挨拶
初めまして!実験班の班長です。
Physics Lab. の班紹介の最後を務めさせていただきます。
実験班とは
東京大学理学部物理学科の学部生が参加するPhysics Lab. では毎年五月祭でポスター発表や講演などをしていますが、その中のメインイベントといえばやはり演示実験かと思います。年によっていろいろな実験をしていて、コッククロフト・ウォルトン型加速器やレーザー冷却など様々な実験がされてきました。
物理学科の学生が五月祭で実験をするというのは実はかなり昔から行われています。「物理の道しるべ」という本でたまたま見つけたのですが、1965年に東京大学を卒業された藤川和男先生は3年生と4年生の時の五月祭でメスバウアー効果の実験とチューリング計算機の模擬運転をされたそうです。また、1976年に東京大学を卒業された宮下精二先生は確率過程の問題の計算機シミュレーションをされたそうです。
ちなみにこの「物理の道しるべ」という本は物理学者になられた先生が学部や大学院、助手時代などをどのように過ごしたかなどを書いたのを集めたもので、面白いし、また自分の進路の参考にもなりうるので、おすすめです。
今年はまだ決定したわけではないですが、小さなサイクロトロンを製作したり、超流動の実験をしたりなど様々なアイディアが出ていて、実現を目指して準備を進めています。
実験の楽しさについて
(ここからは私個人の意見になります)
皆さんは物理学実験と聞いてどのようなイメージを持つでしょうか。
これを読んでいる人で、東大の前期課程にいる人もいるかと思います。前期課程でも理系の人は物理学実験の授業をとる人が多いかと思います。
私の個人的な感想ですが、前期の物理実験はそれほど楽しいものではなかったと記憶しています。それは内容も基本的なもので、また、授業内容も与えられた実験課題をこなして考察を書くだけで特に実験を工夫するとかそういうことがなかったからだと思います。
これを読んでいる前期課程の人も現にそのような感想を持っているかもしれません。また、東大の前期課程の学生でなくても、実験というとそれほど面白さを感じられないという人も多いかもしれません。
しかし、私が声を大にしていいたいのは、実験というのは本来はもっと楽しいものだということです。私もまだ研究をしているわけではない、ただの学部三年生なので、実験研究の楽しさを知っているわけではありません。
ただ、今年の夏休みにKEK(高エネルギー加速器研究機構)の主催している「サマーチャレンジ」に参加したり、物理学科3年Aセメスターに行われる「物理学ゼミナール」の授業で素粒子実験に関連する論文の輪読をしたりするなかで、実験というのは自分で主体的に考えて行えば非常に楽しいということを感じました。
「サマーチャレンジ」では比例計数管を自作して宇宙線の角度分布を調べるという実験をしました。この実験自体は「あるある」の実験で原理を自分で考え出す必要があるわけでわないですが、実際にどのようなセッティングで実験を行えばよいか、どうすればノイズを減らせるか、どうすれば今ある実験装置でもっと面白い実験ができるかなどを考えて実験するのはとても楽しいと感じました。
「物理学ゼミナール」での素粒子実験に関連する論文の輪読では、よくこんな実験を思いつくなーと思うような、工夫された実験をたくさん知り、自分で新しい実験を考えて実験できればとても楽しいだろうなということを感じました。
この2つの経験で感じたことは、実験というのは自分の頭でいろいろと考えて行って初めて本当の楽しさを感じられるものだということです。逆に言えば、例えば東大の前期の実験で私が楽しさを感じられなかったのも当然だということです。実験は手順書を見てやっただけですし、どうやったらもっとよい他の実験ができるかなどを考えたわけでもなかったのですから。
ですから、皆さんが学生実験などで実験を面白く感じることができなくても、自分の頭で考えて実験をすればもっと楽しいかもしれません。その楽しさに気づく人がもっと多くなればと思います。
結びに
今年の五月祭の内容は現時点ではまだ固まっていないことも多いですが、きっと一般の方から高校生、大学生まで、皆さんが楽しめる内容になると思います。
内容が決まり次第Xなどで広報を行うと思いますので、チェックして、五月祭に来られた際にはぜひPhysics Lab. を、そして実験を楽しんでください!