1.背景
仕事のねた(本当は副業...)を探して、ブロックチェーンのマイニングに辿り着きました。
ブロックチェーンのマイニング処理は大量の電力を消費するそうです。それに対して、電力会社がマイニング事業者向けに安価な電力を提供しているだけでなく、電力会社自身がマイニング事業に参入しているケースもあり、非常に驚いてしまいました。
電力業界にてブロックチェーンが盛り上がっているのは、2016年度の電力小売り自由化に伴い、間に業者を挟まずに取引できるからだけではなかったのですね。今回は、ビジネス動向を中心に、状況を整理してみます。
2.ブロックチェーンのマイニングとは
恥ずかしながら、そもそもブロックチェーンのマイニングが何であるか、知らなかったです...
ブロックチェーンのマイニングとは、ビットコインの取引が正常に行われたことを承認する作業のことです。マイニングを行う人を「マイナー」と呼び、ビットコインの取引が正常に行われたことを検証し、証明することによってマイナーは報酬としてビットコインを得る仕組みになります。
#3.マイニングで使用する消費電力・電気代
では、マイニングに使われる年間消費電力がどのくらいかと言うと、モルガン・スタンレーのアナリストは、世界の需要の約0.6%に相当する最大140テラワット時に達する可能性があるとレポートされています。
Miners of bitcoin and other cryptocurrencies could require up to 140 terawatt-hours of electricity in 2018, about 0.6 percent of the global total
カナダで仮想通貨のマネジメントやリサーチを行うNode BlockchainのSaad Imran氏は、世界の需要の約0.12%に相当するとレポートされています。IT企業が活用するデータセンターは世界の需要の約2%相当になり、マイニングに使われる電力の133倍である。なんで、マイニングが悪者にされているか分からないとも主張されています。
日本の平均的な家庭で1ヶ月間、24時間で休まず回し続けた場合の目安です。1台では勝負になりません。3台、4台で10万円を超えます。また、マシンの冷却費用も必要になります。
ハイスペックマシン(ASICminer 8 Nano 2100ワット 40Th/s)1台の場合、関西:約35000円、北陸:約31500円、北海道:約41184円
平均的なマシン(Antminer S9i 1320ワット 13.5Th/s)1台の場合、関西:約21000円、北陸:19000円、北海道:約24710円
「 マイニングに必要な電気代 」全国の電力価格と仮想通貨マイニング
4.マイニングにて大量の電力を消費してしまうことに対する動向
- 電力会社がマイニング事業者向けに安価な電力を提供
・仮想通貨のマイニング事業者に向けた新たな電力料金体系の提供を許可
ニューヨーク州の規制当局が許可したというニュースです。下記から新しいビジネスを誘致したいことが理由であると読み解きました。
New York State Department of Public Service Chair John Rhodes said in a statement Thursday. “However, given the abundance of low-cost electricity in Upstate New York, there is an opportunity to serve the needs of existing customers and to encourage economic development in the region.”
New York to Crypto Miners: Looking for Cheap Power? Let's Talk
- 電気代が安い国でマイニングの施設を構築
電気代の安い中国やカナダで、マイニングの施設を構築するケースが多いみたいです。(一概には言えないのですが、中国/カナダと比較すると日本の電気代は約3倍になります。)
2018年7月、カナダのケベック州のエネルギー規制機関であるRégie de l’énergieが電力事業者のHydro-Qufebecに対し、仮想通貨のマイニング事業者が2倍の電気代を払うことを承認したというニュースがありました。ただ中身を確認すると、電気代が2倍になっても一般住民に課せられる電気代と同率です。しかも、新しい電気代の適用は2018年6月6日以降に契約した案件のみで、それ以前のものについては適用外です。
マイニング天国カナダ・ケベック州でマイニング事業への電気代値上がり
Hydro-Québec allowed to charge cryptocurrency miners increased rates
- マイニング事業に参入
国内のインターネットインフラTOPにあたるGMOインターネットグループと、WEBコンテンツの大手DMMがそれぞれ仮想通貨マイニングへの参入を発表しました。GMOは北欧に、DMMは金沢市にマイニング工場を開設した。金沢市のマイニング工場は日々見学者で溢れており、金沢の新しい名所になりつつあるとのことです。(自分も見学してみたい...)
また、ベンチャー企業のアルトデザインも、仮想通貨マイニングへの参入を発表しました。もともとカーテンなどに使うレース工場を改築し、福井市にマイニング工場を開設した。
仮想通貨マイニング市場にGMO、DMM参入。仮想通貨の発掘から売買までを一挙に手懸ける!
仮想通貨の「マイニング」巨大工場が日本にも。
- (電力会社が)マイニング事業に参入
一番驚いたのはこのニュースなのですが、ここに至るまでに少し寄り道してしまいました。下記が事業内容になり、電気を提供するだけでなくマイニング環境とクラウドマイニングを提供されています。
■業界最安水準の安定した電気の提供
■最適なマイニング環境の提供
■クラウドマイニングの提供
また、太陽光などで発電したものの貯めておけない電力をマイニングに活用されています。余剰電力をマイニングへと振り向けることで、余剰電力のムダを省くことを目指されています。電力会社だからこそ実現できるサービスであり、ここに電力会社がマイニング事業に参入する意味があるのではないでしょうか。
熊本電力がマイニング事業へ参入!仮想通貨採掘事業を行い電気代の業界最安値の1kwhあたり10円台を目指す
- よく分からないけど面白い
50cycles社は2003年に設立され、英国に本拠をおき、「先進的な電動自転車」のスペシャリストとして名を誇っているそうです。意味不明なのですが、漕ぎながらマイニングできるという電気自転車を発表されています。他の方も主張されていますが、ジムの自転車をこれにすれば良いのではと考えてしまいました。
イギリス企業が仮想通貨マイニングのできる電動自転車を発表
日本に輸入できるかどうかは分かませんが、1ポンド150円x2000£≒30万円位します。
50cycles.com
5.マイニングにて電力を消費を少なくすることに対する動向
- 性能の良い専用機器を開発
「No.1を目指す」--GMO、自社開発チップを搭載したマイニングマシンの販売を開始
マイニング自体は、技術革新により性能が年々向上しています。初期はCPUで行われていましたが、並列計算に強いGPU(Graphics Processing Unit)が次第に使われるようになりました。GPUはグラフィックスの処理をするために作成されたものですが、同じ計算を並列して行うマイニングにも適しているため使用されていました。
現在はASICが主流になっています。
ASIC(エーシック)とは Application Specific Integrated Circuit の略で特定用途向け集積回路を指します。電子部品の種別の1つで、特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称です。マイニングには専用ASICを束ねたマシンまでも投入されており、一般に使われているPCやGPUでは、電気代さえ回収できないというのが現状です。個人では厳しそうですね。
#6.おわりに
今更ですが、電力会社のパワーバランスが変わる予感がしました。電力自由化への対応はどこも実施されているので、もしかしたらブロックチェーンのマイニングがキーになるかもしれません。