Alibaba CloudとMicrosoft Azureの動画配信に関するメディアサービスについて比較してみます。
動画配信とは
動画配信や視聴する際に知っておきたい、配信方法の説明をします。
動画配信には大まかに2パターンあります。
1.Video On Demand(VoD)
いつでも、どこでも、好きなドラマや映画などを視聴する事が出来ます。
主にストレージに保存されているコンテンツを配信しています。
2.ライブ配信
生中継で動画を配信しています。
動画配信方式としては、
1.ストリーミング/ライブストリーミング
コンテンツはデバイスに保存されず、転送された時点で再生される配信方式です。
プログレッシブダウンロードよりは、コンテンツのコピーはされにくいです。
2.プログレッシブダウンロード
サーバーからコンテンツをデバイスにダウンロードして、動画を再生する配信方式です。
ストリーミングより、コンテンツがコピーされやすいです。
が挙げられます。
VoDでプログレッシブダウンロード方式での動画配信は、比較的環境を構築しやすいと思われます。
Alibaba Cloud Media Processing Servicesとマルチメディアソリューション
Media Processing Servicesはマルチメディアデータを最適な形式にトランスコーディングするサービスです。
主な機能は以下のものが挙げられます。
- ビデオトランスコーディング
- スクリーンショット
- ウォーターマーク
- ビデオの編集と結合
- 音声と動画の分離
- ビデオから GIF への変換
- プリセットテンプレート
- スマートテンプレート
- カスタムテンプレート
この中(テンプレートを除く)でVODでよく利用されるのは、ビデオトランスコーディングとスクリーンショットです。
Alibaba Cloud マルチメディアソリューションとして、以下3つのソリューションをAlibaba Cloudの他のサービスと組み合わせることで実現可能です。
1.ビデオ監視
クラウドベースのビデオ監視ソリューションです。
高品質、信頼性、セキュリティ、低コストなソリューションとして提供されています。
2.Video On Demand
ビデオの即時ダウンロードと視聴を可能にするサービスです。
このソリューションは、ビデオアップロード、ビデオブロードキャスト、システム管理の3つのモジュールに分かれています。
・ビデオアップロードモジュール
セグメントインデックスはRDSへ、ビデオファイルはOSSへ格納されます。
OSSは、メディアトランスコードとCDNと連携して配信機能を提供します。
・ビデオブロードキャストモジュール
リアルタイム配信用に、Server Load BalancerやECS(Webサーバー用)を利用してアクセス要求の処理を実行したりビデオインデックスの検索を行い、必要なビデオデータを取得します。
・システム管理モジュール
ユーザ情報や、デバイスなど様々な情報を管理しています。
3.ライブビデオ放送(ライブストリーミング)
高いネットワーク品質、低いレイテンシ、ストリーミングデータのスムーズなトランスコードを備えたシステムです。
ライブストリーミングサービスは、プッシュストリーム、ブロードキャスティング、システム管理の3つのモジュールでライブストリーミングのプラットフォームを構築します。
・プッシュストリームモジュール
Server Load BalancerとECSを利用して、プッシュされたビデオストリームをセグメント化するクラスタを構築し、OSSに格納されます。(OSSに格納されるので、後でVODに利用することも出来ると思われます。)
・ブロードキャスティングモジュール
ECS、Server Load Balancer、CDNを利用してシステムを構築します。
リアルタイムビデオセグメントがHLSフォーマットに変換され、CDNにプッシュされる仕組みです。
・システム管理モジュール
ユーザー情報管理、デバイス管理、ユーザー確認などのシステム管理を担当します。
Azure Media Services
Azure Media Servicesは最近V3がプレビュー版として発表されました。
今回はプレビュー版のV3ではなく、現在一般公開されているものを中心に説明します。
Azure Media Servicesは、大まかに5つの機能に分けられます。
1.エンコーディング
複数の形式にエンコードでき、サムネイルなども生成することが出来ます。
また、ISO及びCDSA認定済みのため安全性に優れています。
2.Azure Media Player
ブラウザやデバイスに適した環境で動画を再生出来るPlayerです。
HTML5 (MSE/EME)、Adobe Flash Player、Microsoft Silverlightのうち、適切なものが選択されます。
見た目などをカスタマイズすることも可能です。
3.Live and On-demand Streaming
ライブ配信とオンデマンド配信です。
CDNと組み合わせて、様々な規模の配信に対応しています。
また、HLS、MPEG-DASH、Smooth Streaming の Just-in-Time 方式のパッケージ化や、Just-In-Time AES 暗号化と PlayReady DRMに対応しており著作物を守ります。
4.Media Analytics
ほとんどの機能がプレビュー版です。
一般リリースされているものは、Media Indexerという機能です。
字幕の自動生成や、Microsoft Researchのディープニューラネットワーク(DNN)の音声認証技術を利用したメタデータの抽出などが出来ます。
プレビュー版の機能は、ビデオコンテンツ内の文字認識や顔認識など、今まで画像が対象だった機能が動画にも応用され始めました。
5.Content Protection(コンテンツの保護)
DRMライセンス配信(Microsoft PlayReady、Widevine、FairPlay Streaming) を利用できます。
さらに、VODとライブ配信の両方で即時暗号化も利用できます。
クラウド上での動画配信の基本構成(サービス)
クラウド上での動画配信の基本構成について説明します。
構成についてはAlibaba Cloudのサイトが分かりやすいので、参考にしてください。
VoD: https://www.alibabacloud.com/solutions/multimedia/online-video
ライブ配信: https://www.alibabacloud.com/solutions/multimedia/live-streaming
Alibaba CloudもAzureもVODやライブ配信で利用するサービスは、
1.エンコーディング/配信機能などの基本機能(Media Processing Services/MediaServices)
2.ストレージ
動画ファイルなどのコンテンツの保存先
3.CDN
4.データベース
動画情報の保存など
5.サーバー
6.ロードバランサ
です。
仕様にもよりますが1,2,3のサービスで動画配信を簡単に開始することができます。
まとめ
Alibaba Cloudの動画配信サービスは、Azureと比較するとまだ基本的な部分のみの機能となっています。
AzureはAIサービス(Cognitive Services)も機能として組み込まれ始め、今後様々な用途で動画配信が利用されていくと思われます。
さらに、動画配信において著作権の保護などは重要事項なため暗号化でセキュリティ保護も大事なポイントです。
今までは動画配信をすることは金額や技術面でハードルが高いものでしたが、クラウドサービスを利用することで、今までよりは手軽に試すことが可能となりました。
これからは動画とAIがコラボしたコンテンツが増えることが予想されます。
参考サイト
https://jp.alibabacloud.com/product/mts#overview
https://jp.alibabacloud.com/solutions/multimedia
https://www.alibabacloud.com/solutions/multimedia/live-streaming
https://www.alibabacloud.com/solutions/multimedia/online-video
https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/media-services/
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/media-services/previous/media-services-overview
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/media-services/previous/media-services-portal-vod-get-started