はじめに
CYBIRD Advent Calendar 2024の最終日担当の@dave_cです。
24日目は@cy-seiyanさんの「MacでブータブルUSBの作成に挑戦した話」でした。
概要
システム設計において、データやエンティティを一意に識別するためのIDは非常に重要です。適切なIDの選択は、システムのパフォーマンスやスケーラビリティ、セキュリティに大きな影響を与えます。本記事では、以下の4つのID方式について比較・解説します。
- UUID (Universally Unique Identifier)
- ULID (Universally Lexicographically Sortable Identifier)
- SQID (Sequential ID)
- Snowflake ID
UUID
概要
UUIDは、128ビットの一意な識別子です。主に以下のバージョンが使われます。
- UUIDv1: タイムスタンプとMACアドレスを組み合わせた方式
- UUIDv4: ランダム値を使用して生成
特徴
- ユニーク性: グローバルに一意で、複数のシステム間で競合しません。
- 汎用性: 多くのプログラミング言語やデータベースで標準サポートされています。
- 順序性: UUIDv4はランダム値で順序性はありませんが、UUIDv1はタイムスタンプを含むため部分的な順序性を持ちます。
利点
- 標準化: 多くのシステムやツールと互換性があります。
- 設定不要: 中央管理なしで生成可能。
欠点
- サイズ: 128ビットの長さがストレージやインデックスに負担をかけます。
-
可読性: 人間にとっては理解しづらい長い形式(例:
550e8400-e29b-41d4-a716-446655440000
)。 - 性能: 順序性がないため、データベースでのインデックス性能が劣る場合があります。
ULID
概要
ULIDは、UUIDと同様に128ビットですが、タイムスタンプとランダム値を組み合わせることで、ソート可能な特性を持つ識別子です。Base32でエンコードされており、人間が比較的読みやすい形式になります。
特徴
- ソート可能: タイムスタンプに基づくため、時間順に並べ替えが可能。
- ユニーク性: ランダム値部分により衝突を防ぎます。
-
可読性: Base32により、UUIDより短く人間に優しい(例:
01F8MECHZX3TBDSZ7A3Q2T8YZM
)。
利点
- 順序性: タイムスタンプでのソートが容易。
- ユニーク性: 分散システムでも安全に利用可能。
- 可読性: UUIDよりも短く扱いやすい。
欠点
- ライブラリ依存: UUIDほど広く標準化されておらず、生成に専用ライブラリが必要。
- ストレージサイズ: UUIDと同様に128ビットでやや大きい。
SQID
概要
SQIDは、シンプルな連番IDです。データベースのオートインクリメント機能やカウンターを用いて生成されます。
特徴
- 順序性: 完全に連続した順序を持つため、挿入順が明確。
- ユニーク性: 単一のデータベース内でユニーク。
利点
- 簡単: 実装が非常に容易。
- 順序性: 完全な時間順を保証。
- コンパクト: 小さなサイズ(4〜8バイト)で効率的。
欠点
- スケーラビリティ: 分散システムでは利用が困難。
- 予測可能性: 次のIDが簡単に予測可能で、セキュリティリスクになり得る。
- ボトルネック: 高並列性環境で競合が発生しやすい。
Snowflake ID
概要
Snowflake IDはTwitterが開発した分散ID生成アルゴリズムで、64ビットの識別子を生成します。以下の要素で構成されます。
- タイムスタンプ: ミリ秒単位での生成時刻。
- マシンID: 分散環境での一意性を保証。
- シーケンス番号: 同一ミリ秒内の衝突回避。
特徴
- ユニーク性: 分散システム間での一意性を保証。
- 順序性: 時間に基づくおおよその順序性。
利点
- スケーラビリティ: 高並列性環境に対応。
- 効率性: 中央管理なしでの高速生成。
- 順序性: 時間順に近い順序性を持つ。
欠点
- 複雑性: 実装がやや難しく、設定ミスで衝突のリスク。
- サイズ制限: 64ビットであるため、極端に長期間の運用には非適切。
比較表
特徴 | UUID | ULID | SQID | Snowflake ID |
---|---|---|---|---|
ユニーク性 | グローバルに一意 | グローバルに一意 | 単一インスタンスで一意 | グローバルに一意 |
順序性 | 無(v4) | 時間順にソート可能 | 完全な順序性 | 時間順(近似) |
スケーラビリティ | 高い | 高い | 低い | 高い |
可読性 | 低い | 中程度 | 高い | 中程度 |
サイズ | 128ビット | 128ビット | 小さい(4〜8バイト) | 64ビット |
用途 | 分散システム全般 | 時間順が必要な分散システム | シンプルなアプリ | 高並列な分散システム |
まとめ
利用シーンに応じた選択
- シンプルなデータベース: SQID
- 高スケーラビリティが必要な分散システム: Snowflake ID
- 標準化された環境や相互運用性が重要: UUID
- 時間順ソートや読みやすさが必要: ULID
ID方式の選択は、システムの規模、性能要件、データ特性に応じて慎重に行いましょう。
最後に
今年もCYBIRD Advent Calendar 2024ご覧いただき、ありがとうございました!2024年、お疲れ様でした!