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ChatGPTに「どこでもドア」の特許を書いてもらい、ChatGPTに審査させてみた。

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GPT-4ベースのChatGPTを使ってみたところ、想像以上のクオリティだったので、特許提案や特許審査に使えないか試してみました。

題材として、有名な「どこでもドア」の特許を考える、というシナリオを想定してみます。

以下のような流れで試していきます。

  1. ChatGPTに請求項を書かせる
  2. ChatGPTに特許審査させる(拒絶理由通知書を書かせる)
  3. ChatGPTに拒絶に対して反論させる
  4. 反論を踏まえて、ChatGPTに最終判断させる

また、おまけとして、ChatGPTに特許提案および特許審査へのChatGPTの応用可能性について聞いてみました。

末尾に私の考察を載せています。

結論として、ChatGPTは特許提案時のバリエーションの補完や、特許審査時のドラフト作成に非常に強力なツールになりうると感じました。

なお、今回はChatGPT Plus(有料)で利用可能になるGPT-4ベースのChatGPTを用いました。無料で利用可能なGPT-3.5では、ここまでの回答を引き出すことはできませんでした。ChatGPT Plusの利用を迷っている方の判断材料になればと思います。

ChatGPTとのやりとり

実際のChatGPTとのやり取りを以下に示します。

※2023/3/31時点のChatGPT(GPT-4ベース)を使用
※ChatGPTの出力が途中で切れた場合、「続けて」と入力して続きを出力させる。以下の記載ではこのやり取りは省略。

「どこでもドア」の請求項

プロンプト

日本において「どこでもドア」の特許を出願したいと考えています。特許明細書の請求項を作成してください。

ChatGPT

【請求項1】
どこでもドア装置であって、以下の機能を有することを特徴とするどこでもドア装置:
(a) 入力された目的地情報を受け取る受信手段;
(b) 前記目的地情報に基づいて、現在地から目的地までの空間座標情報を算出する計算手段;
(c) 前記空間座標情報に従って、現在地と目的地間の空間的な結びつきを形成する空間接続手段;
(d) 前記空間接続手段によって形成された結びつきを利用して、使用者が現在地から目的地への移動を可能にする移動手段。

【請求項2】
前記空間接続手段が、量子テレポーテーション技術を用いることを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項3】
前記空間接続手段が、ワームホール技術を用いることを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項4】
前記移動手段が、使用者がドア状の開口部を通過することにより、現在地から目的地への移動を可能にすることを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項5】
前記目的地情報が、GPS座標、住所情報、地名、またはランドマーク等の情報のいずれかまたはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項6】
前記受信手段が、音声認識システム、タッチパネル、キーボード入力、またはこれらの組み合わせを含む入力装置を用いることを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項7】
前記どこでもドア装置が、現在地と目的地間の空間的な結びつきを形成する際に、エネルギー効率を最適化するための制御手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項8】
前記どこでもドア装置が、使用者に対して目的地への移動が安全であることを確認するための安全確認手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項9】
前記安全確認手段が、目的地周辺の状況をリアルタイムでモニタリングするカメラシステム、温度センサー、湿度センサー、気圧センサー、またはこれらの組み合わせを含むセンサーシステムを用いることを特徴とする請求項8に記載のどこでもドア装置。

【請求項10】
前記どこでもドア装置が、移動の開始前に使用者に対して目的地への到着予定時刻を提示する時刻提示手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項11】
前記時刻提示手段が、音声案内、ディスプレイ表示、またはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項10に記載のどこでもドア装置。

【請求項12】
前記どこでもドア装置が、現在地と目的地間の空間的な結びつきを形成する際に、使用者のプライバシー保護のために、移動経路を暗号化する暗号化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項13】
前記どこでもドア装置が、移動後の目的地で使用者がすぐに周囲の状況に適応できるように、目的地の環境情報を提供する環境情報提供手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこ>でもドア装置。

【請求項14】
前記環境情報提供手段が、音声案内、ディスプレイ表示、触覚フィードバック、またはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項13に記載のどこでもドア装置。

【請求項15】
前記どこでもドア装置が、移動中の使用者に対して、目的地までの経過時間や残り時間を提供する経過時間表示手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項16】
前記経過時間表示手段が、音声案内、ディスプレイ表示、触覚フィードバック、またはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項15に記載のどこでもドア装置。

【請求項17】
前記どこでもドア装置が、使用者が複数の目的地を設定できるように、経路最適化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項18】
前記経路最適化手段が、所定の条件に基づいて最適な経路を自動的に算出することを特徴とする請求項17に記載のどこでもドア装置。

【請求項19】
前記所定の条件が、移動距離、移動時間、エネルギー消費量、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項18に記載のどこでもドア装置。

【請求項20】
前記どこでもドア装置が、使用者が移動する目的地をお気に入りとして登録・管理できるお気に入り登録管理手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項21】
前記お気に入り登録管理手段が、使用者の移動履歴を記録・管理し、使用者が過去に訪れた目的地を容易に選択できるようにすることを特徴とする請求項20に記載のどこでもドア装置。

【請求項22】
前記どこでもドア装置が、使用者が移動を一時停止し、中断した位置から再開できるように、移動一時停止再開手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項23】
前記どこでもドア装置が、使用者に対してエネルギー消費量や環境への影響を提示する環境影響提示手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項24】
前記環境影響提示手段が、音声案内、ディスプレイ表示、触覚フィードバック、またはこれらの組み合わせを用いることを特徴とする請求項23に記載のどこでもドア装置。

【請求項25】
前記どこでもドア装置が、異なる使用者が同時に複数の目的地へ移動できるように、複数使用者対応手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項26】
前記複数使用者対応手段が、それぞれの使用者が個別に目的地情報を入力できる入力装置や、それぞれの使用者が個別に移動経路を確認・管理できる表示装置を有することを特徴とする請求項25に記載のどこでもドア装置。

【請求項27】
前記どこでもドア装置が、使用者が移動時に所持品を安全に輸送できるように、所持品輸送手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項28】
前記所持品輸送手段が、使用者が移動する際に所持品を収納できるスペース、容器、またはこれらの組み合わせを提供することを特徴とする請求項27に記載のどこでもドア装置。

【請求項29】
前記どこでもドア装置が、使用者が緊急時に移動を中止し、安全な場所へ避難できるように、緊急避難手段を有することを特徴とする請求項1に記載のどこでもドア装置。

【請求項30】
前記緊急避難手段が、緊急時に使用者が押すことができる緊急停止ボタン、緊急避難先情報を登録・管理する手段、またはこれらの組み合わせを有することを特徴とする請求項29に記載のどこでもドア装置。

以上が、日本において「どこでもドア」の特許を出願するための特許明細書の請求項の例です。実際の出願に際しては、専門家による確認・修正が必要です。

拒絶理由通知書

プロンプト

あなたは特許審査官です。上記の特許が出願されたとして、登録か、拒絶かを判定してください。拒絶の場合は拒絶理由通知書の文面も作成してください。

ChatGPT

私はAIであり、実際の特許審査官ではありませんが、仮想的な状況として解答します。

特許明細書を検討した結果、現時点では拒絶と判断しました。拒絶理由通知書の文面は以下の通りです。

拒絶理由通知書

出願番号: [出願番号]
出願日: [出願日]
発明の名称: どこでもドア装置

審査官: [審査官名]

拒絶理由:

発明の新規性及び進歩性の欠如
本出願に係る発明は、量子テレポーテーション技術やワームホール技術等を用いて、現在地と目的地間の空間的な結びつきを形成することを特徴としていますが、これらの技術は現時点では理論的なものであり、実用化された技術ではありません。従って、本出願に係る発明は実用新案登録の要件である新規性及び進歩性を満たしていないと判断されます。

発明の実施可能性の欠如
前記理由により、本出願に係る発明は現状の技術水準を考慮した場合、その実施が困難であると判断されます。従って、発明の実施可能性が認められず、特許法第29条第1項の要件を満たしていないと判断されます。

以上の理由により、本出願に係る特許を拒絶します。

特許出願人は、本拒絶理由通知書の送達日から3か月以内に、審査請求を行うことができます。審査請求が行われない場合、本出願は取り下げられたものとみなされます。

敬具
[審査官名]
特許審査官

ただし、上記の拒絶理由通知書は、あくまで仮想的な状況に基づくものであり、実際の特許審査官の判断とは異なる場合があります。実際の特許出願に際しては、専門家に相談することをお勧めします。

拒絶に対する反論の意見書

プロンプト

あなたは上記拒絶理由通知書を受け取った特許出願者です。上記の拒絶理由に対して反論する意見書の文面を作成してください。

ChatGPT

意見書

特許庁 審査第◯部
[審査官名] 殿

出願番号: [出願番号]
出願日: [出願日]
発明の名称: どこでもドア装置

拒絶理由通知書への意見:

審査官殿、

拒絶理由通知書を受け取り、拒絶理由に関して以下の点を反論させていただきます。

発明の新規性及び進歩性の欠如に関する反論
本出願に係る発明は、確かに量子テレポーテーション技術やワームホール技術等に基づいていますが、これらの技術が現時点で完全に実用化されていないことは認めます。しかしながら、本発明は先端技術の発展を見越した、将来的な実用化を目指すものであり、出願時点においては新規性及び進歩性を有すると考えます。

発明の実施可能性の欠如に関する反論
本発明が現時点では実施困難であるとの判断に対しては、以下の点を指摘させていただきます。まず、本発明は現状の技術水準を基に、これらの技術の発展を見越した概念的な発明であり、将来的な実施可能性を視野に入れて提案しています。さらに、拒絶理由通知書において指摘された実施困難な技術について、研究が進められており、今後の技術革新により実用化が見込まれると考えられます。従って、発明の実施可能性の欠如を理由に拒絶することは適切ではないと考えます。

以上の理由により、拒絶理由通知書に記載された理由に対して反論させていただきました。再度、本発明の審査をお願い申し上げます。

敬具

[出願者名]
特許出願者

ただし、上記の意見書はあくまで仮想的な状況に基づくものであり、実際の特許出願に際しては、専門家に相談することをお勧めします。

最終判断

プロンプト

あなたは上記の意見書を受け取った特許審査官です。意見書を踏まえ、特許の登録可否について最終判断を行ってください。拒絶の場合は、意見書を踏まえた上で、拒絶の理由を明確にしてください。

ChatGPT

私はAIであり、実際の特許審査官ではありませんが、仮想的な状況として解答します。

意見書を受け取り検討した結果、現時点では特許の登録は認められないと判断しました。拒絶理由は以下の通りです。

拒絶理由通知書(再)

出願番号: [出願番号]
出願日: [出願日]
発明の名称: どこでもドア装置

審査官: [審査官名]

拒絶理由:

発明の新規性及び進歩性に関する再検討
意見書において、本発明が先端技術の発展を見越した、将来的な実用化を目指すものであると述べられています。しかしながら、特許法上、新規性及び進歩性は出願時点で存在するものでなければならず、現時点での新規性及び進歩性が不十分であると判断されます。

発明の実施可能性に関する再検討
意見書において、本発明が現状の技術水準を基に、これらの技術の発展を見越した概念的な発明であると主張されています。しかし、特許法上、実施可能性は出願時点で存在するものでなければならず、現時点での実施可能性が不十分であると判断されます。

以上の理由により、本出願に係る特許を拒絶します。

特許出願人は、本拒絶理由通知書の送達日から3か月以内に、審査請求を行うことができます。審査請求が行われない場合、本出願は取り下げられたものとみなされます。

敬具
[審査官名]
特許審査官

ただし、上記の拒絶理由通知書は、あくまで仮想的な状況に基づくものであり、実際の特許審査官の判断とは異なる場合があります。実際の特許出願に際しては、専門家に相談することをお勧めします。

特許提案および特許審査へのChatGPTの応用可能性

プロンプト

以上のやり取りを踏まえて、特許提案および特許審査へのChatGPTの応用可能性について教えて下さい。

ChatGPT

ChatGPTは、特許提案および特許審査において、ある程度の応用が可能です。以下に、それぞれの分野での応用可能性について説明します。

  1. 特許提案:
    ChatGPTは、発明者が特許明細書を作成する際にアシストすることができます。具体的には、請求項や詳細説明の草案を生成し、発明者がそれを編集・修正することによって、効率的に特許明細書を作成することができます。ただし、ChatGPTは専門家ではないため、最終的な提出前に専門家のチェックが必要です。

  2. 特許審査:
    ChatGPTは、特許審査官のアシスタントとして、特許出願書類の概要を把握し、関連技術や先行技術を調査する際に役立てることができます。また、拒絶理由通知書や意見書の草案を生成することもできます。しかし、ChatGPTの知識は2021年9月までのものであり、最新の法律や技術に関する情報は持っていません。また、AIであるため専門家ではなく、最終的な判断は特許審査官が行うべきです。

ChatGPTを特許提案および特許審査のプロセスに適切に応用することで、効率化や業務の迅速化に寄与することが期待されます。ただし、ChatGPTは専門家ではないため、最終的な判断や提出前の確認は専門家に依頼することが重要です。

考察

以上、結果は「拒絶」となってしまいましたが、非常に興味深いやり取りだったのではないかと思います。以下に私の考察や所感を記します。

  • 請求項について
    30個もの請求項を挙げてくれていますが、肝となる空間接続手段については量子テレポーテーションやワームホールを用いる、ということしか書かれていません。最終的にはこの点が現在の技術では実現不可能ということで拒絶されています。これは妥当な結果かと思います。
    個人的に驚いたのは、目的地のセンサ情報を用いた安全確認手段や、複数移動者対応手段、エネルギー最適化、環境負荷提示など、たしかにあったら便利と思わせるような付属機能が多く提示されている点です。
    実際に何らかの特許を書くときは、競合他社に請求項を回避されないよう、多くのバリエーションを想定しておく必要があります。この作業には労力がかかり、かつ、発明者の専門性や関心分野に思考が偏りがちです。ChatGPTはあくまで学習したコーパスから抽出したパターンを提示している過ぎず、全く新しいものを発想しているわけではありませんが、個人のバイアスにとらわれない俯瞰的なバリエーションの提示には非常に有用かと感じます。

  • 特許審査について
    ChatGPTが作成した請求項は表面上非常に良くできていますが、肝となる技術である「量子テレポーテーション」や「ワームホール」が現在の技術水準で実現不可能であることを的確に指摘できている点は驚きです。これは、現時点のGPT-4を学習したコーパスの中に、それらの技術がまだ実現不可能であることを説明した文章が多かったためと考えられます。
    しかし、実際に技術革新が進み、「量子テレポーテーション」が実現可能になったときにChatGPTがどのように振る舞うかは未知数です。おそらく、ベースとなるGPTモデルは継続的に更新されていくはずですが、更新時の学習コーパスには、「量子テレポーテーションが実現できた」と述べる文章より、「量子テレポーテーションは実現不可能」と述べる過去の文章のほうが圧倒的に多いはずだからです。コーパス内の文章を時間情報などで重み付けするというアイデアも考えられますが、それはセキュリティホールになりかねません。重み付けの法則をハックして、意図的に有害な文章を教え込むことができてしまうからです。中長期的に、OpenAIがどのようにGPTモデルを更新していくかは注目していく必要がありそうです。

  • 拒絶に対する反論について
    残念ながら、「量子テレポーテーション」などが現在の技術水準で実現不可能であるという指摘に対して、あまり論理的な反論になっていません。量子論的な小難しい説明を入れるなど、もう少し凝った回答を期待していましたが、流石に無理筋だったようです。

  • 応用可能性について
    本来この部分は自分で書こうと思っていましたが、せっかくなのでChatGPTに書かせたら申し分のない文面が出力されてしまいました。付け足すとすれば、前述の通り提案時のバリエーション補完に使えそうだ、という点を強調したいと思います。

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