#はじめに
この記事はシスコの同志による Advent Calendar の一部として投稿しています
- 2017年版: https://qiita.com/advent-calendar/2017/cisco
- 2018年版: https://qiita.com/advent-calendar/2018/cisco
- 2019年版: https://qiita.com/advent-calendar/2019/cisco
本記事はAdvent Calendar7日目の投稿になります。
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以前こんなような記事をQiitaに投稿したことがあります。
→ 自宅をLoRaWAN基地局にしてみた話①
シスコはネットワーク・セキュリティ・コラボレーション・データセンター製品など様々なIT分野におけるソリューション群を展開していますが、実はIoTの分野にも力を入れています。
本記事ではその中で私が自宅に基地局を建ててしまうほどハマっている「LoRaWAN」という技術について、名古屋市内を回ってとある検証をした結果を書かせていただきます。
#LoRaWANってなに?
上の記事にLoRaWANってなに?LoRaWANってどんな仕組みなの?というのを簡単にまとめているので、ぜひまずはそちらから目を通していただけると、これから書く話はわかりやすくなると思います。
改めてLoRaWANについて簡単に説明しますと、LPWAN(Low Power Wide Area Network)と呼ばれる無線分類の一種で低消費電力(Low Power)と広域通信(WAN)といった特徴を持つ技術になります。
基地局(LoRaWAN Gateway)の設置にあたって、LoRaWANは「特定省電力無線」と呼ばれる分類に属しているため、総務省への届け出や免許などは必要ありません。
#検証の目的
巷でLoRaWANと言えば「数十キロの無線通信ができる」ようなイメージが先行している印象です。
たしかにこの文言は間違ってはいません。しかし、それが実現するのは特定の条件下であり、一般的な街の中にたった一つのゲートウェイを配置するだけでその周りが数十キロカバーできるような技術ではないというのが現実です。
今回の検証はLoRaWANという技術は**”点”で広範囲をカバーする技術ではなく、”面”**で広範囲をカバーする技術であるということを広く知っていただくためのものになります。
#検証概要
今回の検証ではGISupplyのウェアラブルLoRaトラッカー「LW-360HR」を使用し、シスコ名古屋オフィスに設置されている1台のLoRaWANゲートウェイから周囲約2km半径内で複数の測定ポイントを決め、LoRaWANの通信が行えるのかを検証しました。
↓ LW-360HR
(腕時計のように装着し、心拍・位置情報・皮膚温度・転倒検出などが行えるLoRaWAN対応デバイス)
GISupply LW-360HR紹介ページ
↓ シスコ名古屋オフィス(12階)に設置されているLoRaWANアンテナ(ANT-LPWA-DB-O-N-5)とRadiation Pattern
(横方向には電波が届きやすいですが、下側には少し弱いです。)
↓ シスコ名古屋オフィス(12階)に設置されているLoRaWAN Gateway Cisco IXM(IoT Extension Module)
Cisco IXM製品データシート
↓ シスコ名古屋オフィスが円中心のホームアイコンで半径2km円周辺に測定ポイント(青アイコン)を決めました。
#検証方法
・計測方法
各計測ポイントまで車で移動し到着時刻を記録、到着から3分間その場で待機するという計測方法にしました。
LW-360HRは最短で1分毎にGPS情報や心拍数の情報をLoRaWANゲートウェイに対して送信することができます。
そのため、3分計測ポイントに留まるということは最低でも2回のLoRaWANゲートウェイに対する通信が実行されることになります。
↓ 中心のホームアイコンにあるオフィスより出発し反時計回りに測定ポイントをたどっていきました。
#検証環境
各計測ポイントに到着後、車のダッシュボード上、下の写真のようにLW-360HRを設置して計測しました。
車の車内ではGPSの座標取得がしにくいのもあり、この配置にしています。
本当は外に出て計測をしたかったのですが、時間の関係と(寒かったので)車の中からの計測にしました。
#検証結果
今回の検証ではすべての計測ポイントを回るのに約二時間半かかりました、、、。
結果としては当初想定していたものと大きく違うものに、、、。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
通信結果はLW-360HR側でわからないため、ネットワークサーバー側でLW-360HRからの通信が名古屋オフィスのゲートウェイに到達していたのかを確認します。
ネットワークサーバーでは送受信したパケットの時間・信号強度・送受信デバイスのID・受信ゲートウェイのIDなど様々な情報を確認することができます。
↓ ネットワークサーバーのダッシュボード(固有のIDはモザイク処理しています)
計測した時間を記録していたため、ネットワークサーバーを見ればその時間に通信が行われていたのかを確認できます。
そしてそれをまとめたものがこちらになります!!! ↓
下の地図の計測ポイントに赤い○がついている部分がゲートウェイに対して通信できていた場所になります。
結果として、オフィスの南側は全滅、、、。
東、西にはある程度の到達性があると見受けられます。
#考察
検証をする前、なんだかんだアンテナを設置している場所もオフィスビルの12階ということでかなり見通しのいい場所ですし、**反射なりしてカバーできちゃうんじゃないかな?**という気持ちはありました。
この結果を見て改めて感じたのは、アンテナの設置箇所の見通しは非常に重要であるということです。
下の地図をご覧ください。地図内の青い部分はアンテナの設置箇所から見渡せる範囲(角度)になります。
なんと、通信できた計測ポイントはこの範囲内に入っているわけです。
地理的な状況を説明しますと、シスコ名古屋オフィスは「桜通り」という東西に伸びた片側4車線の大きい道路沿いにあります。
この桜通り沿いはビルが立ち並び、電波の反射という意味ではかなりの好条件ではないかと考えられます。
では**北側はなぜ一箇所しか通信できていないの?**という部分が気になると思います。
その理由として、名古屋城(唯一通信できた北側の計測ポイント)周辺の高低差にあるのではないかと分析しました。
下の地図をご覧ください。これはシスコ名古屋オフィスと名古屋城周辺の高低差を表した地図になります。
暖色が高い部分を表し、寒色が低い部分を表しています。
国土地理院「デジタル標高地形図で見る東海地方の凸凹(DEM版)」より
https://www.gsi.go.jp/chubu/dem/nagoyahokubu_dem.pdf
地図中心の名古屋城を境に、北側と西側は標高が低くなっていることがわかります。
北側の計測ポイントが名古屋城の影に入ってしまったため、電波が届きにくくなっているのでは?と考えました。
#所感
本記事での考察はあくまで考察です。無線環境というのは様々な干渉源の影響を受けます。それは建築物であったり木や石、人ゴミなども影響すると考えられています。また、今回の検証で使用したデバイス、検証環境によっても違う結果になるということは十分に考えられます。
今回の検証結果では、見通しの悪い場所(方向に)対しては通信ができなかったですが、あくまで1台のゲートウェイを用いたから生まれた結果です。
最初に述べましたが、LoRaWANとは**「”点”で広範囲をカバーする技術ではなく、”面”で広範囲をカバーする技術である」というところが非常に重要**です。
通信できない部分にゲートウェイを設置することで面を広げていき、広範囲をカバーするということですね!
#最後に
最後に、番外編の番外編として「数十キロの無線通信ができる」というのも特定の条件下ではできてしまう技術だという部分についてもご紹介いたします。
シスコ名古屋オフィスから東方面を見ると、はるか遠くに東山スカイタワーという標高214mのタワーが見えます。
(イケメンゴリラのシャバーニが有名な東山動植物園に隣接しています)
ここなら**シスコ名古屋オフィスまで電波が届くのではないか?**と考え、実際に行って通信を試みてきました。
ちなみにシスコ名古屋オフィスから東山スカイタワーまでの直線距離はおよそ7kmになります。
結果・・・通信することができました!
この日は少し曇り気味でしたが、シスコ名古屋オフィスにあるゲートウェイまで、無事通信できたことを確認しました。
次はもっと遠くまで行ってみたいと思います。
もっと話したいことはたくさんありますが、あくまで番外編ということでここまでにします。
今後もLoRaWAN関連のアップデートがありましたらQiitaに記事を投稿する予定です、よろしくお願いいたします。
#免責事項
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