Reactを学習中のRailsエンジニアです。学習していて思うのは、Reactは(サービス開発全体のことを考えると)Railsよりはるか学習コストが高いということ。似たようなサービスを作るために必要な手数も、考えなければいけないこともかなり多いです。
正直最初は「技術が大好きなエンジニアの自己満だろ」「Railsに飽きた奴らがやってるだけだろ」くらいに思っていたのですが、そうとも限らないことが腹落ちして理解できるようになったので、現在の考えをまとめてみようと思います。
おことわり
この記事の中で登場するSPA
という単語はフロントエンドとバックエンドを明確に分けて開発されるアプリケーション
くらいの意味として解釈してください。フロントエンドのロジックをNuxt.jsで作ってNetlifyにデプロイして、Goで作ったAPIをAWSで動かす、みたいな構成のやつです。乱暴ですみません。他に良い表現があればコメントください。
モノリス
はRailsやLarabelでviewファイルの生成まで行っているアプリケーションを指します。
SPA⇄MPA
マイクロサービス⇄モノリス
で比較しろよ、って話ですが、マイクロサービスについて語れるほどの知識はないし、MPAというよりモノリスの話がしたかったので、雰囲気で読んでください。
SPAが台頭した理由
よりリッチな表現ができる(UXの向上)
ページ遷移が高速、DOMを色々動かしてもコードがカオスになりにくいなど。SPAのメリットとして真っ先にあげられることが多いので、みなさんもよくご存知かと思います。
フロントエンドとバックエンドが疎結合になる
疎結合になると、新技術を部分的に採用することが容易になります。またサービスの規模が大きくなっても、コードがカオスになりづらいです。Railsエンジニアをやっていると、成長し大規模化したRailsアプリ開発者がつらそうにしている記事をよく見かけます。
クロスプラットフォーム対応
SPAを採用すると、web、iOS、Android、macOS用アプリ、windows用アプリで同じAPIを使うことができます。
元々web以外のプラットフォームでは、表示周りやページ切り替え等のロジックを先にインストールして、他に必要なデータのやりとりだけをAPIを使って行う、というスタイルで統一されていました。webも同じスタイルに揃うと構成がキレイになってすっきりしますね。
マネージドサービスの充実
この記事を書くに至った理由です。この視点を得て、SPAが普及したことの必然性を理解しました。
2020年現在、ざっと思いつくだけでも以下のようなマネージドサービスが存在します。
認証: Firebase Auth, Auth0, Cognito
決済: Stripe
検索: Algolia
サーバーレスコンピューティング: Lambda, Cloud Functions
NoSQL: CloudFirestore, DynamoDB
ストレージ: S3
メール送信: SendGrid
ここで言えるのは、バックエンドで自前で実装しなければいけない機能が大幅に減ったということです。
「外部サービスをどれだけ有効に活用できるか」が重要になってくると、モノリスの魅力は相対的に薄れていきます。
そもそもRuby on Railsが登場した2004年にはAWSすら存在しておらず、モノリスがwebアプリ開発のど真ん中に鎮座していた2010年代前半にも、上記で紹介したサービスの多くは存在していませんでした。
いくらRuby on Railsも進化しているとはいえ、これだけ状況が変わってしまえば、開発のメインストリームから外れてしまうのは仕方のないことだと感じます。
また余談ですが、Rubyの認証ライブラリで1番人気があるDeviseを使っている人は、全員つらそうな顔をしています。
その他
- コンポーネント単位で分割することで保守性や再利用性が高くなったり、デザイナーとの協業がしやすくなる
- TypeScriptとVSCodeの連携がすごい
などなど他にもSPAのメリットは色々とありそうですが、これらはどちらかというと副産物に近く、SPAが台頭したメインの理由では無いと考えています。
モノリスは用済みになったのか
全くそんなことは無いと考えています。
以下の条件を満たすアプリケーション開発では、今でもモノリスがファーストチョイスです。
**「モノリスでも問題ない」ではなく、「モノリスの方が圧倒的に良い」**です。
- webだけで良い
- 関わる開発者が少ない
- UXの要件がそれほど厳しくない
具体的な場面としては
- 多くのwebアプリののプロトタイプ
- リリース後の修正が少ないと予想されるシステム
- 機能要件が指定された受託開発など
- 「この機能を削ればこの予算で実現できます」など仕様をモノリスに寄せることで双方が得をする場面は必ず存在する
- 小~中規模のwebアプリの一部
- 必要な要件や、想定されるユーザー数などから技術選定。モノリスの方が効率良く開発できるサービスは、今後もそこそこの割合で残り続けるはず。
などが考えられます。
モノリスの最大の弱点とされる密結合は、必ずしも悪ではないのです。
分割は短期的な生産性を下げます。
密結合は短期的な生産性を上げます。
この点を考慮して技術選定をするべきです。
結論
特定の制約の上で、モノリスはもの凄い力を発揮します。