これは何?
- 中小企業がシステムを導入する際にどんな選択肢があるのか?を考えてみました。
- ロジカルな構成ではなく、主観100%なポエム的な部分がありますので、ご容赦ください。
- Qiitaの対象読者とはちょっと違うかもしれませんが、フルスクラッチ以外でのシステム導入に興味のあるエンジニアさんのお役立ちになれば幸いです。
対象とする中小企業とシステム
中小企業の条件として、(感覚的には)下記の条件が該当します。
- システムの専任担当者がいない(おけない)(≒情報システム部門が無い、あっても力不足?)
- 年商ベースでいけば、100億円未満でしょうか。
- 従業員数が300名以下(中小企業丁の製造業、建設業、運輸業の従業員数定義より)
- 高いお金は払えない(大手ベンダーの見積もりを見て卒倒してしまうレベル)
対象とするシステムとして、(感覚的には)下記の条件が該当します。
- 自社(業界)のオリジナルな業務(=基幹システム)
- POSレジなど代替できるものがあり、選択肢を見るまでも無い様な気がしますが、POSレジ自体が特殊で一般的に出ているシステムではマッチしない場合は選択肢の対象となり得ます。
- メール、チャットなどのコミュニケーション系(情報系)システムは、代替手段がいっぱいありますので、対象外です。
- いわゆる「守りのIT」に所属しどちらかというと保守的な領域(業務)
- AIが得意とするような業務中の作業における予測、分類(判定)(例:手書き文字を電子化してくれる等)などは、業務の効率化(短縮化)にはつながっても、業務自体を変えてしまうケースは少ない気がしています。ですので、この領域は一旦対象外です。(仕事そのものがAIにとって変わられるケースは無くは無いですが。1 )
システム導入を検討する際の選択肢
一般的に図の右側枠に行くに従って費用も高くなりますが、受けるメリットも大きくなります。ただし組み合わせ方や利用人数によっては逆転の可能性もありますので、あくまで「一般的に」ということで。
解説
業務の始まりはやはり定番のExcelではないでしょうか。
そこから、複数同時に編集したい、外出先でもみたい(スマホ・タブレットへの対応)、マスター管理したい、役職に応じて見られる・見られないを管理したい(権限管理)、ワークフローを入れたい、業務ロジックを入れたい(人手で判断していくのが大変)・・・など要求が増えてくると、次のシステムを検討します。
「次のシステム」をどう考えていくか、ということに焦点を当てて考えていきたいと思います。
デスクトップ型のデータベースソフトウェア
企業で使われているデータベースソフトウェアの老舗(定番)といえば、下記2つに代表されるデスクトップ型のデータベースソフトウェアではないでしょうか?
該当するツール/製品(一例)
- マイクロソフト社 Access
- File Maker社(Apple社の100%子会社)File Maker
その他
Accessは、Officeに付属していて開発し易い(導入し易い)メリットが大きいですが、どうしても複数人数で利用するとファイルが壊れてしまうことが多く、業務がスケールしていくとボトルネックになりがちですね・・・
Accessは1995年、File Makerは1985年ととても歴史のあるデータベースソフトウェアです。
便宜上デスクトップ型と命名しましたが、File Makerではタブレットやスマートフォンからも閲覧できる仕組みを備えています。
その昔は、ここの領域にいろいろなソフトウェアがありましたが、今では名前も聞かないものがいっぱいあると思います。(例:Lotus Approach、ヴァル研究所 ナイル 等)
WebベースのシンプルなDB
WebベースでExcel + マスタデータ + α の管理ができるといった程度のソフトウェアが登場しています。αの部分はソフトウェアに応じて、カレンダー表示ができたり、帳票のテンプレートにデータをバインドすることができたり、履歴管理など様々あります。
該当するツール/製品(一例)
- カジトリ社 Exment (オープンソース)
- インプリム社 Pleasanter (オープンソース)
Webベースの高機能なDB
オープンソースのシンプルなDBの機能に加えて、ワークフロー申請など高機能さがウリです。
さすがにここまで来るとオープンソースではなく、有償でのソフトウェア(サービス)になります。各種サービスでそれぞれの特徴がありますので、詳細は割愛します。
該当するツール/製品(一例)
- ラクス社 働くDB
- ネオジャパン社 Desknet's NEO
- ドリーム・アーツ社 Sm@rtDB
- サイボウズ社 kintone
- GrapeCity社 Forguncy
kintoneはプラグインを導入し独自にカスタマイズすることが可能です。
業界(業種)特化型のパッケージやERP
特定の業務(業種)、業界に特化して、そこで利用される機能を標準的に用意したソフトウェア(サービス)です。パッケージやERPの説明は、他のページでも散々されているかと思いますので、詳細は割愛します。
これも業務(業種)、業界に応じて様々あるので、自社に合うものがあれば導入するメリットが大きいですが、自社にフィットしない部分をカスタマイズするとその分だけパッケージの良さは失われていく2(=アップデートを受けられない、保守費用が向上する)のでトレードオフです。パッケージやERPはいかに標準機能を使うか(=業務をパッケージやERPに寄せるか)という点が大事になりますが、その点の見極めが重要です。
該当するツール/製品(一例)
- セールスフォース・ドットコム社 Sales Force
- SAPジャパン社 SAP
- オービックビジネスコンサルタント社 奉行ERP
- GRANDIT社 GRANDIT
その他
Sales Fource や SAPには、機能拡張のアドオンだけでなく、アプリケーション開発のプラットフォームとして利用できます。
- Sales Force : Lightning Platform
- SAP : Cloud Platform
ローコード開発ツール
フルスクラッチ開発の前に1つ検討すべき選択肢として、「ローコード開発ツール」があると考えます。ローコード開発ツールは、パッケージやERPのように業務自体を標準化する思考ではなく、システム(ソフトウェア)アーキテクチャ(=ソフトウェアを実現する仕掛け)を標準化する考え方だと思っています。ローコード開発ツールが提供する標準的な考え方に沿って作ることで、効率的に作れる(生産性が高く作れる)ということになります。パッケージやERPと同じでツールの趣旨に合う作り方(用意されている標準部品を徹底的に利用する)をすれば効率的ですが、作り方に合わないものは、できない or 余分なコストがかかるということになります。また、フルスクラッチと違い、ローコード開発ツール自体はプロプライエタリなものが多く(私の知る限り)、ツール自体の利用料が取られるため、固定費となってしまう点に注意が必要です。
具体的に言えば、Webシステムであること、基本表形式のデータを管理することを制約として、業務にありがちな、検索画面(一覧画面)、詳細画面などが容易に作れるようになっています。一方で、業務にはあまりないような「LINEの様なチャットの画面3」と「Twitterのようにリアルタイムにタイムラインが出てくる」のような一般的な業務にあまりないような画面構成では、「できなくは無いがカスタマイズが必要」ということになり、本領発揮とはいかないでしょう。
該当するツール/製品(一例)
- 住友電工情報システム社 楽々Framework
- ジャスミンソフト社 Wagby
- GeneXus S.A.社 GeneXus
- キヤノンITソリューションズ社 Web Performer
その他
情報収集には、ローコード開発コミュニティ を参照されると良いかと思います。
フルスクラッチ
様々な言語、フレームワーク、アーキテクチャ、実行環境(クラウド、オンプレミス、ハイブリッドクラウド)が選択できます。
エンジニアとしては自由度が高く(選択肢が多く)、楽しい領域ではあります。ワクワクしますね。
いずれにせよこの領域は、構築費用が高く、中小企業では費用対効果が出しにくい領域ではないかと考えています。
この領域で費用対効果を高めるには、エンジニアのスキルレベル、開発委託会社の得意領域などが関わってくると思います。
RPA(Robotics Process Automation)
少し番外編で、既存システムには手を入れずに、新しい価値を手に入れる方法です。
RPAは、既存のシステムには手を入れず、UI操作の自動化を行い(+メール送付や定型フォルダ格納などの良くある作業のライブラリ化も含めて)、人手で行う定型的な作業を、プログラミングして自動化させ生産性を向上させるツールたちだと思っています。
本来、既存システムに手を入れて業務にフィットさせるべき業務ですが、様々な事情で(だいたいはお金)既存システムに手を入れられない場合に利用すると考えています。つまり、既存システムを塩漬けにしつつも、作業を効率化できるということです。
ただし、人手で行う定型的な作業そのものをプログラミング(自動化させる)ための作業も必要で、それ自体も保守していく必要があることに注意が必要ではないかと考えています。
該当するツール/製品(一例)
- UiPath社 UiPath
- Blue Prism社 Blue Prism
- Automation Anywhere社 Automation Anywhere
まとめ
- 発注する場合は 発注ナビ、アイミツ などの外注先をうまく探されることをオススメします。
- 外注先がどんな提案をしてきているのか、この選択肢に照らし合わせてみると、どういう位置づけの提案なのか分かるかと思います。自社やクライアントの解決したい内容と制約事項を勘案して、適切なシステム導入に導いていく一助になれば幸いです。
- SAPやSales Forceは一般的に高いイメージがありますが利用人数によって安く済む場合もあります。
- 逆にkintoneを利用しても1人あたりの利用料は安くてもプラグインを利用していくと結果的に高いといったことも考えられます。
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「最近はAIが画像で癌の可能性を指摘し病理で癌が確定した後に、何度該当部位を目で読影しても何をもって癌と判断したか分からないケースが増えてきたと」https://togetter.com/li/1399804 ↩
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SAPの2025年問題に有名ですね。 ↩
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いわゆる Conversational UIというもの ↩