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Atomic Design ベースの Vue コンポーネント設計

Last updated at Posted at 2020-04-15

まえがき

vue.js のコンポーネント設計で悩んで、 Atomic Design を勉強し直したら
なんとなく形になった気がするので、まとめてみます。

2020/06/14 エラーハンドリングなどに portal-vue を使う場合を追記しました。

コンポーネント設計と Atomic Design の関わり方

Atomic Design は元々 UI 設計として考え出されたものです。
巨大なアプリケーションでも効率よくパーツを再利用し、
さらに細かい調節もできるように考えられています。

Atomic Design では「コンポーネント」という言葉が使われており、
一見すると vue などアプリケーションにもそのまま設計を利用できそうに思えます。
しかし、UI 設計の手法・思想をそのままアプリケーションの
コンポーネント設計に持ってくるのは少し無理がありました。
アプリケーション開発では、同じレイアウトでもデータの更新のタイミングが異なる場合があります。
この**データの流れやロジックをどこで行うか?**という概念があるため、
UI 設計として作られた Atomic Design をそのままアプリケーションで使えない理由になります。

ただ、Atomic Design の 各段階の関係性 に注目すると、
データの更新が役割上可能な階層」と「レイアウトを調整に専念する階層」に
分けられることに気づきました。

Atomic Design の段階と役割

atomic-design-process.png

段階 内容 UI例
Atoms これ以上分けられない単位 ボタン・テキスト入力欄・ラベル
Molecules Atoms が複数組み合わさったもの 入力フォーム
(ラベル+入力欄)
Organisms 1つの明らかな機能を持つ ヘッダー
Templates ページの枠組みを構成する ワイヤーフレーム
Pages ページにコンテンツを入れたもの デザインカンプ

以上が Atomic Design で提唱されている5段階です。

よく見ると Atoms, Molecules, Templates はレイアウトとしてのまとまり
Organisms と Pages はコンテンツベースでのまとまりになっています。

レイアウトとしてのまとまり」は、中に入る情報に関わらず、見た目・機能単位でのまとまり、
コンテンツベースでのまとまり」はコンテンツ(データ)単位でのまとまり
という分け方になります。

「レイアウトに関心が高い」「コンテンツに関心が高い」それぞれのまとまり方を
コンポーネント設計に当てはめると、次のように言い換えられると思います。

・Atoms, Molecules, Templates はユーザーインターフェースや、
 親コンポーネントから渡されたデータをどう表示するかに専念する。

・Organisms と Pages はコンテンツに関心が高い。API や store などデータの取得・変更の責務を持つ

これは Redux の推奨する、
Presentational Component (表示のためのコンポーネント)と
Container Component (ロジックコンポーネント)に近い分け方だと思っています。
参考:[redux] Presentational / Container componentの分離 - react-redux.connect()のつかいかた
(後述しますが、Organisms はレイアウト機能もあるので、完全に Container Component だとは言えませんが。。)

そして元の UI 設計としての Atomic Design でも、階層の逆流は禁止しています。
自分より上の階層のコンポーネントを取り込むことはできません。
反対に、自分より下の階層の読み込みは可能です。
例外として、Organisms は同じ階層の読み込みが可能です。

ここのルールが崩れてしまうと、レイアウトの依存関係も壊れてしまうので、UI 設計では禁止になっていました。
Vue のコンポーネント設計でも、データとコンテンツの依存関係を考えると、
階層の逆流は禁止するべきです。
(vue の Props と考え方が似ています。)

コンポーネント粒度の見極め

粒度について、Atomic Design では特に Atoms, Molecules, Organisms の分け方で悩むことが多い気がします。

Atomic Design 各段階を、どうやって HTML コーディングするか説明すると

  • Atoms は button, input など基本1つのタグで構成できるもの(例外:option を子要素にもつ select)
  • Molecules は複数のタグで最小限のレイアウトを構成するもの(カルーセル・入力フォームとバリデーションのセットなど)
  • Organisms はセクショニングコンテンツ

と言い換えることができます。

Organisms はセクショニングコンテンツ」という言葉でピンとこない人は、
基本的には

  1. 見出しを持つ
  2. section, article, aside, nav でマークアップできる
  • 内容について親コンポーネントに依存しない
  • 他のページにコンポーネントをそのまま移植しても成り立つ
  • コンポーネント内でデータの取得・更新が完結する

などの特徴があれば、Organisms として切り出し可能です。

Templates と Pages コンポーネントはページ全体に影響します。
Templates はページの大まかな配置(ワイヤーフレーム)、
Pages はコンテンツ制御(データ取得・更新などのロジックのみ)を管轄します。
Templates は Presentational、Pages は Container と言い換えることができます。

また、Pages は基本的に1画面に1つ必要ですが、
レイアウトが一緒なら Templates は複数の Pages で共有してしまって良いと思います。
(新規ユーザ情報入力とユーザ登録情報更新のように、ロジックが微妙に異なるが見た目がほとんど一緒の場合)

例として、ログインページを Atomic Design ベースでコンポーネント化していきます。
ページは下の図のように見出し・メールアドレス入力・パスワード入力・送信ボタンで構成されます。

1.png

まず、Pages ディレクトリにログインページのコンポーネントを作ります。
router から呼び出すコンポーネントは、この Pages コンポーネントになります。

今回の例ではページ表示前にデータ取得などを行わないのでロジックは書かず、
全体のレイアウトを定義する templates/LoginPage.vue を読み込むだけにします。

pages/LoginPage.vue
<template>
  <LoginPage />
</template>
<script>
import LoginPage from '@/templates/LoginPage.vue'

export default {
  components: {
    LoginPage
  },
}
</script>

Templates コンポーネントでは表示される UI を記述します。

templates/LoginPage.vue
<template>
  <section>
    <h1>ログイン</h1>
    <p>アカウントをお持ちの方は<br>下記よりログインしてください。</p>
    <form @submit.prevent id="login">
      <label for="mail">メールアドレス</label>
      <input id="mail" v-model="mailValue" type="text" placeholder="sample@mail.jp">

      <label for="password">パスワード</label>
      <input id="password" v-model="passwordValue" type="password" autocomplete="off">

      <button type="button" @click="clickLogin">ログイン</button>
    </form>
    <p>アカウントをお持ちでない方は<br>会員登録が必要です。</p>
    <p><a href="#">新規会員登録</a></p>
  </section>
</template>

<script>
import { login } from '@/api/user.js';
export default {
  methods: {
    clickLogin(e) {
      e.preventDefault();
      login({ mail: this.mailValue, password: this.passwordValue });
    },
  },
}
</script>

「ログイン」ボタンを押すと、入力したメールアドレスとパスワードを API へ投げる想定です。

Templates では データの変更は行わない ルールなので、
API 通信は Pages か Organisms で実行する必要があります。

このページのログインフォームは独立しているため(親コンポーネントと連携が必要ない・別のページにそのまま移植できるレベルの完結した内容)、
なのでログイン部分は Organisms として切り出せます。

Organisms にすれば データの更新が可能 なので、 store にアクセスしたり、API でデータを送信することができます。

↓ 上記 templates/LoginPage.vue から Organisms にフォーム部分を切り出し、
「ログイン」ボタンが押されたら userAPI に通信するようにしたもの。

organisms/LoginForm.vue
<template>
  <form @submit.prevent id="login">
    <label for="mail">メールアドレス</label>
    <input id="mail" v-model="mailValue" type="text" placeholder="sample@mail.jp">

    <label for="password">パスワード</label>
    <input id="password" v-model="passwordValue" type="password" autocomplete="off">

    <button type="button" @click="clickLogin">ログイン</button>
  </form>
</template>

<script>
import { login } from '@/api/user.js';
export default {
  methods: {
    clickLogin(e) {
      e.preventDefault();
      login( { mail: this.mailValue, password: this.passwordValue });
    },
  },
}
</script>

切り出した organisms/LoginForm.vue を Templates から読み込むように変更します。
Templates はこれで完成です。

templates/LoginPage.vue
<template>
  <section>
    <h1>ログイン</h1>
    <p>アカウントをお持ちの方は<br>下記よりログインしてください。</p>
    <LoginForm />
    <p>アカウントをお持ちでない方は<br>会員登録が必要です。</p>
    <p><a href="#">新規会員登録</a></p>
  </section>
</template>

<script>
import LoginForm from '@/organisms/LoginForm.vue'

export default {
  components: {
    LoginForm
  },
}
</script>

また、ログインフォームの中のメールアドレス、パスワードの入力は
別のページでも使い回す可能性があるので、それぞれコンポーネント化したほうが良さそうです。
外部にデータ更新を行わず、2つ以上の HTML 要素からなるのでこれらは Molecules コンポーネントにします。
Molecules についでにフォームのバリデーション処理も実装します。

molecules/inputMail.vue
<template>
  <div>
    <label for="mail">メールアドレス</label>
    <input
      id="mail" :value="mailValue" type="text" placeholder="sample@mail.jp"
      @change="changeMail"
    >
    <p v-if="error" id="errorMail">{{ error }}</p>
  </div>
</template>

<script>
import { checkMail } from '@/module/validation.js';

export default {
  data() {
    return {
      mailValue: '',
      error: '',
    }
  },
  methods: {
    changeMail(e) {
      const val = e.target.value;
      if (checkMail(val)) {
        this.mailValue = val;
        this.error = '';
      } else {
        this.mailValue = '';
        this.error = 'メールアドレスを正しい形式にしてください';
      }
      this.$emit('handle-change-mail', this.mailValue);
    },
  },
}
</script>

入力箇所を Molecules にすると organisms/LoginForm.vue は下記のように変わります。
一緒に入力バリデーションの結果によってボタンの disabled を制御できるようにしました。

organisms/LoginForm.vue
<template>
  <form @submit.prevent id="login">
    <InputMail @handle-change-mail="changeMail">
    <InputPassword @handle-change-password="changePassword">
    <button type="button" :disabled="buttonDisabled" @click="clickLogin">ログイン</button>
  </form>
</template>

<script>
import { login } from '@/api/user.js';
import InputMail from '@/molecules/InputMail.vue';
import InputPassword from '@/molecules/InputPassword.vue';

export default {
  data() {
    return {
      mailValue: '',
      passwordValue: '',
    }
  },
  computed: {
    buttonDisabled() {
      return !!(this.mailValue && this.passwordValue);
    }
  },
  methods: {
    clickLogin(e) {
      e.preventDefault();
      login( { mail: this.mailValue, password: this.passwordValue });
    },
    changeMail(val) {
      this.mailValue = val;
    },
    changePassword(val) {
      this.passwordValue = val;
    },
  },
}
</script>

input 要素と button 要素は他のページでもほぼ共通の振る舞いになるので、
Atoms コンポーネントにしても良さそうです。

先ほどの図にコンポーネント切り分けを追加するとこのようになります。
atomivDesign.png

実際に各要素をコンポーネント化していく際は、上から下へ、
Pages → Templates → Organisms → Molecules → Atoms の順で考えていくと
コンポーネントを細かく分割しすぎず、作業がしやすかったです。

また、コンポーネントが巨大になり、複数の処理が混在しているようだったら
どんどん Organisms や Molecules にコンポーネント分割してしまった方が良かったです。

エラーハンドリングは Organisms にエラーダイアログのコンポーネントを作り、
それを Templates で必ず読み込むようにしました。
エラーダイアログを発生させたいタイミングは、データの更新を行った場合に限定されたので
エラー発生時は Pages か Organisms からエラー用 vuex を更新し、表示状態の制御をしていました。(ローディングも似た感じで実装しました)

(2020.06.14 追記)
「vuex 肥大化避けるべし」という最近の風潮に合わせて、
エラーとローディングは portal-vue で実装するようにしました。
使い方は、HTML として出力したい <portal-target="loadingArea(ローディングの場合)">
Templates に記述します。
Pages もしくは Organisms で <portal> を含んだコンポーネントを読み込み、
そこで prop で portal へ流したい情報を渡します。
確かに vuex を使わないでハンドリングできるけど、vuex で実装した方がわかりやすいですね。。

ディレクトリ構成

最後にコンポーネント設計のディレクトリ構成を置いておきます。

ディレクトリ 内容
js
├ api axios での ajax 通信、web ストレージへのアクセス
├ atoms button, input など
├ module 汎用的な関数。
バリデーションや userAgent 判定など
├ molecules 入力フォーム(見出し+パーツ)、スライダー、
カード型 UI など
├ organisms ログイン、エラー、ローディング、notification など
├ pages ページのコンテンツ
├ store ログイン情報、会員情報
└ templates ページの大枠

まとめ

Atomic Design をベースに、レイアウトの粒度とデータの更新箇所の制限・コンポーネントの階層構造のルールを作りました。

実際にこの考え方で web アプリを作ってみた感想なのですが、

:relaxed: メリット
・コンポーネント分割は「Atomic Design をベースにしている」とイメージ共有がしやすい
・データの流れが限定的なのでテストしやすい
・データ構造の変更に強い
・vuex の複雑さを感じなくなる
・コンポーネントの使い回しは意図通りできる
・1ファイルあたりの行数が長くなりにくい
・外部 CSS を使う場合、設計も Atomic Design の考え方をそのまま使える

:frowning2: デメリット
・ルールが複雑。。
・最初戸惑う人が多かった
・Organisms のファイルが増えがち
・Organisms から Pages にデータを伝えたい場合など、変更を通知するだけの中継イベントができてしまう
 └ 同一ページ内のデータのやり取りであっても vuex を使ってもいいかもしれない
・Atoms の存在感が薄いかも

Presentational と Container で分ける方法も理にかなっているけど、
単一ファイルコンポーネントの場合は Atomic Design ベースの考え方は
レイアウトとロジックのバランスが良い気がしていて、Vue との相性がいい気がしました。

もっと良い設計方法ができると思うのですが、思いついたら追加していきます。
考慮不足やわかりにくい箇所があればご指摘ください:bow_tone1:

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