【1】情報を記録するって、どういうこと?
私たちがスマートフォンやUSBメモリで扱う**「情報」**とは、基本的には **電気信号(ON / OFF)**の集まりです。
そしてこのON/OFFを実現する基本部品が、MOSトランジスタです。
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【2】MOSトランジスタのしくみ
MOSトランジスタは、電気の流れを「通すか/止めるか」制御できるスイッチです。
◎ 構造:
• 半導体(シリコン)の上に、
• ソース(S)
• ゲート(G)
• ドレイン(D)
という3つの電極があります。
◎ スイッチの動作:
• ゲート(G)に電圧をかけない → 電気が流れない(OFF)
• ゲート(G)に電圧をかける → 電気が流れる(ON)
👉 これは一種のコンデンサ構造で、ゲートの電圧で中の電子の状態を変えるしくみです。
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【3】MOSトランジスタの限界:電源を切ると記憶できない
MOSトランジスタだけでは、常に電圧をかけ続けないと「ON状態」を保てない。
つまり、電源を切ると情報が消えてしまう。
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【4】そこで登場:フラッシュメモリ
フラッシュメモリは、電源を切っても記憶が消えない不思議な装置。
どうしてそんなことができるのか?
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【5】量子力学の出番:トンネル効果
絶縁体は本来、電子が通り抜けられない「壁」ですが、
**量子力学の世界では、電子は「たまに壁をすり抜けてしまう」**ことがあります。
これを トンネル効果 といいます。
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【6】フラッシュメモリの動作原理
• 薄い絶縁膜で囲まれた「浮遊ゲート」に電子を閉じ込める
• 電圧をかけると、電子が絶縁膜を「トンネル効果」で通り抜けて外へ出る
• 電子が逃げることで浮遊ゲートは正に帯電
• この状態が「ON状態」として記憶される
→ 一度この状態を作ってしまえば、電源を切っても電荷が残るので、記憶が保たれる。
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【7】なぜこれがすごいのか?
• 量子力学の知識(トンネル効果)
• ナノスケールの構造制御技術
• 電気のON/OFF制御
この3つを組み合わせることで、親指サイズのメモリに何十ギガバイトもの情報を保存できるようになった。
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🔚 総まとめ(一文で)
フラッシュメモリは、量子力学で説明されるトンネル効果を活かして、電気を使わずに情報を保持する仕組みであり、
MOSトランジスタの限界を超えた、人類の技術的芸術作品である。
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