音響学(基礎)
純音と正弦波
正弦波の基本的な性質には、周期、振幅、周波数がある。純音は単一の周波数成分だけを持ち、スペクトルでは鋭いピークとして表れる。
複合音と倍音構成
複合音は複数の周波数成分から成り、基本周波数とその整数倍の倍音から構成される。音色は倍音の構成比によって変化する。これを利用した加算合成では、複数の正弦波を足し合わせて音を合成する。
音の三要素
音の大きさは振幅に関係し、ラウドネスと呼ばれる。音の高さは周波数によって決まり、ピッチと呼ばれる。音色は波形と倍音構成によって決まり、音の「質感」を決定づける。
音の大きさ
音圧の大きさはデシベル(dB)で表され、相対的な指標である。A特性フィルターは人間の耳の感度に基づいた補正曲線であり、騒音計などで使われる。
音の高さ
周波数(Hz)は音の高さを決定する。楽器の鍵盤と周波数の関係は数学的に規則性があり、ピッチクラスやオクターブの概念によって整理される。
音色の違い
サイン波・矩形波・鋸波・三角波など、波形によって含まれる倍音の構成が異なる。音色の特徴を決定づけるのはこの倍音構造である。
サウンドの仕組み
サンプリング理論
アナログ信号をディジタル化するためには、ナイキストの定理に従い、信号の最高周波数の2倍以上のサンプリング周波数が必要である。サンプリング周波数の設定は、音質とデータ量のバランスを考慮して決定される。
標本化(離散化)
連続的な波形を一定の時間間隔でサンプルすることで、離散的なデータに変換する。これはディジタル処理の第一歩である。
量子化
標本化された信号の振幅を、限られた段階に分けて近似する。ビット数が多いほど細かく表現でき、量子化誤差は小さくなる。
音声ファイルの構造
WAVEファイルなどの音声データ形式は、ヘッダー情報とデータ部から構成される。サンプリング周波数、チャンネル数、ビット深度などが含まれる。
音の合成と再生の基本
音源、DAコンバータ(DAC)、スピーカーなどの機器を経て音が再生される。音の生成には、複数の波形の加算による合成が基本となる。
コンピュータミュージック
音楽記譜と五線譜の読み方
音の高さや長さを視覚的に記録するために使われる。五線譜では、音部記号・拍子記号・音符・休符などが使われる。
音階と音程の理論
長音階(メジャースケール)と短音階(マイナースケール)、および音程の関係に基づいて楽曲は構成される。
音符と休符の時間的長さ
全音符、2分音符、4分音符などの単位により、演奏の長さが決まる。
強弱記号と表現
音楽に表情をつけるために、p(ピアノ)、f(フォルテ)などの記号が用いられる。
拍子と拍の取り方
拍子は一定のリズムを保つための単位で、4/4拍子、3/4拍子などがある。拍とは時間の区切りを示す。
テンポと拍感
BPM(Beats Per Minute)でテンポを表し、楽曲の速さやグルーヴ感に影響を与える。
音楽の三要素
メロディー(旋律)、リズム(時間構造)、ハーモニー(和音構造)によって音楽は構成される。
自動作曲の概念
パターン、ルール、確率的手法などを使って、コンピュータによる自動作曲が可能になる。
MIDIの理論と構造
MIDIの基本仕様
ノート番号で音の高さを、ベロシティで演奏の強さを、プログラムチェンジで音色を指定する。これにより、シンセサイザーや音源の制御が可能になる。
パーカッションマップ
ドラムなどの打楽器音源は、MIDIノート番号ごとに音が割り当てられており、キーボードで演奏することもできる。
MIDIファイルの構造
複数のトラックやタイミング情報を持ち、演奏データとして保存・再生される。
DTMの概念
デスクトップ上で音楽制作を行う環境をDTM(DeskTop Music)と呼び、MIDI信号とソフトウェア音源の連携が重要となる。
ディジタル信号処理(DSP)
周波数分析
フーリエ変換により、時間領域の信号を周波数成分に分解できる。スペクトルとはその分布を示すものである。
スペクトログラム
時間ごとのスペクトルの変化を視覚化することで、音の時間的な特徴と周波数の関係が把握できる。
楽器音の周波数特性
各楽器は固有の倍音構成を持ち、それが音色として現れる。ピアノやバイオリンなどは、特有のスペクトル分布を持つ。
フィルタの種類と設計
ローパスフィルタは低音を通し高音を除去する。ハイパスフィルタは高音を通し低音を除去する。バンドパスフィルタは中間帯域だけを通す。用途に応じて使い分ける。
シンセサイザーの構造と方式
合成方式の分類
加算合成、減算合成、FM合成、物理モデルなどの方式がある。それぞれ異なるアプローチで音を生成する。
アナログシンセの基本回路
VCO(電圧制御発振器)、VCF(電圧制御フィルタ)、LFO(低周波発振器)などが基本となる構成要素である。
基本波形とオシレータ
サイン波、矩形波、鋸波、三角波などの波形を発生するオシレータによって、音の元が作られる。
エンベロープの構成
ADSR(アタック、ディケイ、サステイン、リリース)の4段階で音量の変化を制御する。
各合成法の詳細
加算合成は倍音を足す方式、減算合成は波形から成分を削る方式、FM合成は搬送波と変調波を用いた周波数変調方式である。
カープラス・ストロング法
物理モデルに基づく合成法であり、弦の振動を模擬することで自然な音を再現する。
エフェクターの種類と仕組み
ディストーション
波形を非線形にクリッピングして、歪み成分(倍音)を生み出す。
コンプレッサー
音の振幅の変化を抑え、全体的に均一な音量に整える。
リバーブ
残響を加えることで、音に広がりや空間感を与える。
コーラス・フランジャー
微小な遅延と位相の変調により、音に厚みや動きを与える。
トレモロ・ワウ
LFOによって振幅や周波数を周期的に変調し、音に揺らぎを与える。
ノイズゲート
一定以下の音を遮断することで、無音部分を保つ。
EQ・フィルタ
特定の周波数帯域を強調または除去して、音色を調整する。