ブリッジエンジニアとはなにか
ブリッジエンジニアは Wikipedia において以下のように定義されます。
グローバルなプロジェクト環境下において、ITと異分野・異業界との架け橋となり融合を行い、製品やサービスをプロジェクトチームとして生み出す人材
私の理解で言い換えると、「海外のエンジニアと協働する際に、日本と海外の橋渡しをしてシステム開発を成功に導く語学力に長けたエンジニア」となります。日本の人口減少に伴い、海外のエンジニアと協働する開発体制は年々普及しています。その際に活躍するのが、ブリッジエンジニアという職種です。
弊社はフィリピン・セブ島にある開発子会社 FullSpeed Technologies において、たくさんのフィリピン人開発者と協働してシステム開発をおこなっています。
私も弊社に転職してから 2 年半に渡ってブリッジエンジニア業務をしてきました。その経験から、ブリッジエンジニアになるべき理由 BEST 5 を私見として書かせていただきます。
5 位:英語力が向上する
海外との協働体制も様々ですが、英語を共通言語として業務を進めることが多いです。弊社も協働しているフィリピンや、IT 人材が増加しているインドなど、英語力に長けた国のエンジニアと働く際には英語を用いることが多いと思います。
英語力が向上すると、情報や人にアクセスできる範囲が一気に広がります。日本語話者が減っていく中で、日本語でのコミュニケーションにしがみつくのか、英語など外国語の能力を伸ばすのかは、現代に生きる我々にとって人生の大きな分岐点になるでしょう。後者を選ぶ際には、もちろん外国語を学習しないといけません。
SHOWROOM 株式会社社長の前田裕二氏(私の前職 DeNA での元同僚でもある)は「英語ができるようになりたいから英会話教室でバイトをしていた」と各所で話しています。もしあなたが「お金を稼ぎたい」かつ「英語ができるようになりたい」のであれば、これは合理的な時間の使い方といえます。
ブリッジエンジニアになれば、業務内で英語を使ったコミュニケーションが頻発します。つまり、お金を稼ぎながら英語力が向上します。
4 位:英語での業務経験ができる
あなたは英語力が元々高いかもしれません。しかし、いわゆる「英語力」の高さというものは、英語を用いた業務がしっかりとこなせるのかと完全一致はしません。
私個人は中学の頃に約 2 年半をアメリカ・カリフォルニア州の現地校で過ごし、TOEIC 930 点(リスニングは満点)という一定の英語力を有していました。大学時代もバックパッカーとして海外を周遊し、いつでも外国人と一緒に働けると思っていました。
しかし、いざ「外国人と働くポジション」での転職活動をすると、実際に英語での業務経験を強く求められると感じました。そして現職で多くのブリッジエンジニアを見て改めて思いますが、いわゆる「英語力の高さ」と「英語での業務力の高さ」は完全一致しないのです。
単に英語ができるようになるだけでなく、英語で仕事ができるようになりたいのであれば、英語で仕事をすることが手っ取り早いです。市場価値を示すエビデンスとしても「実際に働いて成果を出していた」という条件をクリアしているのとしていないのとでは、説得力が断然異なります。
ブリッジエンジニアになれば、実際に「英語での業務経験」を積むことができます。
3 位:英語を用いることでシステム開発が捗る
システム開発をしていると、ドキュメントなどの一次情報ソースが英語で書かれていることが多くあります。プログラムに書く関数名や実行するコマンドなども英語でしょう。最終的に英語で表現されるロジックに落とし込むにあたって、上流工程の早い段階から英語化して業務を進めることは効率的であると感じることが多くあります。逆にいうと、ブリッジエンジニアとしてうまく英訳できない仕様は、論理的な欠陥をもつ仕様だと気づくことがあります。
一般的に、日本語は曖昧で情緒的な表現が得意な言語であるといわれることがあります。漢字による表現の豊富さや、英語ほど語順が明確に決まっていないことによる主述の捻じれなどがその背景にあるといわれます。他方で、歴史の浅い英語は論理的な表現が得意な言語として設計されているといわれることがあります。
あなたが俳句を詠みたいのであれば、日本語はよい言語といえるでしょう。しかし、あなたがシステム開発をしたいのであれば、日本語よりも英語の方がより向いている言語といえるのではないでしょうか。
ブリッジエンジニアになれば、システム開発に適した英語を用いることで、業務遂行が捗ります。
2 位:異文化理解により仕事の武器が増える
外国人と働きはじめると、根本的な文化の違いに直面して困惑したり感心したりすることがあります。
例えば、先日、セブ島支社でおこなわれたクリスマスパーティーに開発部の部長という立場で参加しました。部下であるフィリピン人の副部長が部署の全社員にオリジナルマグカップなどの高価なプレゼントを自腹で渡しているのを横目に、日本から数千円分のお菓子やおもちゃしかプレゼントを用意していなかった私は立場がありませんでした。しまいには部下とのディナーの場において、「フィリピンでは上司が部下にプレゼントをするけど、日本では部下が上司にプレゼントする文化なんですよね?」と言われてしまい、急いでフィリピン現地でプレゼントを買うために奔走することになりました。
よく考えれば、フィリピン人は普段から「チームビルディングのためのチームビルディング」に本気で取り組んでいます。日本のようにとりあえず飲み会をして、酔った勢いでやっと腹の底を少しずつさらけ出して、仕事の愚痴などで管を巻くことはほとんどありません。チームビルディングのディナーも、食事はアルコールなしで簡潔に近況報告をしながら食べ、二次会からアルコールを入れてより親密な談笑をしますが仕事の話は基本的にしません。若手社員がチームビルディングのためのミニゲームを企画してくれて、全員で当然のように楽しくゲームに参加する光景もよく見られます。システム的に仲良くなることは日本以上に得意だと感じます。
先日以下の書籍を読みました。
この本のよい点は、学術的な異文化の紹介ではなく、あくまでビジネスにおける文化の違いに特化している点です。外国人の上司、部下、クライアントと仕事をするにあたってのケーススタディが豊富で、特にハイコンテクスト文化で寡黙な日本人と働くのに苦労する外国人のケースが幾度となく紹介されています。著者はアメリカ人の経営思想家ですが、Kindle 内で文字列検索をすると「日本」への言及が 100 箇所以上存在します。
あなたは日本での働き方が普通だと思っているかもしれませんが、グローバル水準での「日本人」「日本企業」は異端な文化をもつ難しい相手として捉えられています。私はフィリピン人と何年も協働したことで、日本で当たり前だった働き方をフラットに見つめ直すチャンスが何度もありました。彼らと協働して成果を出すために、働き方のオプションを学び直し、拡充させている毎日です。
ブリッジエンジニアになれば、外国人との協働で異文化を学び、仕事の武器が増えます。
1 位:成長する環境に物理的に身を置ける
2022年になって、やっと海外出張に行くようになりました。内心では「リモートワークでも仕事はできるのに本当に海外に行ってコスト以上のバリューが発揮できるだろうか」と不安がありました。結果として、現地でしかできないチームビルディングや現地行政からの情報収集などもおこないつつ、部下の自宅に招待されるなどして文化についても理解を深めることができました。
会社目線でフラットに見ても「バリューは出せたかな」と一安心できたのですが、それ以上に私自身の中での変化を自覚できたのが印象的でした。フィリピン・セブ市の区画化されたビジネス街である IT パークには、若者ばかりが 24 時間ずっといます。午前 2-3 時頃のコーヒーショップを覗くと、ラップトップを開いてメールを書いたり勉強したりしている若者たちで混み合っているのです。治安の問題もありますが、日本のように酔っ払ってフラフラ歩いているような人はおらず、とにかく前向きなエネルギーを感じます。
他にもフィリピン国内の別の都市で、高台にある高級レストランに行くと、平日にも関わらず長蛇の列でなかなか入れないことがありました。これはつまり、国民がリッチになるスピードに対して、高級レストランの供給が追いついていないのです。やっと席に着いて眼下に広がる高層ビル群に感動していると、案内してくれた現地社員の妻であるフィリピン人女性から「ここから見える高層ビルはほぼすべて直近 3 年ほどで建ったのよ」と言われました。更に建設中のビル群がまだまだたくさんありました。また 1-2 年後には更に景色が変わっていると確信できました。
そのフィリピン人女性は、フィリピン最高峰のフィリピン大学を卒業後、DMM英会話におけるフィリピン人講師の管理業務の仕事を経て、いまは現地の高級コンドミニアムやオフィス向けに清掃員を派遣する会社を起業している女性でした。彼女らと話し込んでいると、純粋に成長している・上向きである環境に身を置くことの素晴らしさを強く感じました。
残念ながら 2022 年を生きる我々にとって、日本はここまでの高揚感を感じさせてくれる環境ではないと思います。数十年ほど前であれば日本が世界最高に激アツの成長環境だったでしょう。しかし、今この時代を生きるなら東南アジア、もう数十年先を生きるならアフリカあたりが、恐らく世界で最もエネルギーを感じられる場所だと思います。
私たちは生きる時代を選ぶことはできませんが、生きる場所・環境を選ぶことはできます。いまこの世界における激アツの場所でギラギラした目を輝かせる人たちに混じって事業をしていると、体感的に「人生に本気で取り組もう」というエネルギーが漲ってきます。
ブリッジエンジニアになれば、日本にはない成長環境を体感して人生観がアップデートされます。
・・・乱筆で失礼しましたが、以上です。