CData Software Japan カスタマーサクセスエンジニアの出村(でむら)と申します。
CData は、メーカーやベンダーの壁を超えたデータ接続を実現するサードパーティーツールを開発・提供している会社です。
データは企業の大事な経営資源。日々データ接続に関するさまざまなご相談を頂戴します。もちろんkintone に関するご相談も。
kintone に関するご相談で最近多いのは「基幹システム/ERP のデータをkintone アプリで利用したい(基幹システム/ERP → kintone)」、すなわち「kintone を基幹システムのフロントとして使いたい!」というものです。
どうしてkintone が基幹システム/ERP のフロントして求められるのか?
kintone を基幹システム/ERP のフロントとして扱うというアイディアは目新しいものではなく、kintone 公式サイトでも紹介されています。
基幹システムとデータ連携にキントーン|基幹システムのお悩みに!周辺業務もまるっとカバー
https://kintone.cybozu.co.jp/purpose/form.html
上記URL からkintone が基幹システム/ERP のフロントして求められる理由を抜き出してみました。
基幹システム/ERP | kintone |
---|---|
複雑で重い | 簡単な画面で入力の手間を軽減、利用頻度の高い情報だけ管理=膨大な量からの情報探しから解放される |
外部アクセスできない | スマホでアクセス可能 |
改修が高価 | ドラック&ドロップで改修可能、現場業務に合わせてより柔軟な対応が可能 |
(基幹システムの場合)フローが分断される | kintone で業務システム(アプリ)が作れるため一気通貫&転記作業も不要に |
エンジニアとしてはkintone と基幹システム/ERP では設計思想が違うでしょうからUI/UX が異なるのも当然よねと思うところですが、エンドユーザー視点でみるとかゆいところに手が届くというか、なるほど納得の理由です。
それに、これらは経済産業省が「2025 年の崖」として指摘した下記の問題にも通ずる部分があるように感じます。
・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。
引用:経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(2018)
ちなみに、上記の他にも、
- 基幹システム/ERP は確定した数字を管理するのは得意だけどプロセス管理(例:売上が確定するまでの見込みの数字管理)は苦手
- 世の中にはマウス操作が使えない(Tab キーや矢印キーで操作する)基幹システム/ERP が存在しており・・・
といった理由からkintone を基幹システム/ERP のフロントにというニーズが生まれているという話も耳にしました。マウスが使えないのはキツイですね・・・
基幹システム/ERP → kintone を実現する方法とは?
kintone を基幹システム/ERP のフロントして利用するには、基幹システム/ERP にあるデータをkintone に渡す何らかの手段が必要です。
主な方法として次の4つがあるかなと思います。
方法1.CSV 形式などのファイルで渡す
(参考)レコードの一括登録と一括更新
方法2.専用プラグインで渡す
(参考)拡張機能
方法3.kintone API で渡す
(参考)kintone API
方法4.ETL/EAI ツールで渡す
(参考)データ連携(EAI)
一番手軽なのは「方法1.CSV 形式などのファイルで渡す」ですよね。
ただ、ファイルで渡す方法は属人的になりがち。作業忘れなどのヒューマンエラーのリスクも考えられます。
そのため次点として「方法2.専用プラグインで渡す」が選択肢としてあがってくることと思います。
ただし、利用している基幹システム/ERP に専用プラグインが無ければ方法2を選択することができません。
対応プラグインが無いとなるとデータを渡す仕組み(プログラム)をオーダーメイドするほかありません。「方法3.kintone API で渡す」です。
ただ、この方法の最大の欠点はお金と時間がかかるということです。
しかも一度完成すばそれで終わりではありません。kintone API のアップデートなどに合わせてメンテナンスも必要です。
そこで方法3に並ぶもう一つの選択肢として、異なるシステム間のデータ接続を実現するために作られたツールを使う「方法4.ETL/EAI ツールで渡す」があがってくることと思います。
この方法ならkintone API がアップデートされた場合その対応をETL/EAI メーカー側が行ってくれますので、メンテナンスの手間が省けます。
その一方、方法4も方法2の専用プラグインと同じで、ETL/EAI ツールが利用している基幹システム/ERP に対応していない場合、その時点で試合終了となります。
どの方法が良いかは一概に言えないけれども・・・
意外と見落とさればちなポイントだと思うのですが、kintone API のアップデートへの対応を自分たちで管理しなくてよいというのは非常に大きなメリットだと思います。
API のアップデートはある日突然訪れます。本当に。
個人的な経験から言うと、いつもの処理を実行→エラーになる→原因を探る→API がアップデートされていることに気づく、というパターンが多いです。
業務を止めるわけにはいかないので泣きながら稟議書を書いてプログラムの修正を業者に依頼したり、もう業者に依頼する予算が無いと言われ(業者のサポートを受けられなくなるのを覚悟しつつ)自らプログラムを修正するという禁断の方法をとったこともあります・・・
そいういう痛い経験があるので、自分たちでAPI のアップデートを追いかけ、対応しなくてよいというのはかなりありがたいなと思います。
また、この先、企業が生き残るには非生産的な仕事を自動化(デジタル化)し、生産的な仕事に従事する人の割合を増やし、かつデジタル技術を用いた新しいビジネスモデル(新しい付加価値)を創出するDX 化が必要と言われています。
つまり、基幹システム/ERP とkintone をつなぐという売上を生み出さない作業に人・お金・時間を使う意義は(よっぽどの理由が無い限りは)無いでしょう。
となると、方法2→方法4→方法3で検討するのが良いように感じられます。
「方法2.専用プラグインで渡す」&「方法4.ETL/EAI ツールで渡す」の具体的な方法
「方法2.専用プラグインで渡す」について
専用プラグインについては下記ページで検索できるようなので、ぜひチェックしてみてください。(ぱっと見た感じですとfreee、マネーフォワード クラウド、奉行などがありました)
「方法4.ETL/EAI ツールで渡す」について
こちらについては、下記cybozu developer network ページを参照ください。
また、次項にて上記のページに記載のない方法、CData 製品を用いた場合の基幹システム/ERP → kintone データ接続方法をご紹介します。
クラウドはもちろん、オンプレミス環境の基幹システム/ERP もkintone に接続できるのでぜひチェックしてみてください。
CData 製品を用いた場合の基幹システム/ERP → kintone データ接続
これから次の4つの方法を紹介します。
1."クラウド"の基幹システム/ERP → kintone
2."オンプレミス"の基幹システム/ERP → kintone(あるいは、1の方法がマッチしなかった場合)
3.基幹システム/ERP データを"直接参照させたくない"場合
4.おまけ|基幹システム/ERP データの格納先がSQL Server の場合
"クラウド"の基幹システム/ERP → kintone の場合
基幹システム/ERP 自体がSaas形式であったり、基幹システム/ERP データがクラウド上のデータベースに格納されている場合は、CDataの「CData Connect Cloud」とグレープシティ社の「krewData(クルーデータ)」を組合わせて利用することでデータ接続が可能です。
CData Connect Cloud は、krewData はもちろんSaaS 形式のBI ツールや表計算ソフト、ローコード/ノーコードツールなどと各種SaaS アプリやデータベースなどを接続する、インストール不要、SaaS 形式のデータ接続サービスです。
一方、グレープシティ社が提供するkrewData データは、複数のkintoneアプリのデータを集計・加工したり、OneDrive、BoxなどのクラウドストレージにあるExcel/CSVファイルを読み込み、データ編集フローの集計・加工データとして利用することができたりするkintone プラグインです。
現在、krewData はCData Connect Cloud と連携しており、CData Connect Cloud を介して外部システムとデータ接続を行うことができます。
詳しい利用イメージは、下記ページを参照ください。
CData Connect Cloud がサポートしているSaaS やデータベースは下記ページのとおりです。
ノーコードで驚くほど簡単にSaaS/データベース とkintone を接続できるので、一度お試しください!
"オンプレミス"の基幹システム/ERP → kintone の場合(あるいは、1の方法がマッチしなかった場合)
基幹システム/ERP 自体やそのデータベースがオンプレミス環境にある場合は、「CData Arc」とWindows 環境であれば「kintone ADO.NET Provider」(と場合によっては基幹システム/ERP 用のADO.NET Provider)を利用することでデータ接続が可能です。
CData Arc は、MFT(ファイル転送)、EDI(電子データ交換)、SaaS やDB 間のEAI(アプリケーション間データ連携)の機能をすべてワンプラットフォームで使うことができる究極のB2B 連携ツールです。
(平たく言うと、ファイル、データベース、SaaS API、オンプレミスやクラウドにある様々なデータをノーコードでつなぐ事ができるツールです。)
kintone ADO.NET Provider は、この場合CData Arc にkintone との接続口を追加するためのツールです。
(なので、場合によっては基幹システム/ERP との接続口を追加するために他のADO.NET Provider の利用が必要になります)
基幹システム/ERP が置かれているオンプレミス環境、あるいは基幹システム/ERP が見える環境にCData Arc などをインストールして使う形になります。
詳しい利用イメージは、下記ページをご参照ください。
- CData Arc を使ってkintone とSQL Server を双方向にデータ連携する方法
- SQLServer・BigQuery・SAP S/4 HANAのデータをCData Arcを使ってkintoneに連携する方法
こちらもお試しいただき、手軽さを実感いただければうれしいです。
なお、「この基幹システム/ERP には対応していないの?」などあれば、CData までお気軽にお問合せくださいね。
(なにせCData 製品はラインナップが多すぎて自力で探すのは至難の業なので・・・また対応製品が無かったらお許しください・・・)
基幹システム/ERP データを"直接参照させたくない"場合
「基幹システム/ERP の生データを公開して万が一書き換わったらと思うと不安・・・」という方には、多様なSaaS やDB データをノーコードで別のDB に複製(レプリケーション)できる「CData Sync」を使って基幹システム/ERP データを別のデータベース/データウェアハウスに複製してしまう方法もあります。
ただ、kintone から直接データベース/データウェアハウスは参照できないので、例えば、
- 基幹システム/ERP → CData Sync → データベース/データウェアハウス → CData Connect Cloud → krewData → kintone
- 基幹システム/ERP → CData Sync → データベース/データウェアハウス → CData Arc → kintone
というリッチな組合せにする必要があります。
CData Sync がサポートしているSaaS やデータベースは下記ページのとおりです。
おまけ|基幹システム/ERP データの格納先がSQL Server の場合
基幹システム/ERP のデータベースがSQL Server の場合は、「SSIS(SQL Server Integration Service)」、あるいは「SQL Server Linked Server」を利用したデータ接続方法もあります。
詳しい利用イメージは、下記ページをご参照ください。
この方法はプログラミングが必要になるなど難易度は高めです。
まとめ
今回ご紹介した方法のほとんどはノーコード・ノンプログラミングで実装いただけます。
もしご利用の基幹システム/ERP で、
- 複雑で重い
- 外部アクセスできない(データ入力のためだけに会社に行っている)
- 改修したいけど高価
- フローが分断される(転記作業が発生している)
などお悩みでしたらご紹介した方法で「kintone を基幹システムのフロントとして使う」を試してみていただければうれしく思います。
まもなく訪れる2025 年の崖もkintone を使えばひとっ飛びかもしれませんよ?