UVEPROM って?
UVEPROMというROMをご存じですか? パッケージに丸い窓が開いていてその中にはシリコンダイが見えています。
特定の波長 (264nm位) の紫外線を十数分間 照射することで ROM の内容を消去 ( 'H' で満たす) ことができるというもので、データを書き込む (=プログラムする) 時は、高電圧 (Vpp=21Vとか12.5Vとか, Vcc=6Vとか) をかけて書き込みます。上の写真は、2764という型番の 1984 年製造の富士通製 UVEPROM です。27に続く数字が容量を表していて、64kbit = 8KB ですね。末尾の-25 はアクセスタイム (=スピード) が250nsであることを表しています。
現在は、電気的に消去できるメモリ (フラッシュメモリとかEEPROMなど) が主流となっているしマイコンに内蔵されてしまっているので、単独でUVEPROMを使わないですが 8bit CPU 全盛時代によく使われていました。
製造から 40年経過していますが、この UVEPROM にデータを書き込んだり、消去したりしてみます。書き込むためには ROMライター、消去には ROMイレーサーという装置を使うのですが、流通はほぼ中古品ばかりでしょうね。Qiitaには「ないものは自分で作る」精神の方も多いので、装置の自作記事もあると思いますが、私の場合は手持ちの何かで書き込み・消去をやってみます。
なお、この記事に出てくる製品に関して、アフィリエイトプログラムなどは一切利用していませんし、なんらかのプロモーションも含まれていません。(笑)
書き込み
XGecu T48 Programmer (TL866-3G) を買っちゃいました
この記事を書いている理由の6割位は、書き込み装置を買っちゃったから、なんですが...。
ROMだけのライターであれば数千円で売られていますが、UVEPROM だけでなく、GALやマイコンの書き込みもやるかも、と思ったのでいろいろなICに対応している XGecu の T48 Programmer を買いました。1.2万円くらいです。日本語の電子工作系webサイトには TL866 II Plus の紹介記事が多いですが、その後継品がこの T48 (TL366-3G) になります。3Gとは第三世代ということの様です。前のが 'II' でしたしね。
Windows10 のPCと USBで接続します。下記webサイトに書き込み用ソフト (Xgpro) やドライバがあるので、予めインストールします。
下の写真のように、40pin の ZIFソケットが付いているので、書き込みたい IC を位置を合わせて挿入、固定します。
書き込み用ソフト (Xgpro) を起動します。下の画面にもあるように対応しているICの数は非常に多いです。対応表は、上記の製造会社の Web サイトにて公開されています。
- TTL74系のロジックICの論理チェック機能があります。全品番は対応していませんが、主要なものは対応しています。
- Lattice製GALもATMEL製GALも対応ありのようです。まだ試していませんが。
- CMOS SRAM (6264, 62256, 628128など) の書き込み読み出し動作チェック機能があります。アクセスタイムのチェックはしてないと思います。
- Microchip の PIC12, PIC16, PIC18, PIC24、の一部に対応してます。PIC32 系は非対応です。
- ATMELの 328PU なども対応していますね。
- なぜか Intel 8255 (PPI) の動作チェック機能もありました。ただ、真理値表はとても小さいものだったので、大したチェックはしていなさそうです。
書き込むデータ (8KB) を用意しました。バイナリデータか Intel HEX形式に対応していました。これで、メニューバーの (PROG.) ボタンを押せば書き込んでくれます。所要時間は1秒未満です。書き込み値の比較チェック (Verify) もできます。
MBM2764 は Vpp が 12.5V になっていると書き込みで失敗します。21V に設定するのが正解です。前製品であるTL866 II Plus は Vpp を 21Vまで上げられないので、Vpp=21V版 の 2764 の書き込みはできないことになります。
消去
UVEPROM のデータ消去は特定の波長 (264nm位) の紫外線を十数分間 照射すること、でした。これはブラックライト (UV-B) よりも波長が短いです。
- UV-A (400nm~315nm)
- UV-B (315nm~280nm)
- UV-C (280nm~200nm)
UV-C の中でもいわゆる殺菌灯が出す波長のものが UVEPROM の消去に向いています。ですが、UV-C は基本的に自然界 (地上) には存在しないはずのものなので、裸眼で見たりしないようにしてください。水晶体や網膜とかだめになるかもしれません。(歳取ってからますます目が見えなくなるとはんだ付けもさらに辛く...。)
PHONESOAP が使えるか
COVID-19 関連で殺菌用 UV を発する装置が、除菌・殺菌を謳っていろいろと販売されましたね。そのうちのひとつで、スマホを除菌する装置ということで PHONESOAP というデバイスが発売されていました。いまもされてるようなので、製品内容は下記サイトをご覧ください。
下の写真は白く発光していますが写真撮影用だと思われます。実物はもっと青っぽい光ですし、ふたを開けたら自動的に消灯します。健康保護のためですね。
私は、収集していた古切手に生えたカビを除去できないか?と思って買ったのですが、効果がわかるのは数十年後ですかね。
この装置は UVEPROM の消去にも使えるかもしれませんので、検証してみました。
スマホサイズの領域に ROM をポツンと置きます。蓋を閉めれば 約10分間 照射してくれます。
10分間照射後
ほとんどの bit が 'H' に消去されていましたが、数ビット消しきれずに残っていました。残念。追加でもう1回やってみます。
追加で10分間照射後
ちゃんと全ビットが消去されていました。
総括
- 40年前の UVEPROM でも書き込み・消去ができた。
- PHONESOAP を二回かければ (所要時間 約20分) 全データが消えることを確認した。
- PHONESOAP からもちゃんと殺菌光線がでていることもついでに確認できました。
繰り返しになりますが、この記事に出てくる製品に関して、アフィリエイトプログラムなどは一切利用していませんし、なんらかのプロモーションも含まれていません。(笑)