20
6

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 3 years have passed since last update.

NTTドコモ R&D Advent Calendar 2020

Day 23

ARスイッチで家電操作!

Last updated at Posted at 2020-12-22

NTTドコモ移動機開発部の田中です。普段の業務ではXR(AR,VR,MR)関連の研究開発を行っています。
AdventCalendar2018では、IoT関連の記事を書かせていただきました。
今回はリアルとバーチャルを絡めた記事を書きたいと思い、ARスイッチを考えついたので、ハンズオン形式で作成する内容とさせていただきました。

はじめに

  • 本記事はプログラミング初級者向けです。ハンズオン形式で実際にARリモコンを作っていきます。

  • 本アプリはUnityで作ります。AR描画機能は簡単化のためVuforia[1]を使い、家電操作にはOSSのDeviceConnect[2]を用います。

  • 家電ですが、何がいいかなと悩みました。皆さんお持ちのスマートフォンを活用できないかなと思い、今回、スマホのライトを照明器具と見立て、ライトのON/OFFを操作するARリモコン(検証アプリ)を作っていきたいと思います。

  • イメージ
    intro.jpg

補足

  • 本記事を参考にした開発、SDK利用、プログラムの実行については自己責任でお願いいたします。
  • Vuforiaに関しては、2020年12月現在、非商用・開発検証目的であれば無償ライセンスで利用できます。本記事では検証目的でVuforiaを扱います。

ハンズオン(ARリモコンの作成)

  • 作成手順は大きく3ステップです。AR機能実装、デバイス制御実装、AR機能とデバイス制御の結合、の順に作っていきます。
  • 今回は家電=スマホライト、と見立ておりますが、DeviceConnectに対応した家電であれば本当の意味での家電(照明器具など)も操作可能です。

STEP0. 必要なもの

  • 【開発環境】 
    • Unity@開発用PC  (筆者環境は、Unity2019.4.10f1) 
  • 【実機、その他必要なもの】
    • Androidスマートフォン(家電のポジションです)
    • PC用のWebカメラ(もしくは2台目のスマホを用意し、アプリをスマホで動かすでもOKです。)
    • ARマーカ(プリンタで印刷。後ほどサンプルのマーカを記載します。)

STEP1. Vuforiaの設定・実装

  • ※Unity開発環境がある前提で進めます。

  • Unity上で新規シーンを作成いただき、Vuforiaの設定を行います。

  • 以下の手順でVuforiaをUnityにインストールしてください。

    • ①「Window→PackageManager」を選択
    • ②Vuforia Engine ARを選択 ※筆者環境は「Vuforia Engine AR 8.1.12」
    • ③Installを実行
      vuforia1.png
  • 次に、AR表示用のカメラへの切り替えと、マーカオブジェクトの設置を行います。

    • ①Main Cameraは不要なので削除
    • ②「右クリック→VuforiaEngine」から、AR Cameraオブジェクトを選択
      vuforia2.png
  • まずはデフォルトのARマーカを設置します。

    • 「右クリック→VuforiaEngine」から、Imageを選択
      vuforia3.png

    • 「Import Default Image Database」という通知が表示されるので、「Import」を選択。※デフォルトのマーカ画像が登録されます。

  • ARマーカの下に、立方体を置き、実際にAR表示してみます。

    • ①ImageTarget(マーカ)の子オブジェクトとして、右クリック→3D Object→Cubeで立方体オブジェクト(Cube)を仮置き
      • ※箱の大きさと配置は微調整してください。
    • ②デフォルトのARマーカは以下のパスに配置されています。
      「Assets→Editor→Vuforia→ImageTargetTextures→VuforiaMars_Images」
      vuforia4.png
  • AR表示をしてみます。

    • 以下のように立方体がマーカ上にAR表示されていれば成功
      vuforia5.png
  • 次に、マーカと3Dオブジェクトをライトのスイッチをイメージしたものに入れ替えます。

  • マーカの入れ替え

    • ※先ほど作成した「Image Target」オブジェクトは非表示にしておいてください。

    • VuforiaのDeveloper portal[1]へ行き、以下の手順でオリジナルマーカを設定します。※アカウント登録が必要です。

      • 「ログイン後、Develop→TargetManager→Add Database」を選択

      • Create Databaseという画面が開くので、Database Nameを「LightSwitch」等で設定し、Createを選択 ※TypeはDeviceのままで良いです。

      • 作成したデータベース「LightSwitch」を選択し、「Add Target」を開く

      • 以下の設定を行い、「Add」を選択

        • Type: SingleImage

        • File: 「Browse...」から任意の画像を設定

          • マーカ画像はなんでも良いですが、スイッチをイメージした以下のイラストを用意したので、ご自由にご利用ください。
          • ちなみにマーカ画像をアップロードすると、特徴点解析が行われ、マーカとしての認識精度が5段階(5つ星)評価されます。本マーカの評価は★2であり、あまり良い画像ではありません。STEP3での実装を見ていただければ分かりますが、マーカをLOSTしやすくするために今回はあえてこのような画像にしました。
            vuforia6.jpeg
        • Width: 1

        • Name: なんでも良いですが、ここでは「light_switch」とします。

      • マーカが登録されますので、「Download Database(All)→Unity Editor→Download」を選択し、Unityパッケージをダウンロードしてください。

      • ダウンロードしたUnityパッケージのファイルをダブルクリックして開き、Unityプロジェクトへインポート

      • 先ほどと同じ手順で「右クリック→VuforiaEngine」から、Imageを選択すると、以下のように入れ替え済みのマーカが表示されるはずです。
        vuforia7.png

      • 最後に、以下手順でライセンスキーの作成と設定を行います。

        • ヒエラルキータブから、「AR Camera」オブジェクトを選択し、インスペクタータブから「Open Vuforia Engine configguration」を開く
        • ブラウザが開き、vuforiaサイトのLicense Managerが開くので、「Get Development Key」を選択
        • 「Add a free Development License Key」が開くので、License Nameを「light_switch」などで設定
        • Vuforiaの規約を確認した上で、チェックボックスにチェックを入れ「Confirm」を選択
        • すると、License Managerが開くので、設定したLicense Name「light_switch」を選択し、ライセンスキーを確認(コピー)
        • ライセンスキーをUnity上の「App License Key」のテキストボックスへコピペし設定
          vuforia8.png
    • 3Dオブジェクト(スイッチっぽいオブジェクト)への入れ替え

      • 以下のようなスイッチをイメージした3Dオブジェクトを適当に作り、大きさと位置を調整します。「ImageTarget」オブジェクトの子オブジェクトとして配置してください。(先ほどの立方体が残っていれば非表示か削除してください。)
        vuforia9.png
    • ここまで実施すると、オリジナルマーカとオリジナル3DオブジェクトでAR表示ができるようになります。

STEP2. DeviceConnectの設定・実装

  • 続いて、DeviceConnectの設定・実装を進めていきます。

  • DeviceConnectの基本的な使い方に関しては、以下の記事をご参照ください。

  • 本記事では、Unity上でDeviceConnectの扱い方についてご説明いたします。

  • 今回、DeviceConnectのHostプラグインを用いてスマートフォンのライトをUnityから制御したいと思います。上記記事を参考に、Hostプラグインの起動まで実施してください。

  • Hostプラグインのlightプロファイルを利用します。デバイス(スマホ)のライトを制御することが可能です。
    dconnect1.jpg

  • lightプロファイルを開き、まずはスマホ上で以下のAPIを動作確認してください。

POST /gotapi/light/   :ライトを点灯させる
DELETE /gotapi/light/  :ライトを消灯させる
  • POSTを例に簡単に説明します。
    • ①リクエストパラメータの部分にPOSTリクエスト時に追加可能なパラメータが記載されています。
    • ②「Send Request」でライトを点灯させてみましょう。スマホのライトがつくはずです。
    • ③リクエスト内容が記載されているので確認してください。
    • ④レスポンス内容を確認してください。result=0であれば成功です。(ライトもついているはずです。)

dconnect2.jpg

  • ライトの消灯に関しては、DELETEリクエストを実行してください。

  • ここまでのライトの点灯(POST)と消灯(DELETE)の処理を、Unityスクリプトの各メソッド処理としてまとめると、以下の参考のようになるかと思います。

  • 【参考】ライトの点灯処理(POST)

    • [スマートフォンのIPアドレス]の部分は、DeviceConnectを導入したスマホIPアドレスを入れてください。ローカルで動作確認する場合は、一般的には「192.168.43.1」だと思います。
    • [各自環境ライトのServiceID]の部分についても、各自の環境で異なりますので、先ほどのリクエストパラメータを参考にServiceIDを記入してください。(「Host」から始まり、「deviceconnect.org」で終わる文字列です。)
    • 今回は簡単化のため、ServiceIDをハードコーディングしていますが、本来はserviceDiscoveryを用いて抽出し自動で挿入するのがスマートですね。
    /* ライトの点灯処理 */
    public void PostLight()
    {
        StartCoroutine(PostLightMethod());//Postメソッド実行
    }

    private IEnumerator PostLightMethod()
    {
        string url = "http://[スマートフォンのIPアドレス]:4035/gotapi/light";

        WWWForm form = new WWWForm();

        //パラメータの設定例
        form.AddField("serviceId", "[各自環境ライトのServiceID]");
        form.AddField("lightId", "0");
        form.AddField("brightness", "1");

        //POSTリクエストの送信
        UnityWebRequest postRequest = UnityWebRequest.Post(url, form);
        yield return postRequest.SendWebRequest();

        //エラー判定
        if (postRequest.isHttpError || postRequest.isNetworkError)
        {
            Debug.Log(postRequest.error);//エラー確認
        }
        else
        {
            Debug.Log(postRequest.downloadHandler.text);//結果確認
        }
    }
  • 【参考】ライトの消灯処理(DELETE)
    • [スマートフォンのIPアドレス]、[各自環境ライトのServiceID]に関しては、POSTリクエストの時の説明と同じです。
    /*  ライトの消灯処理 */
    public void DeleteLight()
    {
        StartCoroutine(DeleteLightMethod());//DELETEメソッド実行
    }

    private IEnumerator DeleteLightMethod()
    {
        string url = "http://[スマートフォンのIPアドレス]:4035/gotapi/light?serviceId=[各自環境ライトのServiceID]&lightId=0";

        //DELETEリクエストの送信
        UnityWebRequest deleteRequest = UnityWebRequest.Delete(url);
        yield return deleteRequest.SendWebRequest();

        //エラー判定
        if (deleteRequest.isHttpError || deleteRequest.isNetworkError)
        {
            Debug.Log(deleteRequest.error);//エラー確認
        }
        else
        {
            Debug.Log(deleteRequest.downloadHandler.text);//結果確認
        }
    }
  • 適当にUnity上でボタンUIを作成し、上記のPOSTメソッドとDELETEメソッドをアタッチし、動作確認をしてみてください。Unity上からスマホライトのON/OFFを制御できるはずです。
    dconnect3.jpg

STEP3. VuforiaとDeviceConnectの結合

  • ここまできたら、あとはVuforia(AR表示)と、DeviceConnect(ライト制御)の実装を組み合わせるだけです。
  • 「ARマーカから仮想のスイッチが出現し、手で押すとライトが消える」、という演出にしたいので、「マーカがカメラからLOSTしたら、ライト点灯のPOSTメソッドが走る」という処理を考えてみたいと思います。
  • 「ImageTarget」オブジェクトにアタッチされている「DefaultTrackableEventHandler.cs」にマーカ発見時と見失った時の処理が記されています。ここにライトのON/OFFの処理を追加してみたいと思います。
    • (注意事項)今回は簡単化のために直接「DefaultTrackableEventHandler.cs」を変更しますが、一番良いやり方は「DefaultTrackableEventHandler」クラスを継承して実装する形かと思います。例えばVuforiaをアップデートすると、「DefaultTrackableEventHandler.cs」の変更が上書きされる可能性があるため注意が必要です。
  • まず「DefaultTrackableEventHandler」クラスに先ほどのDeviceConnectのPOSTメソッドとDELETEメソッドを追記しましょう。
  • 次に「OnTrackableStateChanged」メソッドの中の処理について確認してみてください。newStatusとpreviousStatusの値からマーカの状態を判定しているので、マーカが見つかったときに「ライトを消灯」、マーカを見失ったときに「ライトを点灯」するように、先ほど作成したメソッドを呼び出すよう追記します。
        if (newStatus == TrackableBehaviour.Status.DETECTED ||
            newStatus == TrackableBehaviour.Status.TRACKED ||
            newStatus == TrackableBehaviour.Status.EXTENDED_TRACKED)
        {
            Debug.Log("Trackable " + mTrackableBehaviour.TrackableName + " found");
            OnTrackingFound();
            DeleteLight();//ライト消灯
        }
        else if (previousStatus == TrackableBehaviour.Status.TRACKED &&
                 newStatus == TrackableBehaviour.Status.NO_POSE)
        {
            Debug.Log("Trackable " + mTrackableBehaviour.TrackableName + " lost");
            OnTrackingLost();
            PostLight();//ライト点灯
        }
        else
        {
            OnTrackingLost();
        }
  • 以上の実装により、「ARマーカから仮想のスイッチが出現し、手で押すとライトが消える」という実装が出来ました。

デモ

  • 動作確認してみましょう。カメラをかざすと、ライトのスイッチがAR表示されます。AR表示されたスイッチを手で押す(マーカを覆う)と、スマホのライトが点灯するはずです。
    demo.gif

まとめ

  • 思ったよりも地味なデモになってしまい、申し訳ありません。笑
  • VuforiaとDeviceConnectを組み合わせることで、何となく考えついたARスイッチを簡単に実装することができました。
  • 今回はスマホのライトを照明器具と見立ててデモを作りましたが、DeviceConnect対応デバイスであれば様々な制御が可能です。(スマホではなく本当の意味での照明器具のON/OFFを制御したり、カメラのシャッターをきったり、ロボットカー制御したり、等)
  • この記事をきっかけに、UnityでのAR開発やデバイス連携技術に興味を持っていただけますと幸いです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

参考文献

20
6
1

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
20
6

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?