは、「eMBB」(高速大容量)、「URLLC」(超高信頼低遅延)、「mMTC」(超大量端末)という用件が全く異なる用途をひとつの通信規格でサポートすることになります。回線中に仮想的に独立したネットワークを生成して、それぞれのサービスで求められる要件を満たすネットワークを提供します[3]。
S-NSSAI (Single Network Slice Selection Assistance Information) [4]
- ネットワークスライスは、S-NSSAIで識別され、S-NSSAIは、5GC、5G-RAN、およびUEにわたるネットワークスライスの識別子として使用されます。
- 最大8つの S-NSSAI をUE は持つことができます。
- S-NSSAIは、SST値とSD値から構成されます。
NSSAI (Network Slice Selection Assistance Information)
- S-NSSAIの集合体を「NSSAI」と呼びます。
SST (Slice and Service Type)
- 長さは8ビット(2^8=256)
- SSTは、標準SSTと個別SSTに定義されています。
- 標準SST
- 0~127値
- 1 : eMBB
- 2 : URLLC
- 3 : MIoT
- 4 : V2X
- 5 : HMTC
- 個別SST
- 128~255値
- 事業者が自由に用途を設定できます。
SD (Slice Differentiator)
- オプションの値
- 同一SST内で複数のネットワークスライスを分離するための識別子
NSSAIのタイプ
- Configured NSSAI
- UEに設定されたNSSAI
- Requested NSSAI
- UEが登録要求するNSSAI
- Subscribed S-NSSAI
- UEが加入する加入者情報のS-NSSAI
- Allowed NSSAI
- サービス提供するNSSAI
UE接続登録の手順
UEが5Gネットワークに接続登録するシーケンスが、TS 23.502に記載されています [5]。
本シーケンスでは、様々な条件・ケースの動作が書かれていますが、概要理解として概略を以下に抜粋します。
- (1) UEは、RANに登録要求メッセージを送信します。(Configured NSSAI, Requested NSSAI)
この登録要求メッセージに、PLMN IFやNSSAIなどのUE情報が含まれます。 - (2,3) RANは、Requested NSSAIをもとにAMFを選択して、そのAMFに登録要求メッセージを送信します。
- (8,9) AMFは、SUPIもしくはSUCIをもとにAUSFを選択して、そのAUSFでUEの認証を行います。SUPIは、国際モバイル加入者識別子で、SUCIは、暗号化された加入者識別子。
- (13,14): AMFは、TS 23.501 6.3.9をもとにUDM選択して、UDMに登録を行います。(Subscribed S-NSSAI)
- (21) AMFは、UEに登録許可を送信します。(Allowed NSSAI)
- UE (User Equipment)
- ユーザ端末のこと
- RAN (Radio Access Network)
- アクセスネットワーク
- AMF (Access and Mobility management Function)
- 端末登録や接続管理
- AUSF (Authentication Server Function)
- subscriber認証用サーバ
- UDM (Unified Data Management)
- subscriber関連情報の保持
URSP
URSP (User Equipment Route Selection Policy)は、利用するアプリケーションに応じて使用するスライスを自動的に選択する機能です。
- URSPのルールは、PCFからAMFを介してUEに転送されます。
- URSPは、特定のユーザデータトラフィックをPDU Session接続パラメータにマッピングします。[6]
- SSC Mode Selection Policy(SSCMSP):マッチするアプリケーションをSSCモードに関連付けます。
- Network Slice Selection Policy(NSSP):マッチするアプリケーションをS-NSSAIに関連付けます。
- DNN Selection Policy: マッチするアプリケーションをDNNに関連付けます。
- PDU Session Type Policy: マッチするアプリケーションをPDUセッションタイプに関連付けます。
- Non-Seamless Offload Policy: マッチングアプリケーションを非3GPPアクセス(すなわちPDUセッションの外部) にシームレスにオフロードすることを決定します。
- Access Type preference: マッチするアプリケーションをPDUセッションと確立する必要がある場合、 優先するアクセス・タイプを示します。
- URSPのルール構造は、3GPP TS 23.503 6.6.2.1 に定義されています。
※参考
[1]. https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2023/04/11/6655.html
[2]. https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2022/08/23_00.html
[3]. https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/keyword/1235918.html
[4]. 3GPP TS 23.501 V17.8.0
[5]. 3GPP TS 23.502 V17.8.0
[6]. 3GPP TS 23.503 6.1.2.2.1