Gram-Schmidt の正規直交化法とは?
計量ベクトル空間に属する線形独立な有限個のベクトルが与えられたとき,それらと同じ部分空間を張る正規直交系を作り出すアルゴリズムの一種.
(Wikipedia より引用)
記号
$V$:計量ベクトル空間
$(v,w)$:$v,w\in V$ の内積
$|v|=\sqrt{(v,v)}$:$v\in V$ のノルム
$v_1,v_2,\cdots,v_n\in V$:線形独立なベクトル
方法
直交化
$u_1:=v_1$ とする.また $j=2,3,\cdots,n$ に対して
u_j:=v_j-\sum_{k=1}^{j-1}\frac{(u_k,v_j)}{(u_k,u_k)}u_k
と定める.このとき $u_1,u_2,\cdots,u_n\in V$ は直交系である.
証明
数学的帰納法により証明する.
$u_1=v_1$ は零ベクトルでない.また $v_1,v_2$ は線形独立であるから $u_2=v_2-\frac{(u_1,v_2)}{(u_1,u_1)}u_1=v_2-\frac{(u_1,v_2)}{(u_1,u_1)}v_1$ は零ベクトルでない1.さらに
(u_1,u_2)
=\left(u_1,v_2-\frac{(u_1,v_2)}{(u_1,u_1)}u_1\right)
=(u_1,v_2)-\frac{(u_1,v_2)}{(u_1,u_1)}(u_1,u_1)
=0
である.従って $u_1,u_2$ は直交系である.
次に $u_1,u_2,\cdots,u_j$($j=2,3,\cdots,n-1$)が直交系であると仮定する.$v_1,v_2,\cdots,v_n$ は線形独立であるから
u_{j+1}=v_{j+1}-\sum_{k=1}^{j}\frac{(u_k,v_{j+1})}{(u_k,u_k)}u_k
は零ベクトルでない.また $i=1,2,\cdots,j$ に対して
\begin{align}
(u_i,u_{j+1})
&=\left(u_i,v_{j+1}-\sum_{k=1}^{j}\frac{(u_k,v_{j+1})}{(u_k,u_k)}u_k\right) \\
&=(u_i,v_{j+1})-\sum_{k=1}^{j}\frac{(u_k,v_{j+1})}{(u_k,u_k)}(u_i,u_k) \\
&=(u_i,v_{j+1})-\frac{(u_i,v_{j+1})}{(u_i,u_i)}(u_i,u_i) \\
&=0
\end{align}
である.従って $u_1,u_2,\cdots,u_{j+1}$ は直交系である.
以上より $u_1,u_2,\cdots,u_n$ は直交系である.
正規化
$u_1,u_2,\cdots,u_n$ を用いて,各 $j=1,2,\cdots,n$ に対して
e_j=\frac{1}{|u_j|}u_j
とすれば $e_1,e_2,\cdots,e_n\in V$ は正規直交系である.
付録: 直交系の定義と性質
定義
$v_1,v_2,\cdots,v_n\in V$ が 直交系 であるとは,各 $i=1,2,\cdots,n$ に対して $v_i$ が零ベクトルでなく,かつ $i\neq j$ のとき $(v_i,v_j)=0$ となることを言う.
線形独立性
直交系 $v_1,v_2,\cdots,v_n\in V$ は線形独立である.
証明
$\sum_{k=1}^nc_kv_k=0$ とする.このとき,$v_1,v_2,\cdots,v_n$ が直交系であることに注意すると,$j=1,2,\cdots,n$ に対して
0
=(0,v_j)
=\left(\sum_{k=1}^nc_kv_k,v_j\right)
=\sum_{k=1}^nc_k(v_k,v_j)
=c_j(v_j,v_j)
となるから $c_j=0$ である.
-
もし零ベクトルであるとすると $v_2=\frac{(u_1,v_2)}{(u_1,u_1)}v_1$ となり,$v_1,v_2$ は線形従属ということになるが,これは矛盾である. ↩