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Unreal Engine (UE)Advent Calendar 2022

Day 9

[UE4][UE5] TranslucencyとDOFとDistortionとPPMの描画優先問題について

Last updated at Posted at 2022-12-08

検証UE: 4.27.2, 5.0.0
まちがってたらごめんなさい。
UE5は詳しくないので、何か違いとか回避策あったらごめんなさい。教えてください。ざっと見ると同じ感じっぽかった。

Translucencyなマテリアルを使用したメッシュと、
DOF(被写界深度)と、
Distortion(屈折、Refraction)と、
PostProcessMaterialの描画順の問題についてになります。
Deferred Renderingでの検証になります。

絡まり合う問題

それぞれが描画順と絡み合うので、色々な問題が発生します。
詳細は後述参照です。

 

UEの描画順

  1. Translucency (Render After DOF = OFF)
  2. Distortion (屈折、Refraction)
  3. Post Process Material (Blendable Location = BeforeTranslucency)
  4. DOF
  5. Translucency (Render After DOF = ON)

※Render After DOF
「DOFの後に描画するか」。マテリアルの詳細欄の同名パラメーター。Translucencyの描画パス設定。
UE4 Render After DOF = ONUE5 Translucency Pass = After DOF
UE4 Render After DOF = OFFUE5 Translucency Pass = Before DOF
UE5 After Motion BlurBefore DOF より更に後のパスかと思います。
image.png
image.png

※Distortion
Translucencyなマテリアルで「屈折」パラメーターに値が入った際、背景を屈折させて表示する描画パスです。
image.png

※Blendable Location
ポストプロセスマテリアルの詳細欄の同名パラメーター。PostProcessMaterialの描画パス設定
image.png

問題

TranslucencyにDOFが掛からない

image.png

よく見る問題がこちらだと思います。
こちらは描画順が「(4)DOF」→「(5)Translucency (Render After DOF = ON)」となっている為、
DOF のボケを描画した後に Translucency を描いている為になります。

これ自体をなんとか対応するには、Translucency マテリアルの「Render After DOF」をOFFにする事で回避できます。
image.png
奥側のメッシュだけ対応して、無事ボケました。
OFFにした事で Translucency の描画順が「(5)Translucency (Render After DOF = ON)」から「(1)Translucency (Render After DOF = OFF)」に変わりました。
結果、描画が「(1)Translucency (Render After DOF = OFF)」→「(4)DOF」の順になったので、ボケるようになりました。
image.png

Translucency の Render After DOF を変更することによる問題

カメラ位置が変わった場合

先程からカメラの位置が変わり、画面内の配置が変わった場合。
image.png
今度は先程マテリアルを「Render After DOF」をOFFに差し替えたオブジェクトが画面手前に来ました。
本来は土台のBoxのようにボケてほしくない状況です。

描画順的に「(1)Translucency (Render After DOF = OFF)」→「(4)DOF」の順なのでボケるようになってしまっています。
(TranslucencyにはDepth(深度)情報が無いので、更に奥の壁のDepthが使用されてDOFが掛けられています)

Translucencyマテリアルの「Render After DOF」をONに戻すと、DOFの後に描画を行うので意図した通りボケなくなります。
image.png

可能なら状況ごとに「Render After DOF」のON/OFFを切り替えれると、カットシーン等でカット毎に対処とかで何とか出来るかもしれません。
(シームレスにカメラが近づいたり離れたりする場合は……何か考慮が必要……)
ただし「Render After DOF」のパラメーターは実行時に変更はできず、またマテリアルインスタンスでも変更はできません。
つまり、マスターマテリアル自体でしか切り替えられず、同じマテリアルを2種類用意しなければいけません。
きびしい。

じゃあ「Render After DOF」ONのマテリアルと、「Render After DOF」OFFのマテリアル2種類作って、状況に応じて差し替えるか……
と頑張ってみても、また別の問題が発生する場合があります。

Distortion(屈折)の見た目が変わる

下記が「Render After DOF」が OFF の状態です。
image.png
下記が「Render After DOF」が ON の状態です。
image.png

マテリアルの中身は同じで、「Render After DOF」のON/OFFだけ切り替えました。
Distortion(屈折)部分の色の付き方が「Render After DOF」の状態によって変わります。
前者 OFF の状態は、「(1)Translucency (Render After DOF = OFF)」を描いてから「(2)Distortion」で歪ませる
→ (1)Translucency で描いた色も歪む。
後者 ON の状態は、「(2)Distortion」で歪ませてから「(5)Translucency (Render After DOF = ON)」で 描く
→ (5)Translucency で描く色は歪まない

上記は球で描画しましたが、オブジェクトだとより顕著に違いが出ます。
左が OFF 、右が ON
image.png
屈折の強さによっては色が乗らなくなり、意図した見た目にならない可能性があります。

左が OFF 、右が ON
c.gif
パーティクルは特に動きがあるので、後から屈折で歪んでボコボコした見た目になってしまっています。

Distortion の奥に Render After DOF = ON があると発生する問題

手前が Distortion しているパーティクル。
奥の青いオブジェクトが Translucency。
左側が Render After DOF = OFF、右側が Render After DOF = ON になります。
d.gif

左の Render After DOF = OFF のオブジェクトは Distortion で歪みます。
しかし、右の Render After DOF = ON のオブジェクトは Distortion で歪みません。
(2)Distortion の後に (5)Translucency (Render After DOF = ON) が描画されてしまうので、Distortion の奥にある Translucency が歪まず描画されてしまいます。
前後関係が崩れてしまい、厳しい見た目になっています。

Render After DOF の設定が混在すると発生する問題

手前の赤い板が Translucency の Render After DOF = OFF
奥の青いオブジェクトが Translucency。
左側が Render After DOF = OFF, 右側が Render After DOF = ON になります。
e.gif
手前にある筈の赤い板より、奥右側の青いオブジェクトが手前に描画されてしまっています。
描画順が、手前の板 (1)Translucency (Render After DOF = OFF) の後に、
奥右側のオブジェクト (5)Translucency (Render After DOF = ON) となってしまっているのが原因です。

よく見かけるのは、外を歩いている時は問題無いけど、車の中から窓ガラス越しや、家の中の窓越しに見るとおかしい。とかでしょうか。

Post Process Material の Blendable Location による問題

Blendable Location = Before Translucency がTranslucencyに掛からない

内容的には前述「TranslucencyにDOFが掛からない」と同じです。
image.png
注視対象以外を暗くするようなPostProcessMaterialを用意しました。
Blendable Location = Before Translucency です。
今は中心の柱を注視しているのに、右側の Translucency に色が乗ってしまっています。
image.png
描画順的に、「Render After DOF」が ON の Translucency は、
「Blendable Location」が Before Translucency になっている Post Process Material の後に描画されてしまいます。

こちらもDOFと同様に Translucency の「Render After DOF」を OFF にする事で回避できます。
image.png
もしくは、Post Process Material の「Blendable Location」を Before Tonemapping 等にする事でも回避できます。
ただし、こちらで対処する場合は、DOF との描画優先問題が発生してしまいます。

Blendable Location を Before Tonemapping 以降に変更することによるDOFとの問題

Blendable Location」を Before Translucency から Before TonemappingAfter Tonemapping 等に変更した際の問題です。

こちらは、Post Process Material 内で Scene Texture 系を利用している場合の問題です。
→ SceneTexture 系は World Position や、Scene DepthCustom Depth 等を使用している場合です。
image.png

Before Tonemapping 以降の場合、「Render After DOF」が ON のTranslucencyにも影響を与えることが出来ます。
その変わりに、DOF の表示での問題が発生します。

カスタムステンシルで、対象以外を暗くする Post Process Material を書きました。
image.png

これを DOF がかかるシーンで見ます。奥の柱と手前のBOXにカスタムステンシルを設定して、それ以外を暗くしています。
Blendable Location」が Before Translucency
image.png

Blendable Location」が Before Tonemapping
image.png

前者 Before Translucency の際は、縁に DOF が掛かってボケているのに対し、
後者 Before Tonemapping の際は、縁がパッキリ切れて表示されています。

image.png
前者 Before Translucency(3)Post Process Material を描いて色を暗くしてから、(4)DOF を掛けるので縁もボケます。
後者 Before Tonemapping(4)DOF でボケた後に、Post Process Material で色を暗くしています。

この際、SceneTexture 系はもっと前の描画パスの情報になります。
なので、DOF でボケる前の情報なので、これを使用するとパッキリ切れてしまいます。

結局どうするのがいいの?

「プロジェクト毎に考えて対応する必要がある」とよくよく言われるのがこの辺りの問題です。

そもそも Translucency を使うことが少ないプロジェクトならそこまで考慮しなくてもいいかもしれない。
DOF を使わなければ考慮に入れなくていい。
カットシーンだけで DOF 使うのなら、カメラや演出、最悪問題が出るオブジェクトを非表示にして対処できるかも。
問題があった場合に Distortion を無くしてしまってもいいか。

などなど……
チーム内でアート、エンジニア、デザイナーで対応する方向を詰める必要があるかなぁと思います。

UE4のお仕事もやったりしてましたけど、毎度頭を悩ませます。
みんなどうしてるんでしょうね。

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