はじめに
この記事は、2024年6月12日に開催された、NO MOREとりあえず!デザナレ展UXリサーチ―結果につながるすごい知恵 で発表したスライドです。
内容
導入
こんにちは、私はQiita株式会社の出口 裕貴です。
普段は、QiitaのPdM 兼 デザイングループのマネージャーをしています。
私は、デザイン, フロントエンドに関連する情報を中心に発信しているデザインテクノロジストとして活動しているので、よかったらXのフォローしていただけると嬉しいです。
プロダクト開発で大切にしていること
Qiitaでは、UXリサーチをプロダクト開発のプロセスの一環だと捉えています。
そのため、まずは、Qiitaのプロダクト開発で大切にしているポイントについてお話しします。
Qiitaでは、次の3つの点を大切にしています。
- ユーザーが使ってくれて初めて価値があること
- 完璧は幻想で完成はないこと
- 失敗と改善のサイクルを高速で回すこと
ユーザー体験の向上を目指し、ユーザーの行動や感情を調査するUXリサーチでは、やり方によってはQiitaのプロダクト開発で大切にしているポイントと相反することがあります。
インタビューや調査に時間がかかり、ユーザーに価値を提供するまで時間がかかったり、調査対象の偏りによるバイアスによって、完璧だと思い込んでしまうこともあります。また、失敗と改善のサイクルに遅れが生じることもあるでしょう。
そのため、Qiitaでは、「ユーザーに最速で価値を届けるUXリサーチ」を心がけ、ユーザー体験の向上を目指しています。
プロダクト開発とUXリサーチ
次は、プロダクト開発のプロセスとUXリサーチの関係について話します。
プロダクト開発のプロセスは次のようになっています。
- 企画:PdM, デザイナー, エンジニア
- 設計・デザイン:PdM, デザイナー
- 開発:デザイナー, エンジニア
このプロセスの中で、UXリサーチは、企画前・リリース後の部分で行っています。
QiitaのUXリサーチ
ここからは、QiitaでどのようなUXリサーチを行っているかについて話します。
基本的にQiitaでは、「ユーザーに最速で価値を届けるUXリサーチ」をこころがけているため、必要以上に時間をかけたり、個人に依存するようなリサーチは行っていません。
そのため、UXリサーチをやりたいけど、工数などの理由で踏みとどまっている方やもう少し効率的にUXリサーチを行いたい方の参考になるかと思います。
ドックフーディング
1つ目は、「ドックフーディング」というリサーチ方法です。
ドックフーディングは、自社製品・サービスを日常的に使用することで、UXの課題や改善すべき点を把握するリサーチ方法です。
Qiitaでは、このドックフーディングを徹底し、日常的にエンジニア・デザイナー・PdM全員がQiitaで記事を書き、アウトプットを行っています。
サービスを使っている中で見つけた課題や改善点は、すぐにissueにし、対応していきます。
ドックフーディングでリリースした機能として、投稿完了後のモーダルがあります。これは、Qiitaのキャラクターの「きーたん」から記事投稿の感謝を伝えるという機能です。こちらは、メンバーからの「投稿した後、寂しくないですか?」という問い始まり、リリースしています。
リリース後は、Xで投稿完了モーダルに言及したポストが増えたり、記事投稿数も増え、ユーザー体験が向上した機能だったかなと思います。
また、表彰プログラムもドックフーディングから考えた企画です。
表彰プログラムは、Qiitaで記事をたくさん投稿してくれているユーザーに対して、記念品をお渡しするという企画です。こちらの企画は、メンバーからの「アウトプット頑張っている人にお礼を伝えたい」という問いから始まった企画です。
こちらも、表彰されたユーザーが記念品の写真と共にポストが増えたり、記事投稿のモチベーションになっている趣旨のフィードバックをいただき、ユーザー体験が向上した企画だったと思います。
このようにドックフーディングによるリサーチをすることで、メンバー自身がユーザーの課題を自分ごとしやすく、ユーザー視点で課題を見つけることで、実際の使い勝手や不便さを肌で感じ、迅速に対応することができます。
Qiita Discussions
2つ目は、「Qiita Discussions」による情報収集です。
Qiita Discuttionsとは、ユーザーと運営がオープンな場で直接コミュニケーション・議論が行える場として、Githubで開設したコミュニティです。
Qiita Discuttionsでは、ユーザーが意見を提案できたり、ユーザーと運営の双方向のコミュニケーションなどを行っています。
Qiita Discuttionsにあげられた要望をベースに、ユーザーさんに質問したり、運営の考えを伝えたりと献身的にコミュニケーションをおこなり、UXの課題や改善すべき点を把握しています。
Qiita Discussionsからリリースした機能としてダークテーマというものがあります。Qiitaはエンジニアが業務中にわからないことを検索して、調べる時に利用されるので、明るいテーマより、暗いテーマが好まれていることがあたらめてわかりました。
また、文章校正機能も Qiita Discuttionsからリリースした機能です。
記事を投稿した後に、誤字脱字をコメントで指摘されたりすると、あまり嬉しくない体験を与えてしまうことがわかりリリースしました。
このように、課題としては理解しつつも、優先度が上りずらい改善などがユーザーの声が直接聞こえるため、迅速に対応することができます。
リリース範囲を絞ったヒアリング
3つ目は、「リリース範囲を絞ったヒアリング」です。
Qiitaには、リリース範囲ごとに3つのリリース方法があります。
アルファリリース:Qiitaが許可した一部のユーザーにのみ公開
ベータリリース:開発中の機能として、オプトインしたユーザーのみ公開
正式リリース:全ユーザーに公開
これらのリリースは、ユーザーへの影響度や施策の確度によって、最初にリリスする範囲は変わってきます。
リリース範囲を絞ったヒアリングは、主にアルファリリースで行います。
開発初期段階として、限定されたユーザーに触っていただき、特定のユーザーに対してインタビューを行い、詳細な意見や改善点をヒアリングします。
アルファリリースでヒアリングを行った機能としてAIサジェストというものがあります。 この機能は、文章の続きをAIに提案してもらうような機能です。
アルファリリースでは、
手が止まって数秒経ったら、自動で続きを提案してくれる機能でした。
しかし、ヒアリングの中で、手が止まっているのは、文章の続きを考えているため、急に続きを提案されると、思考の邪魔になってしまうことがわかりました。
そのため、正式リリーでは、
「/aisuggest」コマンドで続きを提案してくれる機能にアップデートし、正式リリースしています。
Qiitaでは、アルファリリースを通じて得られたフィードバックをもとに、プロダクトの改善を迅速に進めています。この方法により、リリース前にユーザー体験の問題を発見し、解決することができます。
まとめ
Qiitaでは「ドックフーディング」、「Qiita Discussions」、「リリース範囲を絞ったヒアリング」の3つのアプローチを通じて、UXリサーチを実施し、プロダクトの改善を進めています。
これらのリサーチは、多くの時間を調査に費やしたり、個人に依存することなくリサーチすることができます。
そのため、私たちがプロダクト開発で大切にしている、ユーザーが実際に使ってくれることで初めて価値が生まれるということ、完璧を求めず常に改善を続けること、そして失敗と改善のサイクルを高速で回すこと
と相反することなくUXリサーチを行えています。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
普段はデザインやフロントエンドを中心にQiitaで記事を投稿しているので、ぜひQiitaのフォローとX(Twitter)のフォローをお願いします。