この記事は 防災アプリ開発 Advent Calendar 2024 の21日目です。
20日目は、そうし さんの GRIB2からマップタイルを出力したい でした。
好きなミスドのメニューは、フレンチクルーラーです。あんなに美味しいのに軽すぎてすぐ無くなってしまうところに儚さがありますよね。
はじめに
昨年のアドベントカレンダーにて、 地震観測を目的とした加速度センサ5種の性能比較 という記事を公開しました。この記事ではノイズ性能を軸にセンサの性能を比較していました。
ただし、震度の計測のされ方が実際の地震でどう変わるかといった検証はしていませんでした。
2024年のあいだ、5種の加速度センサについて震度計測を続けましたので、実際の地震における挙動をこの記事で紹介します。
計測
対象
地震観測を目的とした加速度センサ5種の性能比較 の記事で紹介したものと同じセンサです。
# | センサ名 | メーカー | 販売 |
---|---|---|---|
1 | ADXL345 | Analog Devices |
樫木総業(396円) スイッチサイエンス(3,669円) |
2 | LIS3DH | STMicroelectronics |
マルツオンライン(1,261円) スイッチサイエンス(1,202円) |
3 | LSM6DSO | STMicroelectronics | スイッチサイエンス(2,201円) |
4 | IIS3DHHC | STMicroelectronics | ストロベリーリナックス(2,420円) |
5 | ADXL355 | Analog Devices | ストロベリーリナックス(13,200円) |
なおADXL355は、ストロベリーリナックスでの販売価格は昨年の2倍となる13,200円に変わっています。お財布に痛いです。
手法
ここも、地震観測を目的とした加速度センサ5種の性能比較 の記事で紹介した方法と同様です。
Arduinoで計測したものをPCに送り、Pythonスクリプトで逐次的にフーリエ変換することで計測震度を取得します。
事例紹介
2024/01/01 16:10 石川県能登地方の地震
筆者は関東圏に在住しており、この地震では自宅で震度3程度の揺れを観測しました。
16:00~16:30頃の計測震度の時系列グラフは以下のようになります。
ここで、グラフの色は各センサに対応しています(凡例を参照)。また計測震度は、100Hzで計測した加速度の前512サンプル(約5秒間)を使って0.5秒毎に逐次的に算出しています。
16:07頃にADXL355では計測震度-0.5程度の揺れを観測しています。これは16:06に発生したM5.5の地震を捉えたものと思われます。ADXL355以外のセンサではノイズに埋もれていました。
16:10~16:20の10分間を抽出した時系列グラフは以下のようになります。
16:11頃から、1分ほどかけて計測震度2.5程度まで揺れが強くなっていく様子が分かります。
その後、16:12~16:13にピークを迎えたあと、計測震度±0.5程度の強弱を繰り返しながら揺れが減衰していく様子も見て取れます。
結果的に、揺れ始めから9分が経過した16:20ごろまで、体に感じる揺れ(計測震度0.5以上)が継続していたことが分かりました。
センサごとの最大計測震度は以下の表のようになりました。
センサ | 最大計測震度 |
---|---|
ADXL345 | 2.6 |
LIS3DH | 2.6 |
LSM6DSO | 2.6 |
IIS3DHHC | 2.5 |
ADXL355 | 2.6 |
2024/03/21 09:08 茨城県南部の地震
この地震では自宅で震度4程度の揺れを観測しました。
9:00~9:30頃の計測震度の時系列グラフは以下のようになります。
能登地方の地震に比べて、波形の立ち上がりがやや鋭いように感じします。
9:08~9:13の5分間を抽出した時系列グラフは以下のようになります。
計測震度が2.2程度まで上昇したあと、数秒の間隔を置いて、計測震度3.7程度まで上昇しています。
はじめの急上昇は初期微動で、そのうち数秒あってから主要動が到達したものと考えられます。
その後、5分後の9:13にはADXL355を含め全てのセンサでノイズレベルまで震度が戻りました。5分程度は体に感じない揺れを含めて揺れ続けていたことを感じ取れます。
センサごとの最大計測震度は以下の表のようになりました。
センサ | 最大計測震度 |
---|---|
ADXL345 | 3.6 |
LIS3DH | 3.6 |
LSM6DSO | 3.6 |
IIS3DHHC | 3.6 |
ADXL355 | 3.7 |
2024/04/27 17:35 小笠原諸島西方沖の地震
深発地震の例です。この地震では自宅で震度1程度の揺れを観測しました。
17:30~18:00頃の計測震度の時系列グラフは以下のようになります。
17:50以降にスパイク的に上がっているものは生活振動です。17:40前後の上昇は地震によるものです。
17:37~17:42の5分間を抽出した時系列グラフは以下のようになります。
震源距離が遠いことから、おそらく17:37台に来ているであろう初期微動と、17:39台の主要動の時間差が大きくなっています。
初期微動はADXL355によると計測震度-0.5程度で、これはADXL355以外のセンサではノイズに埋もれていました。
初期微動が減衰したころには主要動が到達し、LSM6DSO、IIS3DHHC、ADXL355で震度1の揺れを観測しました。ADXL345、LIS3DHではノイズに埋もれていました。
センサごとの最大計測震度は以下の表のようになりました。
センサ | 最大計測震度 |
---|---|
ADXL345 | (noisy) 2.0 |
LIS3DH | (noisy) 2.1 |
LSM6DSO | 1.1 |
IIS3DHHC | 1.1 |
ADXL355 | 1.1 |
おわりに
ここでは、昨年Qiitaに投稿した加速度センサについて、実際の地震での観測事例を3つ紹介しました。
おうち地震計で震度計測を続けていると、初期微動と主要動は明確に区別できるんだなとか、5分も震度1以上の揺れは続くことがあるんだなとか、色々な発見があって面白いものです。
みなさんもぜひ興味があればやってみてください。