こちらは2021年に制作した地図の解説記事です。
はじめに
近年、古地図や旧街道巡りがブームとなっているとされ、関連したさまざまな書籍等が多く存在します。
今年夏に逝去された(謹んでご冥福をお祈りします)埼玉大学・谷謙二氏の「今昔マップ」や日本地図センターの「東京時層地図」など、古地図と現代の地図を比較・重ね合わせるウェブサイト・アプリケーションをご存知の方は多いかと思います。
これらの昔の地図は、(自分を含めて)地図好きにとっては垂涎もので、それこそ何時間も眺めていられるものでしょう。
しかし、地図にそこまで興味がない方々にとってはどうでしょうか。
古地図や絵図の記号・整飾は、現代の地図に慣れ親しんだ方にとって少し難解なもので、理解するまでに少し時間を要するケースもあるかと思います。
これは地図の「情報を一目でわかりやすく伝える」という目的の達成を難しくしてしまっています。
そこで、古地図や絵図を誰にとってもわかりやすく伝えるためにはどうすればよいか?と考えた結果、現代風のフォーマットに当てはめた古地図を制作するという手法にたどり着きました。
作成方法
元にした地図
今回は、明治時代の東京・横浜間に鉄道が開通した当時の地図を作りたかったので、農研機構さんが歴史的農業環境閲覧システムにて配信している「第一軍管区地方2万分1迅速測図原図」(以下、迅速測図とします)を利用しました。
迅速測図についての詳しい説明は省きますが、およそ1880年ごろの地図です。
道路
QGISに農研機構さんのタイルを読み込み、ひたすらトレースする作業を行なっていきます。
トレースした道路は道幅に従って分類。道路の太さや色を変えます。
今回はほとんどの人が使ったことのあるであろうGoogleマップ風のデザインとしました。
POI
迅速測図上に記された村名・町名などの市町村名や、役場・官公庁・橋梁・寺社・砲台・灯台などをPOIとしてプロット。
1884年に出版された岡部啓五郎『東京名勝図会』に記載された名所も参考にしました。
アイコン
POIのアイコンはGoogleのものをそのまま使用すると権利上の問題があると思われたので、似せて書き起こしつつ、新しいアイコンを制作しました。
例えば、当時水上交通として主流だった「渡し」や、明治初年から建設され各地で多く用いられるようになったトラス橋をモチーフにした「橋」、そして陸蒸気と呼ばれ親しまれた蒸気機関車をモチーフにした「鉄道」のアイコンです。
完成
ズームレベルに応じて表示されるアイコンやラベルの表示される方向を手動でいい感じに調整します。
さらに細かく調整したい方は、PDFにエクスポート→illustrator等(FOSS4Gなのにオープンじゃないソフトを使ってスミマセン🙇♂️)のドロー系ソフトで読み込んだ上で細かい調整をして完成です!
参考文献
ここに掲載した文献以外にも、さまざまな文献や書籍等を参考に制作しました。文献一覧は下記になります。
タイルを提供してくださっている農研機構さんを含めまして、感謝の意を表します。
今後の展望
以前より「江戸時代の現代風地図」をTwitter上に投稿し、ありがたいことに多くの反響を頂いてきました。この地図を全国に拡大し、さらに今回制作した明治時代を含めた古代〜現代までを一気通貫で俯瞰できる、そんな地図を作りたいと考えています。