LoginSignup
6
1

More than 5 years have passed since last update.

早押しクイズの数学(無理数?超越数?ver)

Last updated at Posted at 2018-12-09

はじめに...

はじめまして、今回が初投稿になります。あまり学術的な内容ではないかもしれませんが...温かく見てもらえると幸いです:relaxed:
今回は、私の今一番の趣味である早押しクイズと、クイズで出てきたことで興味を持った超越数について触れてみたいと思います。

今回の概要

・無理数と超越数について(すごく簡単に)まとめてみる。
・得られた知識をもとに、早押しクイズの問題を考察する。

1.無理数と超越数

まず最初にこの二つの言葉について説明していきたいと思います。

1.1 無理数

無理数に関しては中学校でも習う言葉ですね。
実数$x$がある整数$a,b$(ただし$b≠0$)を用いて

x=\frac{a}{b}\\

と表すことができるとき、$x$を有理数といい、表すことができない実数のことを無理数と言います。$\sqrt{2}$や、ネイピア数の$\mathrm{e}$、円周率の$\pi$などが無理数の有名な例ですね。$\sqrt{2}$が無理数であることの証明は、高校生の時に背理法を使う問題として解いた記憶があります。

1.2 超越数

次に超越数というものを紹介します。その前に「代数的数」というものについて述べたいと思います。

1.2.1 代数的数

有理数係数の、$x\in \mathbb{C}$についての多項式を

P(x)=x^n+a_{n-1} x^{n-1} +...a_1 x+ a_0\\

とおきます。このとき$n\in \mathbb{N}$であり、$0\leqq i\leqq n-1$を満たす任意の$i\in \mathbb{Z}$について$a_i\in \mathbb{Q}$です。

そして、この$P(x)$に対しての方程式

P(x)=0\\

を満たすような解$x$のことを代数的数を言います。
例えば、有理数$\frac{a}{b} \\$は、一次方程式 $x-\frac{a}{b}=0 \\$
の解になるので代数的数です。

さらに、先ほど述べた無理数も代数的数となることがあります。簡単に言えば、例えば$\sqrt{2}$は二次方程式$x^2-2=0$の解の一つですよね。

$x\in \mathbb{C}$であることから、複素数の代数的数もあります。
虚数単位の$i$は、二次方程式$x^2+1=0$の一つなので代数的数です。

1.2.2 超越数

ここで本題の超越数の話に入ります。

超越数とは代数的数でない複素数のことを言います。簡単に言うと、超越数を解に持つ有理数計数の代数方程式は作れませんよーということです。つまり、任意の複素数は代数的数or超越数のどちらかということになります。
超越数の例として、無理数の例でも出てきたネイピア数の$\mathrm{e}$、円周率$\pi$などがあります。

そんなの知ってどうするの?と思われるかもしれませんが、$\pi$が超越数であるということから「与えられた円の面積と同じ面積の正方形の作図可能性」という円積問題といった、古代からある作図問題を解決に導くことができます。

以下に現在で知られている超越数のその他の例を示します(カッコ内は証明した人物名です)

  • $\alpha \neq 0,1$ と $\beta$が代数的数で$\beta \notin \mathbb{Q}$のときの${\alpha}^{\beta}$ (ゲルフォント・シュナイダー)
  • $\mathrm{e}^\pi$ (ゲルフォント)
  • 代数的数$\alpha \neq0$に対する$\sin\alpha,\cos\alpha,\tan\alpha$ (リンダマン・ワイエルシュトラス)
  • $\pi+\mathrm{e}^\pi$ (ネステレンコ)

1番目の例は、ゲルフォント・シュナイダーの定理と言います。これを用いることで2番目の$\mathrm{e}^\pi$が超越数であることが言えます。
具体的には
$$\mathrm{e}^\pi={(\mathrm{e}^{{i}\pi})}^{-i}=(-1)^{-i}$$
と変形させます。(途中でオイラーの等式$\mathrm{e}^{i\pi}=-1$を使いしました。)
ここで$-1$は$0,1$以外の代数的数であり、$-i$は有理数ではない代数的数なので、ゲルフォント・シュナイダーの定理より$\mathrm{e}^\pi$が超越数であると言えます。
(私はこのゲルフォント・シュナイダーの定理、名前の響きがかっこよくて大好きです。)

この超越数の面白いところは、$\pi+\mathrm{e}^\pi$ みたいな数は超越数だと分かっているのにもかかわらず、単純に足したり掛けたりした$\mathrm{e}+\pi$や$\mathrm{e}\pi$という数はまだ超越数なのかどうか分かっていないところだと思います。このような数ですらどちらか分からないくらい、超越数の証明は難しいんですね。

というわけで、ここまで無理数と超越数についての簡単なまとめを行ってきました。

次からは早押しクイズとの話も絡めていきたいと思います。

2. 早押しクイズ

ここからは一旦無理数と超越数は置いといて、早押しクイズについて話します。

2.1 どこで押すのか

早押しクイズでは、問題文が順に口頭で読まれたり、文章として出てきたりするクイズです。そして解答が分かった段階でボタンを押し、一番早くボタンを押した人に解答権が渡されます。

ここで、1つ注意なのが、実際のクイズでは、分かったところで押すのではなく、分かりそうなところで押しといて、押してから考えるということです。
とにかく押して解答権を得ないことには始まりません。

2.2 早押しクイズの例題

さて、やっとここでこの記事の核心に来ました。

ここで、早押しクイズの例題を出題したいと思います。

「$\sqrt{2}$や、ネイピア数の$\mathrm{e}$、円周率の$\pi$などが有名な、有理数ではない実数のことをなんというでしょう?」

はい、答えはもちろん無理数ですよね。
このような問題ならば、ある程度数学をやってきた人ならば正解にたどり着けます。

では、このような問題のとき、どこで押すのが最善なのでしょうか?

私の見解として

$\sqrt{2}$や、ネイピア数の$\mathrm{e}$、円周率の$\pi$などが有名な、/

くらいで押せると完璧だろうと思います。

まず初めに、基本的に、自分が押そう!と思ってボタンを押してから、問題文が止まって解答に移るまでにタイムラグが生じます。したがって今回だと

$\sqrt{2}$や、ネイピア数の$\mathrm{e}$、円周率の$\pi$などが有名な、/

で押すと

$\sqrt{2}$や、ネイピア数の$\mathrm{e}$、円周率の$\pi$などが有名な、/有

くらいまでは聞けると思います。ここから問題の答えを推測していくわけです。

$\sqrt{2}$や、ネイピア数、円周率と言っているわけですからまぁこの3つの数に共通するものが解答となるだろう、と思うのが自然ですよね。そして、問題文の最後に"有"という言葉があります。これを(”有理数”の"有"だ...!!)と推測できれば、問題文の続きと、無理数という解答が導き出されます。

(早く押しすぎると"実数"という解答の可能性が消せないため、解答が1つに絞りきれません。)

このように早押しクイズでは、少しでも早く押す必要があります。

では、次の問題はどうでしょうか?

「ネイピア数の$\mathrm{e}$や円周率の$\pi$、$\mathrm{e}^\pi$などが有名な、有理数係数の代数方程式の解にならない数のことをなんというでしょう?」

はい、

これは超越数になります。押しポイントとしては

「ネイピア数の$\mathrm{e}$や円周率の$\pi$、$\mathrm{e}^\pi$/

くらいで良いと思います。この時点では"無理数"という解答の可能性がありますが、さすがに有名な例で$\mathrm{e}^\pi$みたいな数を出すということは超越数だよな、、、と推測できると思います。

2.3 無理数なの?超越数なの?

では最後にこのような例題をやってみます。
「ネイピア数の$\mathrm{e}$や円周率の$\pi$などが有名な、有理数係数の代数方程式の解にならない数のことをなんというでしょう?」

(えっ?さっきとほぼ同じなんですが...)

と思いましたよね。。そうですほぼ同じです。答えも同じく超越数のままです。

ですが、少しの変化が押しポイントを大きく変化させているのです。

先程と同じように

「ネイピア数の$\mathrm{e}$や円周率の$\pi$などが/

くらいで押すとしましょう。すると、前の問題では登場していた$\mathrm{e}^\pi$がいません。THE超越数!みたいなヒントがいなくなってしまった訳です。これでは超越数と無理数、2パターンの解答の可能性があります。したがってここで押してしまうのはとても危険です。

では、その前に出題した、無理数が答えの問題のように押すのはどうでしょうか?

すると、

「ネイピア数の$\mathrm{e}$や円周率の$\pi$などが有名な、/有

となります。これも実は危険です。"有"の後が有理数であるか、有理数係数であるのか区別がまだできないので、ここで押したとしても解答は絞れません。

したがって、この問題の押しポイントは

「ネイピア数の$\mathrm{e}$や円周率の$\pi$などが有名な、有理数/係

となります。ここで押しておけば有理数であるか、有理数係数であるか判断がつくので(有理数係数が出てくるなら、定義からして解答は超越数だな...)と推測できるわけです。

どれも似た様な問題でしたが、少しでも問題が変化すると、押しポイントが大きく変化してしまいます。これが早押しクイズの難しい部分でもあり、面白い部分だと思います。

また、超越数を知らないと、この問題でも"無理数!"と答えてしまうでしょう。「知らない」ということは実はとても怖いことなのかもしれません。。。

3 まとめ

これまでで無理数と超越数の数学的なおさらいと、早押しクイズで、答えが無理数となる問題と超越数となる問題の考察を行いました。

長々と書いてしまいましたが、超越数や早押しクイズの奥深さについて知っていただけたら幸いです。:boy:

参考文献

  • 西岡久美子(2015)『超越数とは何か 代数方程式の解にならない数たちの話』講談社

  • ジュリアン・ハヴィル(2012)『無理数の話 $\sqrt{2}$の発見から超越数の話まで』松浦俊輔 訳 青土社

-Wolfman MathWorld 「Transcendental Number」
http://mathworld.wolfram.com/TranscendentalNumber.html

6
1
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
6
1