序章 n進法と16進数
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1.1 n進法の基本
- n進数の表記法
- 10進数⇄n進数の変換
- 演習問題
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1.2 16進数の応用
- 16進数の表記とアルファベット
- 2進数⇄16進数の相互変換
- コンピュータでの利用例(RGBカラーなど)
- 演習問題
第1章 場合の数と確率
1.1 場合の数
- 集合と要素
- 集合の要素の個数
- 研究:3つの集合の要素の個数
- 場合の数の定義
- 順列
- 組合せ
- 【演習】基本問題
- 研究:重複を許す組合せ
以下は「1.2 確率」の内容をプレーンテキスト形式で整理し、機械学習・AI・工学への応用も併記した学習ノート形式のまとめです。
1.2 確率
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事象と確率の定義
試行:ある操作や観察を1回行うこと。
事象:試行の結果として起こり得る出来事。
確率:
全ての事象が同様に確からしいとき、
P(事象A) = Aに属する場合の数 ÷ 全体の事象の数 -
確率の基本性質
・0 ≤ P(A) ≤ 1
・P(全体) = 1
・P(∅) = 0(空事象)
・加法定理:
P(A ∪ B) = P(A) + P(B) − P(A ∩ B) -
独立な試行とその確率
2つの試行A, Bが独立:
P(A ∩ B) = P(A) × P(B)
→ 複数のイベントが影響を及ぼさないときに適用
※機械学習応用:
特徴量が独立であると仮定した「ナイーブベイズ分類器」で使用
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反復試行と二項分布への道
n回の独立試行で、ある事象Aがk回起こる確率:
P(k回成功) = C(n, k) × p^k × (1−p)^(n−k)
→ 二項分布:Binomial(n, p)
※AI応用:
分類の成功回数や、モデルの正解数などを確率分布として扱う際に使う
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条件付き確率と乗法定理
条件付き確率:
P(A | B) = P(A ∩ B) / P(B)
乗法定理:
P(A ∩ B) = P(B) × P(A | B) = P(A) × P(B | A)
※工学応用:
異常検知、信号の事後確率評価、センサデータのベイズ推定に活用
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研究:原因の確率(逆確率の考え方)
ベイズの定理:
P(A | B) = P(B | A) × P(A) / P(B)
→ 原因を推定するための重要な道具(事後確率)
※AI応用:
ベイズ分類器、生成モデル、医療診断AIなどに広く使われる
例:「病気である確率」=「症状が出たときに病気である確率」
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【演習】基本問題
(1) サイコロを2回投げるとき、「1回目と2回目が同じ目」の確率は?
(2) 赤3個、白2個の玉から2個取り出すとき、2個とも赤の確率は?
(3) ビットが独立に0,1になるとき、"101"が現れる確率は? -
章末問題A・B(応用)
・独立性の判定
・ベイズの定理を使った逆推定問題
・条件付き確率を用いた意思決定
・二項分布を使った精度評価と区間推定
【補足:機械学習・AI・工学への関連まとめ】
項目 | 応用分野 | 説明 |
---|---|---|
確率の定義 | 分類モデル | ラベル確率の推定(softmaxなど) |
独立性 | ナイーブベイズ分類器 | 条件付き独立を仮定し高速に学習 |
条件付き確率 | ベイズ推定・HMM | 状態やラベルの確率的遷移 |
二項分布 | モデル評価 | 正解数の分布としてモデルの信頼度を推定 |
ベイズの定理 | 医療診断AI・センサ融合 | 観測から原因を推定する逆推論 |
第2章 数列
2.1 数列とその和
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数列の定義
ある規則に従って並んだ数の列を数列という。
例:a₁, a₂, a₃, …(添字が番号) -
等差数列
隣り合う項の差が一定の数列。
一般項:aₙ = a + (n−1)d(a:初項, d:公差) -
等差数列の和
初項a、公差d、n項の和:
Sₙ = n × (a + l) / 2 = n × (2a + (n−1)d) / 2 -
等比数列
隣り合う項の比が一定の数列。
一般項:aₙ = a × rⁿ⁻¹(a:初項, r:公比) -
等比数列の和
初項a、公比r、n項の和(r ≠ 1):
Sₙ = a × (1−rⁿ) / (1−r)
(r = 1 のときは Sₙ = a × n)
2.2 いろいろな数列
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Σ(シグマ)記号による和の表現
Σ記号:繰り返し足し算の簡略表現
例:Σ_{k=1}^n k = 1 + 2 + ... + n = n(n+1)/2 -
階差数列
各項の差を取ってできる数列(差分列)
例:aₙ₊₁ − aₙ に注目すると次数を下げていける
→ 数列の一般項を推定するテクニック -
和と一般項の関係
和Sₙから一般項aₙを求める式:
aₙ = Sₙ − Sₙ₋₁
→ 数列の解析における基本手法
2.3 漸化式と数学的帰納法
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漸化式の書き方
aₙ₊₁ を aₙ などで表す式。
例:aₙ₊₁ = aₙ + 3(等差)、aₙ₊₁ = 2aₙ(等比)
※機械学習・工学応用:
・再帰的定義によるアルゴリズム設計(例:RNN、フィルタ)
・状態遷移の定義(マルコフモデル、強化学習)
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数学的帰納法の原理と応用
(1) 初期値で成り立つことを確認
(2) n=k のとき成り立つと仮定し、n=k+1 でも成り立つことを証明
→ 無限に続く命題を一括して証明できる方法
※情報科学応用:
・アルゴリズムの正当性証明
・漸化式を用いた計算量の評価(漸近解析)
第3章 平面上のベクトル
3.1 平面上のベクトルの基礎
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ベクトルとは何か
ベクトルとは、「大きさ(長さ)」と「向き」をもつ量。
2次元空間では、ベクトル $\vec{a} = (a_1, a_2)$ のように座標平面上の矢印として表現。
※線形代数学:
ベクトルは線形空間の元(要素)であり、スカラー倍・加法で閉じる。
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ベクトルの演算
(1) 加法:成分ごとに加える
$\vec{a} + \vec{b} = (a_1 + b_1,\ a_2 + b_2)$
(2) スカラー倍:実数倍
$k \vec{a} = (k a_1,\ k a_2)$
※線形代数学:
ベクトル加法とスカラー倍は線形写像・行列演算の基本操作
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成分表示
ベクトルは基底ベクトル(例:$\vec{i} = (1, 0),\ \vec{j} = (0, 1)$)の線形結合として表現
例:$\vec{a} = 3\vec{i} + 2\vec{j}$ -
内積(スカラー積)
定義:
$\vec{a} \cdot \vec{b} = a_1 b_1 + a_2 b_2$
または $\vec{a} \cdot \vec{b} = |\vec{a}||\vec{b}| \cos\theta$
→ 成す角が 90° のとき、内積 = 0(直交)
※AI応用:
・類似度計算(コサイン類似度)
・ニューラルネットの線形変換(内積は活性化の前段階)
3.2 ベクトルの応用
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位置ベクトル
原点から点P(x, y)へのベクトル
→ $\vec{OP} = (x, y)$
距離や方向をベクトルで直接表現可能 -
図形への応用(平行移動・投影)
(1) 平行移動:
点Aをベクトル$\vec{v}$だけ移動 → 新しい点:A + $\vec{v}$
(2) 射影(プロジェクション):
ベクトル $\vec{a}$ を $\vec{b}$ に射影:
$\mathrm{proj}_{\vec{b}} \vec{a} = \frac{\vec{a} \cdot \vec{b}}{|\vec{b}|^2} \vec{b}$
※機械学習・工学応用:
・**次元削減(PCA)**は射影の繰り返し
・**画像の変換(平行移動・回転)**はベクトル加算・回転行列と同等
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ベクトル方程式による直線・円の表現
(1) 直線:
点Aと方向ベクトル$\vec{d}$を用いて
$\vec{r}(t) = \vec{A} + t \vec{d}$
(2) 円:
中心を $\vec{O}$、半径 $r$ とすると、
$|\vec{r} - \vec{O}| = r$
※AI・工学応用:
・画像解析や衝突判定(collision detection)で頻出
・ロボットの軌道生成や制御空間設計に使われる
【補足:線形代数学・AIとの対応表】
ベクトルの概念 | 線形代数 | 機械学習・AIの応用例 |
---|---|---|
加法・スカラー倍 | ベクトル空間の公理 | パラメータ更新(SGD) |
成分表示 | 基底展開 | 特徴ベクトル・埋め込み |
内積 | 正射影・角度判定 | 類似度(コサイン類似度) |
直線・平面の方程式 | 線形結合 | 線形分類器(SVM、線形回帰) |
射影 | 正規直交分解 | 主成分分析(PCA) |
ベクトルの距離 | ノルム | 損失関数・誤差計測 |
第4章 空間のベクトル
4.1 空間ベクトルの基礎
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空間における直線と平面
3次元空間では、点・直線・平面がベクトルで表現可能。
直線:点Aと方向ベクトル d を使い、
r(t) = A + td
平面:1点と2方向ベクトル(d₁, d₂)の線形結合。 -
3次元座標系
x軸、y軸、z軸の3軸で空間を定義。
点Pは (x, y, z) のように表す。 -
空間ベクトルの定義と成分
空間ベクトル a = (a₁, a₂, a₃)
→ 大きさ:|a| = √(a₁² + a₂² + a₃²) -
内積とその幾何的意味
a・b = a₁b₁ + a₂b₂ + a₃b₃
→ 成す角θとの関係:
a・b = |a||b|cosθ
→ 直交判定、射影計算に応用 -
位置ベクトル
原点Oから点P(x, y, z)へのベクトル
OP = (x, y, z)
→ 距離や方向を一括して扱える
4.2 空間図形への応用
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空間内の距離・角度
・2点間の距離:
|A − B| = √((x₂−x₁)² + (y₂−y₁)² + (z₂−z₁)²)
・2ベクトル間の角度:内積とノルムで計算
→ センサ間の距離、視線角度などに応用 -
平面方程式・直線方程式
・平面:点Aと法線ベクトル n により
n・(r − A) = 0
・直線:点Aと方向ベクトル d により
r(t) = A + td
※工学応用:
・カメラの視野平面や物体の接触面の表現
・CADやロボット工学での幾何計算に使われる
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空間図形の表現
・球面:|r − O| = r
・円:平面上で中心と半径をもつ集合
・直線・平面の交点:連立ベクトル方程式で求める
【補足:機械学習・AI・工学への対応】
空間ベクトルの概念 | 応用分野 | 説明例 |
---|---|---|
直線・平面の式 | 3Dグラフィックス | レイとオブジェクトの交差判定(レイトレーシング) |
距離・角度 | パターン認識 | 顔認識での特徴点間距離、ポーズ推定 |
射影と直交性 | データ圧縮 | 次元削減、線形判別分析(LDA) |
位置ベクトル | ロボット工学 | アームの位置・姿勢の計算 |
空間内運動の解析 | ドローン制御・SLAM | 座標変換やマップ構築に活用 |
第5章 確率分布と統計的推測
5.1 確率分布
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確率変数と分布の概念
確率変数:試行の結果を数値として表したもの
→ 離散型と連続型がある
確率分布:各値に対応する確率を示すもの(例:表など、関数形式)
※AI応用:
分類器の出力(確率スコア)、期待値での予測
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確率変数の平均(期待値)
E[X] = Σ x × P(x)(離散)または ∫ x f(x) dx(連続)
→ 中心的傾向を表す -
分散と標準偏差
Var(X) = E[(X − E[X])²]
標準偏差:σ = √Var(X)
→ 値の散らばり具合を測る
※工学応用:
センサデータのばらつき評価、リスク管理
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確率変数の和・積の性質
E[X + Y] = E[X] + E[Y]
Var(aX + b) = a²Var(X)
独立なとき:E[XY] = E[X]E[Y] -
二項分布
定義:成功確率 p の試行を n 回行い、k 回成功する確率
P(k) = C(n, k) × p^k × (1 − p)^(n − k)
期待値:E[X] = np
分散:Var(X) = np(1 − p)
※AI応用:
バイナリ分類(例:Yes/No)における成功回数のモデリング
5.2 正規分布
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連続確率変数の扱い
確率密度関数 f(x) をもち、区間 [a, b] の確率は ∫ₐᵇ f(x) dx で表す
→ 特定の点の確率は0、面積で評価する -
正規分布の特徴と標準正規分布
正規分布:平均μ、分散σ² のとき
f(x) = (1 / √(2πσ²)) × exp(−(x − μ)² / 2σ²)
標準正規分布:μ = 0, σ = 1
→ Zスコア変換:Z = (X − μ) / σ
※AI・工学応用:
誤差分布のモデル化、正則化、ノイズの仮定(例:回帰分析)
ニューラルネットの初期化や活性化関数の設計にも関与
5.3 統計的推測
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母集団と標本
母集団:全体の集まり
標本:観測や測定で得られた一部のデータ
→ 推測は「標本から母集団へ」を目指す -
点推定・区間推定の基本
点推定:平均や分散などを1つの値で見積もる
区間推定:推定量 ± 信頼区間で範囲を与える
例:95%信頼区間
※機械学習応用:
・モデル精度の評価における不確実性の記述
・A/Bテストにおける差の有意性検定
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仮説検定の入門
帰無仮説 H₀:差がない、効果がないなど
対立仮説 H₁:差がある、効果があるなど
p値:H₀が正しいとしたときの観測結果の確率
→ p < 0.05 でH₀を棄却
※AI応用:
医療診断、異常検知、最適モデル選択の評価に活用
【補足:AI・機械学習・工学への対応表】
項目 | 応用例 | 解説 |
---|---|---|
期待値・分散 | モデル評価、損失の安定性 | バイアス・バリアンス分解にも関与 |
正規分布 | 線形回帰、ノイズ仮定 | 推論の背後にある分布モデルとして使用 |
二項分布 | 分類精度・成功回数モデリング | AUC・ROC曲線などと密接 |
区間推定 | 統計的信頼性 | 機械学習における不確実性定量化 |
仮説検定 | A/Bテスト、モデル比較 | 結果の有意性を数値で評価 |