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運用保守は“地味”じゃない!――開発ゼロの現場で鍛える5つの武器とキャリア戦略

Last updated at Posted at 2025-06-16

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はじめに
安定稼働を支える維持保守(運用保守)は、実は“開発より退屈”どころか ソフトウェア投資の 40% 〜 90%を占める本丸 であり、そこで磨かれる“読み解き・自動化・性能・セキュリティ・信頼性”の 5 つのスキルは 新規開発だけでは手に入らない市場価値 をもたらします。
「開発がほぼない運用保守って実際なにをするの?」という疑問に対し、仮説 → 根拠 / データ → 再検証 → 次のアクション の流れで深掘りし、5 つのなぜ で要因を探りながら、一見地味に思える仕事をキャリア加速の武器へ変える具体策を示します。

1. なぜ運用保守は重要なのか ― 5 つのなぜ で深掘り

No 問い 根拠
1 なぜ保守に時間と
コストがかかるのか?
ソフト予算の 40% 〜 90% が運用保守に流れる
現実があるから。
2 なぜそんなに費用が
膨らむのか?
障害対応はバグ修正だけでなく OS / ミドル
更新・パフォーマンス改善・セキュリティ
修正を含むから。
3 なぜ更新が頻発
するのか?
脆弱性報告は年々増加。パッチ適用遅延が
攻撃リスクを高めるから。
4 なぜ遅延するのか? 影響範囲の把握が難しく「安全に変える技術」
と「自動化」が不足しているから。
5 なぜ技術が不足
するのか?
開発中心のキャリアパスでは既存システム
解析・運用自動化・SRE 的思考を学ぶ機会が
少ないから。
wired.com

要因
“作る”時間より“使う”時間が長いため運用保守は重要なコンセプトですが、既存システムを“読んで・守って・進化させる”エンジニアリングが軽視されがちです。
そのため学習サイクルが組織的にデザインされていないことが見えてきます。


2. 具体タスク:運用保守で「毎日やること」

分類 代表タスク 使用ツール/技法 関連データ・事例
OS &
ミドル更新
期限切れ前のパッチ適用、
Kernel バージョンUP
WSUS
Ansible
Patch Manager Plus
OSパッチは
脆弱性・性能
両面で必須
データ
ベース改善
インデックス最適化、
クエリ解析、パラメータ
スニッフィング解消
SQL Server DMV
AWR
pg_stat_statements
SQLパフォーマンス
障害事例
バッチ性能
チューニング
I/Oバウンド、
メモリ割当調整
IBM i(AS400)
自動化
スクリプト
デプロイ自動化、
障害検知
CI/CD
IaC
(Terraform / IaSQL)
DevOps自動化
ツール動向
コード整理・
リファクタ
テスト導入、
段階的リファクタ
Martin Fowler手法
TDD
(テスト駆動開発)
最新
リファクタ戦略
コンテナ /
IaC化
レガシーを
コンテナに包む
Docker
Kubernetes
Legacy コンテナ化
成功パターン
セキュリティ 脆弱性スキャン、
ゼロデイ監視
Nessus
OSSEC
パッチ管理ベスト
プラクティス

3. 抽象化:運用保守で鍛えられる 5 つの武器

  • 読み解き・自動化・性能・セキュリティ・信頼性
  1. 読み解き:システム読解力 (システムリテラシー)
    巨大コード+インフラストラクチャーを短時間で把握し影響範囲を推論する力
    バグの修正前からバグの発見効率が上がる

  2. 自動化:DevSecOps & 自動化力
    手作業をコード化し、IaC で再現性+監査性+スピードアップを成立させる力

  3. 性能:パフォーマンスエンジニアリング
    DB / バッチのボトルネック特定スキルが向上
    業界では売り手市場

  4. セキュリティ:リスク分析 & 変更管理
    SRE の「エラーバジェット思考」で可用性と革新のバランスを取る
    wired.com

  5. 信頼性:レガシー刷新アーキテクチャ
    モノリス(すべてが一体化したシステム)を段階的にコンテナ化し、クラウドに載せ替える設計視点が持てる

再検証:求人市場でも「保守経験=システム全体を見渡せる上流適性」として評価。


4. ケーススタディ:3 年目エンジニア K さんの成長曲線

  • 1年目
    Oracle 11g → 19c への段階バージョンUPを担当。
    影響分析ドキュメント&Rollback手順を自動生成。
  • 2年目
    老朽バッチを 3 倍速に。
    SQL ヒント除去+インデックス再設計。
  • 3年目
    Terraform で IaC 化、週次パッチを 30 分 → 5 分へ短縮。
  • 結果
    障害件数 40% 減、月次リリース頻度 3 回 → 12 回。
    実績を評価され、昇格+SRE チーム転籍して年収アップ。

5. リスクとトレードオフ

リスク 影響 軽減策
技術スタックの旧態化 市場性低下 テックデット指標を可視化し継続的
リファクタ
泥縄オペレーション 人的ミス増 / 離職 IaC+自動テストで再現性確保
属人化 ナレッジ欠落、
コスト増
SRE “50%ルール”でオペレーションを
減らし自動化へ
wired.com
後追いセキュリティ インシデント
による損失増
定期パッチ&脆弱性管理フロー整備

6. ベストプラクティス / 最新動向

  • SRE (Site Reliability Engineering)
    可観測性+自動修復
    ※Googleが提唱するシステム運用方法論
    wired.com
  • IaC(Infrastructure as Code)
    インフラストラクチャの設定や管理をコードによって行う手法で手動を排除
    コンプライアンスもコード化、正確性、スピードアップ
  • コンテナ・サービスメッシュ
    コンテナ化されたアプリケーションのサービス間の通信を処理するレイヤーで段階的モダナイズ
  • データベース観測 (DB Observability)
    データで状況を把握し、問題の診断やトラブルシューティングを効率的に行い、クエリ最適化を自動化
  • セキュリティ・バイ・デザイン / DevSecOps
    セキュリティ対策をシステム設計の段階から考慮し、脆弱性管理を CI パイプラインへ統合

7. 次のアクション(示唆)

7-1. 自分の保守タスクを“棚卸し”する

  • やること
    今動かしているバッチ、サーバ、定例作業を Notion / Excel に箇条書きし、頻度・工数・リスクでタグ付けして整理する。
  • ポイント
    可視化すると「どの作業が時間を食い、どこが自動化候補か」が一目で分かるようにする。
  • 裏付け
    技術的負債を測る第一歩は“項目を列挙してメトリクスを当てること”と複数のツールが推奨。
    appmaster.io

7-2. 技術的負債ダッシュボードを作る

  • やること
    SonarQube などでコードの複雑度・テスト不足をスキャンし、後々に改修が難しくなるようなコードを技術的負債チケットとして GitHub Issue に紐付け。
  • ポイント
    「リスク高×修正コスト低」から手を付けると最速で効果が出る。
  • 裏付け
    Stepsize などの可視化ツールは“高インパクト順の並べ替え”が修正数を 11 倍に伸ばすと紹介されている。
    stepsize.com

7-3. 週1時間の “個人改善タイム”

  • やること
    毎週固定スロットを取り、パッチ適用やシェルスクリプト化など小改良を1件完了させる。
  • ポイント
    時間を“取れたらやる”ではなく“先に予約”すると継続しやすい。
  • 裏付け
    改善を個人に応用すると“小さな改善→習慣化”が最も効果的と専門記事が解説。
    kaizen.com
    1時間レビュー法も推奨されている。
    balancingchangemindfully.com

Kaizen は英語にもなっている単語です。
トヨタ生産方式の改善文化が世界に伝わったとされています。

7-4. 『SRE Handbook』を1章ずつ読む

  • やること
    公式オンライン版を1週間1章ペースで読み、学んだ用語を業務メモに落とす。
  • ポイント
    まず第10章「Postmortem Culture」を読むと“失敗の記録化”の意義が腹落ちしやすい。
  • 裏付け
    Google SRE 本は“トイル削減→信頼性向上”の実例が多く、個人でも応用可能。
    sre.google

7-5. 個人ポストモーテム(事後検証)日誌をつける

  • やること
    障害やヒヤリハットが起きた日に「何が起きた / 原因 / 再発防止」を A4 半ページで記録。
  • ポイント
    非難や中傷を排し“事実・原因・学び”の3点に絞ると書きやすい。
  • 裏付け
    Google が推奨する“ブレームレス・ポストモーテム”は信頼性を高める文化の核心。
    sre.google

7-6. キャリアロードマップを描き、上司と共有

  • やること

    1. 現在の保守スキルを棚卸し(監視・パッチ・DB チューニング…)する。
    2. 足りない領域(例:CI/CD, Kubernetes)を 3 ~ 6 か月学習タスクに落とす。
    3. 半年後に「SRE / DevSecOps 係として○○を自動化する」など成果目標を設定し、1on1 で相談。
  • ポイント
    目標を“役割”ではなく“成果+期限”で語ると承認されやすい。

  • 裏付け
    DevSecOps への転向は「背景棚卸し→必要技術→認定資格→パイロット案件」の順が成功率高と解説している。
    engx.space


まとめ
運用保守は“既存を守る”だけでなく“未来を創る”うえで欠かせない 全方位エンジニアリング演習場 です。
これらの武器・ベストプラクティスを仕込み、地味さを武器に変えるキャリア戦略 を描いていくことで、システムを“使う”人にとって必要不可欠なポジションになっていきます。

参考文献

  1. 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「IT運用コスト研究プロジェクトの概要」2016 年版運用調査報告(PDF)
  2. IPA「ソフトウェア等の脆弱性関連情報に関する届出状況[2024 年第 4 四半期]」
  3. トレンドマイクロ「日本の組織は頻繁に悪用されている脆弱性にセキュリティ …」
  4. Google Cloud Blog「SRE の原則に沿ったトイルの洗い出しとトラッキング」
  5. Zenn「技術的負債の優先順位について論文を読んでみた」
  6. Securify「ビジネス拡大の鍵はセキュリティ!?CI/CD と連動した形での DevSecOps の実現へ」
  7. Ximix コラム「データオブザーバビリティとは?意味や重要性など DX 推進におけるポイント」
  8. EnterpriseZine「日本市場で息巻く『オブザーバビリティ』の活況はこの先も続くか」
  9. ITmedia エンタープライズ「迫る『2025 年の崖』問題の解決策『段階的モダナイゼーション』」
  10. IBM Think ブログ「コンテナ技術を活用したレガシー・モダナイゼーション」
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