IT企業に勤めて30年ほどがたち、その間日本で12年、アメリカに5年、ドイツで13年ほどになります。最近までドイツでSRE/クラウドエンジニアしていました。
今回、転職をして日本へ帰国することになったので、そこでの体験談を紹介したいと思います。
応募した企業や具体的な面接等での話は、公にできませんので大体こんな感じ程度で参考として受け取っていただければと思います。
履歴書と職務経歴書の作成
まずは、履歴書と職務経歴書の作成の作成から始めました。日本を離れて10年以上たっているので、日本の転職事情のことは全く分かっていませんし、どのような形式の履歴書や職務経歴書が一般的に使われているかを調べるところから始めました。
海外経験が長いので、英語での履歴書・職務経歴書は作ってあったのですが、日本への転職活動では当然日本語が必要になることが多いので日本語の履歴書・職務経歴書も作成しました。
英語の職務経歴書は、いわゆる日本の履歴書と職務経歴書を合わせたようなものです。形式は異なる種類がありますが、例えば職歴の新しい順番に会社・所属・ジョブタイトル・職務内容などと共に成果などを書きます。それに加えて、最終学歴・応募職種にあったスキル・言語などを加えます。
さらに、応募するときには一般的にカバーレターを付けます。これが結構重要で、こちらになぜ応募して、会社に面接する価値があると思ってもらえるようにこれまでの経験や、どのような付加価値を会社に提供できるかなどをつらつらと述べていきます。
複数の会社に応募する場合は、それぞれ毎回応募する職種や業界に応じて文面などを調整すると良いでしょう。
ですので、転職活動中は常にこれらの履歴書と職務経歴書をアップデートして応募企業ごとに整理して保存おくとことも重要です。
転職エージェントへの登録
企業にもよりますが、多くの企業は転職エージェントを使って人材募集をしています。自社のホームページなどで募集もしていますが、同じポジションをエージェント経由で募集していることもあります。特に外資系などは、エージェントを使っている傾向が多いようにも感じられます。
エージェントに登録すると担当者と面談をすることになります。自分の場合は英語と日本語両方の職務経歴書を送付していたので、エージェントによっては外国籍のリクルーターの方と英語で面談をしてこれからの転職活動の方針を決めたりしていました。紹介された外資系企業のほとんどが外国籍のリクルーターの方からで、会社によっては募集要項もすべて英語だったものもありました。
リクルーターの中にはその会社に既に何人も紹介して採用されているケースも有り、企業の採用担当とかなりの信頼関係を築かれている方もいました。その場合、ちょっとした企業の話やこれまでの面接の傾向など、面接時に役に立つ話を聞けるのもエージェントを使うメリットと思われます。
エージェント以外
転職エージェント以外では、Linkedinや会社のホームページから情報収集を行います。会社にもよりますが、大手のIT企業だとブランド力がある分、転職エージェントを使っていないところもありました。Linkedinなどで募集をかけているところだと応募者数が3桁を超えているものが普通にあったりします。
また、海外の企業で完全リモートや業務委託的な募集をしているところも、エージェントを使わずリクルーティングをしているように感じられました。
エージェントを通して採用すると当然エージェントに報酬が支払われます。これは採用した人の年収などで決められているようです。応募した側からは関係ない様に見えますが、同じポジションでも直接採用の方が、採用側としては経費は削減できるかもしれません。それが採用時の判断材料になるかどうかは分かりませんが、理解している必要はあると思います。
ただ、前述の通り信頼関係のあるエージェント経由で紹介されると、面接に進める可能も上がるかもしれません。また、実際エージェント経由で採用された場合、会社がそれだけ経費をかけて自分を採用してくれたということも言えます。
面説の日程調整
海外から日本の企業に転職をする場合、面接は100%オンラインになります。オンラインで受け付けていただけない企業ですと、実質ほぼ不可能で自分もオンラインで可能なところに絞って応募をしました。
ただ、オンラインが可能でも対応していただける時間は日本の就業時間内です。ドイツの場合は時差が時期によって7-8時間あり、面接は常に早朝から開始ということになります。朝8時からの面接で、日本時間は午後3時です。
これまでで一番早い時間の面接は午前7時からでした。午前7時からの面接だと少なくとも6時には起きて、朝食を取ったり頭を働かせるように少しストレッチをしたりと準備が必要です。面接が終わると、普通に普段の仕事が始まるので、その日は1日結構疲れが出ます。自分の場合は普段からほぼリモートなので、業務に支障なく進められましたが出勤が必要になると、日程の調整がかなり難しくなるのではと思います。
面説でよく聞かれたこと
面接では自己紹介や今行っている業務、これまでの経験など幅広く質問されます。中には、知識を試すために技術系の説明を求められるような質問(例えば、NISTとは何か?)、課題を出されてそれのレポートを提出するようなものもありました。
- なぜ日本に帰国するのか。これはほぼすべての面接で聞かれました。やはり、海外で長く仕事をしてきているのでどうして帰国することにしたか必ず聞かれました。
- 帰国にあたって子供は転校するのか。これは、やんわりと家族構成を聞き出してまた海外に戻る予定があるかを確認されているのかと思いました。
- これまでの海外での仕事の経験、日本との違い。海外に渡った経緯など。
- 過去の失敗談。成功談もよく聞かれましたが、失敗談もよく聞かれます。その失敗から何を学んでどう対処したかを推し量られていると思われます。
- マネージメント、テックリードの経験や所属チーム意外とどのように協業しているか。
- チームメートやプロジェクトで意見の相違があった場合にどのように対処したか。
自分の場合は30年近くエンジニアの仕事をしてきたので、細かい技術的なことも聞かれましたが、どちらかというとどういった過程でその時々の判断を下したか。その判断を下すまで、どのようなプロセスを踏まえて、同僚とどのようにして決めたかなどをよくきかれました。
SREやクラウドエンジニアの職種ですので、それらに特化したこともよく聞かれます。
- 使っているクラウドとそれらのサービスについて。マネージドサービスを使うのか、それとも自社でインプリメンテーションするのか。なぜ、その選択をしたのか
- クラウドへの移行の経験や、その過程での技術選定基準や判断基準について。
- モニタリング、CI/CD、障害対処をどのように行っているか。
- 障害発生時に、どのような順序で対処行動を取り、どうやってサービスを復旧させるか。
- DevOpsで開発チームとどのように協業してきたか。
ただこれらの質問に返答する場合は注意も必要で、職務経歴書にどの企業で何の仕事をしているか書いてあるので、あまり具体的に細かく答えると社内のコンプライスに抵触したり、現職の企業機密を意図せず漏らしてしまうことになるかもしれません。
ほとんどの面接官はそのあたりも、ご理解されているようで”答えられる範囲で結構ですので”とよく言われます。自分も、言えない部分ははっきりと”社内のセキュリティーの都合で大まかにしか言えない”と前置きしてからお答えすることが多くありました。
特に、セキュリティ関係の話になると、概念的な話はできても具体的な対策やどのような方法で行っているかなど、所属企業のセキュリティ対策を伝えているようなもので殆どの企業でコンプライアンスに抵触すると思います。したがって、かなり大まかな話しかできなくなります。
おそらく、採用する側もそのあたりを配慮せずに何でも話す人は採用しにくいのではと考えられます。
いろいろと気づいたこと
以前に比べて、日本もいわゆるジョブ型的な採用をされているところが増えたように感じられます。
ドイツと日本との違いやいろいろと気づいたことを参考程度にご紹介します。
- リモートで面接をする場合、企業によって使っているツールもそれぞれです。自分もTeams、Google Meet、Zoomなど色々な物を使いました。それらの使い方はある程度慣れおいた方がいいと思います。
- 現実的な給料の違い。IT業界の給料は日本は欧米に比べると、全体的に安くなります。欧米では特にアメリアやドイツなど給料の高い国から、周辺の安い国へ仕事がシフトする動きが顕著にわかるようになってきました。
- 有休休暇。これは企業にもよりますが、自分が今回見た企業はだいたい有休15日スタートが多かったです。ドイツでは法定では20日ですが、30日以上出す会社も多くあります。
- 残業。日本の募集要項によく見られたのが、平均残業時間X時間以内と書かれているものです。これは、正直その企業にとってプラスに働く様には思えません。基本的に残業をしない国で働いてきたので、平均残業時間が書かれていると、その分は余分に働く必要があるように感じられます。
- 残業時間X時間まで給与に含まれる。これは人事的には必要なのでしょうが、募集要項の中でその企業へのプラスの効果はないと思います。
- 内定後の転職までの期間。これはエージェントから聞いたのですが、日本では内定が出てから1-2か月での転職を求められるケースが多いようです。海外転職する場合、引っ越しなどあったりするので内定が出てから1-2か月はほぼ不可能です。基本的にはドイツでは退職までの期間が雇用契約書などに明記されていることもあり、3-6か月の通知期間が必要です。上長や会社との協議して短くすることもできますが、引っ越しも考えると最低3-4か月はかかります。
- 外国籍の社員が多い会社や海外に進出している会社は、日本語と英語の両方で面接を行いました。中には同じ面接のなかで、両方の言語を使って面接をしたこともありました。
- 面接時は、少なくても最後にこちらから質問をする機会が大体与えられます。面接は、応募者にとっても自分の時間を投資するに値する企業かどう見定める良い機会なので、その企業や職種の気になるところなど募集要項やホームぺージからでは判らなかった事を聞くようにしました。
まとめ
リモートが広まったことで、転職活動も時差さえ考慮すれば、住んでいる国以外にも普通にできるようになったのは良かったと思います。
今回は帰国するのでビザを取得する必要がないので、その分も少し楽でした。逆に日本から海外へと転職活動の場合はビザが必要なのでより複雑になります。
転職活動なので、当然書類選考でだめだったケースや面接でだめだったケースもあります。自分の場合は転職活動は、例えは正しくないかもしれませんがお見合いのようなもので、企業側も応募者も希望通りの相手とどれほど近いか妥協して決めるものだと思います。
それぞれ、企業も応募者も重要視することが違うので、そこで妥協できなければ企業側から断られたり、応募者側から内定辞退もありうると思います。これは良い悪の話ではなく、ただ条件が合わなかったということだと思っています。企業が何を重視するかは、応募者にはどうする事も出来ないので、話が上手くいかなくても時の運程度に考えておいたほうがいいと思います。実際、自分も断られた時に必ず理由を聞くようにしていたのですが、ほとんどすべてミスマッチが理由でした。
海外から日本への転職活動の体験談を書いてみました。何かの参考になればと思います。