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- 「見える化」は「~化」の用法を間違えている
- とは言え生み出された98年当時にもっと分かりやすい語彙があったかと聞かれると首をかしげる
- 個人的に再命名するなら「ダッシュボード化」
「見える化」ってなんですか
おはようございます。眼鏡がなくてもPC画面くらいは見えるようになりたいデブです。
コンタクトは怖いです。
近年あちこちで見かける「見える化」という言葉。
その手法は非常に有用ではあるものの、ちらほらと「ダサい」「気持ち悪い」という声も見られます。もしやインターネッツこそが声の「見える化」……?
個人的な感想を言わせてもらうと、
この単語を嬉々として使いだした層は頭が悪いと思っています。(個人の感想です)
実際そう思っている人も少なくはないと思います。
事実googleでのサジェストの上位5つが
- 英語
- 可視化
- 言い換え
- 気持ち悪い
- ダサい
ですし。
(普段使いしていないPCの更に普段使いしていないFFから検索したのでパーソナライズド検索の影響は少ないと思います。多分)
とは言え結果として定着しているので、使っている人に対してわざわざ後ろ指を指すようなことはしませんし、手法そのものは非常に有用だと思います。ただネーミングが気に入らないって話です。
そもそも「見える化」って何よ
軽く調べると20年以上前にトヨタ自動車の業務改善に関するお話で出てきた言葉らしいです。
所謂「トヨタ式」の一部ですね。
この時点で若干お察しではありますがそこは一旦置いて、wikipediaに乗っている定義は以下の通り。
見える化(みえるか、Visual control)とは、企業や組織における財務、業務、戦略などの活動実態を具体化し、客観的に捉えられるようにすることである。
……この説明だと何となく腑に落ちないのは私だけでしょうか。
極論「業務実態の資料作成」でも良くない?という感じが。
因みに「トヨタにおける原義」の項には
総括すれば、活動の中心である「人」、「モノ(設備)」、「費用(工数)」の不備の是正・適正化や、これを支える「情報」「理念」の充実に期待がある。現場の第一線から当部署へ期待する役割が「見える化」で明確になり、課題を共有できた』
とあって、見える化の実績しか書いておらず見える化自体の説明になってないです。(原義とは)
出典となる書籍『見える化 : 強い企業をつくる「見える」仕組み』(ISBN 4-492-53201-3)を読んでいないので断定的なことは言えないが「見えること」が全然関係ない。
確かに上記の目的において図示が有効である、というのは賛同するけどそれは手段の話で、目的ではなくない?「見える化」って言いたいだけじゃない?新しい単語作りたかっただけじゃない?というのが正直な感想です。
と思って上記の本を検索したら興味深いレビューがありました。
問題を表に出すだけではなく,見ようとしていない人にも見えるようにすることが「見える化」なのだという
これが書籍の引用なのか投稿者の解釈なのかは分かりませんが、スッと納得出来ました。
「見ようとしていない人にも見えるようにすること」がミソですね。
(というか名前は別として流石世界に誇れるトヨタ式。レビューも肯定的なものばかりですし私も読みたくなってきました)
なお同書は電子版も売っていますのでご興味があれば是非。(私は東洋経済新報社の回し者ではないです)
それを踏まえて私の方で勝手に再定義するなら、
現状抱えている問題を誰にでも理解可能な形にすること。または現状を問題が炙り出せる形にすること
と言ったところでしょうか。
何故「見える化」の語感が気持ち悪いのか
本編です。
まあ至極単純な話で、日本語として不自然だからの一言でしょうね。
では、どこがどのように不自然なのか考えます。
まず「見える化」の「化」は接尾辞で、名詞をサ変動詞化した造語を作る際によく使われる手法です。
実は「~化」に関する論文は結構あって、色々読んでいると結構面白いです。
で、その中の論文の一つに
1 はじめに
「化」は、動名詞接尾辞として、名詞の後につくことにより、その名詞に自他動詞性をつけることができる。
https://core.ac.uk/download/pdf/229346279.pdf より引用
とあり、前述の通り大前提として名詞に付与されるものであるとされてますし、実際この説明で納得も出来ます。
そして**「見える」は自動詞であり、つまるところ本来名詞を使う箇所に自動詞が入っているから気持ち悪い**のだと思います。
もう少し掘り下げて言うと、**何故 「見える化」という単語を作る必要があったかと言えば「業務改善手法を概念化したかったから」**なんですよね。 (推測だが、加えて一般的に使われるようなものにしたかったのでは)
ここで言う概念化というのは乱暴に言うと「(名前のない)動詞を名詞化したい」ということです。
つまり何が言いたいかと言うと、
- ~化 => 名詞に動詞性を付けたい
- 見える化 => 動詞を生み出して、名詞性も持たせたかった
というところで出発点も目的も全然違うんですよねということ。
結果としてどちらもサ変動詞に行き着くんですが、その過程は真逆だったと言っても過言ではないです。
だから不自然に見えてダサく感じるのだと思います。
平たく言うとセンスがない方法で作られた造語だからダサく感じるという身も蓋もないことに。
考えてみた
文句ばっか言うのもアレなので私も考えてみました。
1単語に抑えようとすると「ダッシュボード化」ですかね。
というか見える化の手法としてダッシュボードが良く使われているので実情に沿いつつ日本語としても自然で1単語に抑えられてますが、どうでしょう。
考えれば考えるほどしっくり来ますね。(自画自賛の手前味噌)
とは言え98年当時にダッシュボードが現在の意味で使われていたかと言うと多分NOでしょうし、20年越しの後出しじゃんけんなんでいくらでもどうとでも言えますよね。
そもそも「見える化」がこれほど浸透していなければ、ダッシュボードが現在の意味で使われることはなかったのではないか。とも思います。
じゃあどうしたら良かったのかね
簡単なのは以下の2通りでしょうか。
- 似た意味を持つ別言語の単語を用いる
- 複数単語を繋げる
似た意味を持つ別言語の単語を用いる
一番簡単なのは英単語を流用することです。
例で言えば「インプット」や「アウトプット」でしょうか。最近では「勉強すること」「勉強結果を形にすること」等のような意味あいとして使われますね。
別言語の動詞はサ変動詞として扱われることが多いので無理なく概念化できます。
パッと思いつくのは「ビジュアライズ」ですかね。
欠点としては翻訳するときに翻訳家さんが頭を悩ませそうなことですかね……。(何かしらの接頭辞がないと元の単語との区別が付きづらそう)
今でこそ英単語の日本語化は結構あることですが、98年当時はどうだったんですかね。
複数単語を繋げる
諦めて「業務問題の可視化」や「問題の明瞭化」など複数単語で作る。……と言うのは簡単ですが、もしそうしていたら多分ここまで浸透してなかったでしょうね。
もはや概念化じゃなくてただの命名ですし。
まとめ
名前のない事柄をユニークで分かりやすい単語に概念化するのは難しいです。
困難な目的を達成するのに言語の常識を打ち破った分かりやすいネーミング、と考えると実は「見える化」は言い得て妙だったのでは、とも思えます。実際見事に浸透してますし。
とは言えダサいものはダサいですし、ダサい言葉を嬉々として使う姿に対して良い感情が沸かないのも正直なとこです。おっさん化の兆候か……?
というかこれがプッシュされ始めたっていつ頃ですかね。プッシュする側も「これ日本語としてどうなの、何か別の言葉に出来ないの」とか思わなかったんですかね。
それはそれとして、実はこの記事は元々はてブか増田に投げるつもりでした。
では何故技術に直接関係しない内容の記事をQiitaに投げることにしたのかと言うと、「見える化」が「何故気持ち悪いのか」と「気持ち悪さの擁護理由」を明確にすれば、「見える化」という言葉への抵抗感が薄れるのではないかと思ったからです。
どこからか見える化案件を貰ってきて「見える化って言葉気持ち悪いよな」と思いながら仕事されている方もいると思います。
そんな方の気持ち悪さを少しでも軽減して、誰もが気持ちよく仕事が出来ればとの思いでこちらに投稿します。
あと私のはてブに投げてこの記事が皆に見えるか?っていうとても面白いジョークもあります。
なので技術とは関係ない完全なポエム記事ですが、そこは目を瞑っていただければ幸いです。
(問題あればはてブに引っ越します)
最後に一言だけ、一応今技術系の記事も書いているので!現状ポエマーですがちゃんと技術記事も書くので許してください!