はじめに
IT エンジニアが顧客と話すとき、最初にぶつかる壁は 「何から聞けばいいか分からない」「技術用語を並べても相手が乗ってこない」 という点です。
実は質問する順番と、聞いた情報を“見える化”するだけで、提案づくりは驚くほどラクになります。
フレームワーク名を覚えるよりも 「①何を聞くか → ②どう整理するか → ③どう数字に落とすか → ④どう資料にするか」 という4ステップに噛み砕いて説明します。顧客との会話のヒントにしてみましょう。
1. なぜ“聞き方”が大事?
- Info-Tech の分析では、プロジェクト失敗の78が「要件不備」に起因すると報告されています。
infotech.com - エンジニアがヒアリング力を高めると変更コストを 1/100 に抑えられるという数字もあります。
relationshift.co.jp
2. ステップ① ― まず何を聞く?
項目 | ねらい | 具体的な聞き方 |
---|---|---|
現状 | 事実を把握 | 「今の処理は平均で何分かかりますか?」 salesforce.com |
困りごと | 痛みを言語化 | 「遅れるとどんなトラブルになりますか?」 salesforce.com |
影響 | 損失を数字で確認 | 「月末報告が遅れると売上にどのくらい 影響しますか?」 salesforce.com |
理想 | ゴールを共有 | 「何分以内に終わるのが理想でしょうか?」 salesforce.com |
優先度 | 早く直す順番 | 「影響が大きい順に並べるとどれですか?」 |
ポイント
-
オープン質問→クローズ質問の順で掘る
(例:「どんな機能が必要ですか?」→「ログイン機能は必須ですか?」) -
相手の言葉を要約して“これで合ってますか?”と確認
二度手間を防げます。
(例:「パスワード変更がわかりにくい」→「ご自身でパスワード変更ができる機能のリンクをログイン画面に追加するのはいかがでしょうか」) -
傾聴
相槌・復唱で「ちゃんと聞いている」安心感を与えると情報が出やすいです。
(例:「知りたい情報になかなかたどり着けない」→「知りたい情報ですね、たどり着けないと」
engineer-hearingskill.com
3. ステップ② ― 聞いた内容を整理する
-
付せんに書き出す
課題・影響・担当者を書いた付せんをホワイトボードに貼りましょう。 -
3列の簡単表
「課題」「発生頻度」「影響(時間 / 金額)」
これだけで優先順位がぱっと見えます。バイヤージャーニーを正式に描くより早く全体像が掴めます。
turbine.co.jp
(バイヤージャーニー:顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの過程) -
顧客と一緒に並べ替える
痛みが大きい順に並び替えると“どこから手を付けるか”が自然に決まります。
4. ステップ③ ― 数字に落とす
- まずは ROI =(効果 − 投資)÷ 投資 を電卓で計算し、「何か月で元が取れるか」だけを書きます。
it-bell.com - たとえば「1回の遅延で残業 10 時間 → 月3回」なら、月 30 時間×人件費を効果として見積もるだけでも十分です。
- 正確さより根拠が分かる概算が大事――細かい数字は後で調整できます。
j-dta.org
5. ステップ④ ― 提案資料を作る
ページ | 中身 | ヒント |
---|---|---|
Before / After | 課題の現状数値と 目標数値を並べる |
「処理時間 60 分 → 15 分」 など太字で強調 |
対策アイデア一覧 | 付せん表を清書し Must(対応必須)、 Should(対応すべき)、 Could(できれば対応) で色分け |
MoSCoW分析(モスクワ分析)を 真似すると優先度が明確 ssaits.jp |
ROI とロードマップ | 回収月と3段階 スケジュール |
PoC → 部門導入 → 全社展開の 3段階が定番 blog.nijibox.jp |
作り込みは3ページで十分です。
技術詳細は付録に回し最初に数字とスケジュールを見せると、経営層は判断しやすくなります。
blog.nijibox.jp
6. 1週間で試せるミニチャレンジ
曜 | やること | 目安時間 |
---|---|---|
月 | 質問5つを紙に書く(上表を参考) | 30 分 |
火 | 顧客1名にヒアリング予約 | 15 分 |
水 | ヒアリング実施 → 付せんで整理 | 60 分 |
木 | ROI をざっくり試算 | 30 分 |
金 | 3ページ資料を作り、上司や同僚にレビュー | 90 分 |
まとめ
- 質問は「現状→困りごと→影響→理想→優先度」の5点だけで十分。
- 付せん+3列表で課題を“見える化”すれば、優先度が自然に決まる。
- ROI を電卓で概算 ⇒ 3ページ資料に落とせば、エンジニアでも説得力ある提案ができる。
今日中に 質問5つを書く→ヒアリングを1件セット――この一歩から始めれば、カタログ頼みの提案から脱却できます。
顧客の意図をくみ取りイメージしやすい資料で説明することで、あなたの提案力が飛躍的に向上します!