サマリ
1994 年7 月5 日にジェフ・ベゾス氏がガレージで開業したオンライン書店 Amazon.com は、30 年で世界最大級のクラウド企業へと発展しました。
2006 年に S3 と EC2 を公開して AWS が誕生し、2024 年には売上高 1,076 億ドルを達成しました。DatacenterDynamics によると前年比 +19 % とのこと!
さらに 2025 年 Q1 だけで 292 億ドルを計上し、市場シェア 29 % を維持しています。Amazon IR
本記事では「 Amazon がクラウドへ舵を切ったのか」を 5 つの「なぜ?」で深掘りし、2025 年以降の AWS 戦略を展望いたします。
1. オンライン書店から始まった Amazon
- 創業時の社名は “Cadabra” で、書籍通販から事業を開始しました。
- ベゾス氏は「地球上で最も顧客中心の企業になる」と宣言し、品ぞろえと配送体験の革新を競争優位の源泉としました。
2. EC 拡大とインフラの壁
- 2000 年代初頭、急成長した EC サイトはシステムがスパゲッティ状態となり、開発速度が低下しました。
- 2002 年の「API マンダテ」により、すべてのチームがサービスを API で公開する方針が徹底され、共通基盤が生まれました。The Bezos API Mandate
- さらに、二枚のピザで足りる小規模チーム “Two-Pizza Team” 文化がイノベーションを加速させます。AWS Executive Insights
3. AWS 誕生:インフラをサービスへ転換
- 2006 年に S3 と EC2 をリリースし、社内インフラを外販するモデルへ舵を切りました。
- 経営陣も「私たちは今やサービス企業だ」と公言するほどに、AWS をコア事業に位置づけました。
4. AWS の成長トラクション
- 2024 年、AWS の売上は 1,076 億ドルに達しました。
- 2025 年 Q1 には売上 292 億ドル、営業利益 115 億ドルを計上しています。
- CRN によると、クラウド市場シェアは AWS 29 %、Microsoft 22 %、Google 12 % です。
- Synergy Research Group は、2025 年 Q1 のクラウド総支出を 940 億ドルと報告し、生成 AI が成長率を +7 pt 押し上げたと分析しています。
5. 5つのなぜ?:Amazon がクラウドへ舵を切ったワケ
No. | WHY | Answer |
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1 | なぜ社外にインフラを提供したのか? | EC のピークトラフィックに備えて確保した余剰リソースを収益化できると判断したため |
2 | なぜ余剰が生まれたのか? | ピーク需要に合わせて設備を過剰に用意する必要があったから |
3 | なぜピーク設備を柔軟に扱えたのか? | API 化と Two-Pizza Team によりサービスがモジュール化されていたから |
4 | なぜモジュール化を推進したのか? | 開発ボトルネックの解消と顧客中心主義の徹底が経営課題だったから |
5 | 真因は何? | “顧客中心・長期視点” と “小さなチーム文化” が、結果としてクラウド事業を生み出したから |
6. 2025 年の AWS 戦略と展望
- 生成 AI: Amazon Bedrock で Claude 3 や自社 LLM「Nova」を提供し、マルチモーダル RAG とエージェント機能を強化しています。
- Alexa+: 月額 19.99 ドルの AI アシスタント Alexa+ を発表し、音声 × AI の主導権を狙っています。The Verge によれば招待枠は拡大中です。
- カスタムチップ: 自社設計チップ Graviton4・Trainium2 で価格性能とエネルギー効率を大幅に向上させています。
- 衛星通信: 低軌道衛星網 Project Kuiper を推進し、グローバル低遅延ネットワークと AWS Edge を統合する構想が進行中です。
7. まとめ
- Amazon のクラウド転換は「社内課題を汎用化して外販する」プラットフォーム戦略の成功例です。
- 2025 年以降、AI 専用シリコン + 衛星 + Edge の垂直統合で差別化を図り、従来型 IaaS 依存からの脱却を目指すでしょう。
- 利用者にとっては「生成 AI / API」「サステナブル計算基盤」「グローバル低遅延」の 3 軸でコストと価値を再評価する好機になります。