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NTTコムウェアAdvent Calendar 2024

Day 23

スクラムチームのモチベーションを高めるためのアプローチ

Last updated at Posted at 2024-12-22

この記事は NTTコムウェア Advent Calendar 2024 23日目の記事です。

はじめに

NTTコムウェアの東です。
私は普段、スクラムマスターとしてチームの活動をサポートしています。
スクラムチームのモチベーションは、プロジェクトの成功やチーム全体の生産性に大きな影響を与えます。
本記事では、スクラムチームのモチベーションが低下する要因を分析し、それに対する具体的な解決策を紹介します。また、モチベーション理論の進化(モチベーション1.0、2.0、3.0)をもとに、現代のスクラムチームに求められる要素についても解説します。

モチベーション理論の基礎知識

モチベーションとは、個人やチームが特定の目標に向かって行動を起こす際の内的エネルギーのことです。特にアメリカの作家ダニエル・ピンクが提唱する「モチベーション3.0」は、内的動機の重要性を強調しています。この理論では、自己実現や成長、貢献意識が最高のパフォーマンスを生み出すと述べています。

モチベーションの段階

  • モチベーション1.0:生存を目的とする動機
    • 生存本能に基づく基本的な動機。この段階では、生き残ることや基本的なニーズの充足が最優先されます。
  • モチベーション2.0:外発的動機による動機付け
    • 外的報酬に依存する動機付け。給与や昇進などの外部要因がパフォーマンス向上を生む一方で、持続的ではありません。
  • モチベーション3.0:内発的動機による動機付け
    • 自己成長やチャレンジを重視し、メンバーに自律性を与えることで、持続可能なモチベーションを促進します。

モチベーション3.0の構成

  • 自律性:課題解決のために主体的に行動を選択し実行できること
  • 成長(熟達):目標達成に向けた努力の積み重ね
  • 目的:社会やチームへの貢献意識、組織の成長など利他的な動機

モチベーションの低下を招く要因

スクラムチームのモチベーションの低下を招く要因は多くありますが、よくある例としていくつか紹介します。

ステークホルダーとの交流不足

スクラムチームとステークホルダーの接点が不足すると、チームは自身の仕事がどのように貢献しているかを実感しにくくなります。この状況は成果へのフィードバック不足を招き、メンバーの士気を低下させる原因になります。

不明確なスプリントゴール

スプリントゴールが曖昧であったり、自己中心的に設定されると、チームメンバーは目的を見失いがちです。ゴールが不明確であれば、結果として作業効率も悪化します。

過剰なチーム人数

チームの人数が多すぎると、コミュニケーションが難しくなり、個々の役割や貢献が埋もれてしまいます。この状況では、個人の責任が薄れ、メンバー自身が価値を感じにくくなります。

陳腐化した技術の使用

陳腐化した技術や開発言語を使っていると、学びや成長の機会が限られ、メンバーは退屈感や無力感を抱くことになります。モチベーション3.0の観点からも、自己成長や新しい挑戦が不可欠であり、陳腐化した技術に頼ることはこれを妨げます。

モチベーションを高めるための実践的なプラクティス

ステークホルダーに対する定期的なレビュー(デモ会)の実施

スプリント中に成果をステークホルダーに披露する機会を設けることで、チームメンバーは自身の仕事がプロジェクト全体にどのように寄与しているかを実感できます。
レビューは、成果を発表するだけでなく、フィードバックを受けることで次のステップへ進むための具体的な改善点を見つける場でもあります。このようなプロセスは、チーム全体の意識を高め、モチベーション3.0に基づく内的動機を引き出すための重要な要素です。
スプリントレビューとしてこの活動を行うことが望ましいですが、スプリントレビューはスクラムチームの都合で設定されるため、調整が難しい場合もあります。その場合は、スプリントレビューとは別にステークホルダーの都合に合わせて、レビュー日時を設定するとよいでしょう。

スプリントゴールの明確化と意義の付加

スプリントゴールを単なる成果物の達成から、ステークホルダーが望む状態に焦点を当てたものに変えることで、チームの意義を明確にします。
このアプローチによって、メンバーは作業の目的を理解しやすくなり、自分たちの仕事がどのように社会に貢献するかについての理解が深まります。具体的かつ意味のあるゴールを掲げることで、チームのモチベーションが高まり、全体的なパフォーマンスの向上につながります。
ゴールの設定については、チームの状態に応じて、達成確率が50%程度の簡単すぎない内容にすると適切です。そうすることで、ゴール達成に向けてチームの中でさまざまな工夫が生まれます。

チーム人数の最適化

スクラムチームを適正人数(推奨は5〜9人)にすることで、コミュニケーションが円滑になり、各メンバーの貢献が見えやすくなります。少人数であれば、各メンバーの意見やアイデアを十分に尊重し合うことができ、責任感が高まります。このような環境を整えることで、モチベーション3.0の自律性が高まり、チーム全体が一体感を持ちやすくなります。
プロジェクトの規模や性質によりますが、開発者は4名程度が行動しやすいです。(ペアで2チーム)

新しい技術に関する勉強会の開催

新しい技術トレンドや方法論について定期的に勉強会を開催し、メンバーに新しいスキルを学ぶ機会を提供します。新しい技術について学び続けることは、メンバー自身の成長やキャリア開発に直結します。
モチベーション3.0の原則に基づき、このような学びの機会を提供することで、メンバーは自己実現を果たす手段を得られ、日常の仕事への興味が高まります。
また、新しい技術に触れることで、メンバーの視野が広がり、より良いプロダクト開発のためのアイデアが生まれる可能性もあります。

おわりに

モチベーションの低下に対する対策を講じることは、スクラムチームにとって重要な取り組みです。
モチベーションを低下させる要因を理解し、具体的なプラクティスを導入することで、チーム全体のモチベーションを高めましょう。
チームのモチベーション向上により、質の高い成果を生み出し、ステークホルダーやスクラムチームの満足度を高めることが可能です。

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