はじめに
皆さんは、プレゼンやブログなどで技術解説をすることはありますか?
この記事では、知ってほしいことを聞き手、読み手に理解してもらうための解説の仕方を考えてみます。
「技術解説」でなくてもほとんど共通する部分があると思いますが、あえて今回は技術解説をする場合とします。
聞き手を迷子にしないこと
プレゼンやブログで、途中から頭に「?」マークを浮かべてしまう場面に遭遇したことはないでしょうか。専門用語や前提知識、あるいはその人が言いたいことや目的が共有されていないまま話を進めると、聞き手は一度迷子になった後、なかなか軌道修正できません。
技術的な話題を理解するためには、 始めの段階で“土台”をしっかり固めること が大切です。本記事では、この“土台”つまり「前提」に時間をかけて丁寧に説明することのメリットと、実際にどのように解説すればよいのかを解説します。
“前提”の重要性
伝えたい内容に注力してしまうあまりに、前提となる知識をすっ飛ばしてしまうケースは珍しくありません。
一方で、聞き手が「これ、どういう意味だっけ?」と疑問を感じても、その場で質問しづらい雰囲気だったり、ブログ記事ならそのまま読み飛ばしてしまうこともあります。
論理の辻褄が合わないなどの疑問については質問しやすいのですが、話が理解できないとなってしまうとそもそも質問も思い浮かびません。一度理解が止まると、その先の内容は全く頭に入らないということも良くあります。
反対に、しっかり前提を説明することで、聞き手は 「なるほど、なるほど」と納得しながらから次のステップに進むことができます。
結果として、多少本題の内容の時間を短く駆け足で触れたとしても、前提がわかっていれば大枠で理解できるため、聞き手の理解度は格段に上がります。
特にプレゼンにおける“前提”の重要性
ブログなど文書での解説の場合、多少前提を端折っても、文章全体での論理に破綻がなく、最低限必要なことが書かれていれば、読む気のある読者であれば、別の資料を探し、時間をかけて読解し、理解に繋げることができます。
一方で、口頭でのプレゼンの場合、聞き手はリアルタイムで情報を受け取ることになります。いくら聞き手に興味があっても、理解ができていないまま、その場で足りない知識を補うために他の資料を探したり、調べ直すことはほぼ不可能です。
さらに、プレゼンでは一度話が進んでしまうと、理解が追いつかない聞き手は簡単に“迷子”になってしまいます。文書であれば「途中で別の資料を先に読む」「あとから読み返す」といった対処が可能ですが、口頭発表中に戻ってもう一度確認する、というのは困難です。
だからこそ、「前提知識を丁寧に共有する」ことは、口頭でのプレゼンにおいて特に重要になります。要所要所で用語や背景を少し時間をかけて説明するだけで、聞き手の理解度が大幅に変わるのです。
このように、口頭でのプレゼンでこそ、前提を飛ばさずに手厚くする必要があります。
結果として、聞き手が迷子になりにくくなり、プレゼンの後半で扱う専門性の高い内容や細かい理論についてもスムーズに理解してもらえるようになります。
“前提”を丁寧に説明するとはどういうことか
聞き手の理解レベルを考え、より広く想定する
プレゼン前や記事を書く前に、想定読者はどの程度の専門知識を持っているのかを確認または推定しましょう。
そして、確認または想定したレベルより さらに理解度が低めの聞き手を想定 して話すことが重要です。
ブログ記事の場合は、読者対象を明確にする一文を最初に入れるのがおすすめです。
対面のプレゼンなら、質問や表情から反応を見て微調整できます。丁寧に話す準備をしておけば、聞き手が十分理解できてそうであればその場で省略することができます。
概念や目的を明確にし、ゴールまでの道筋を示す
解説する技術の属する分野そのものや、解説する技術が目的とすることをしっかりと話しましょう。
その技術が解決しようとする課題を聞き手が知っている、理解しているとは考えられません。何のためにその分野が存在し、どのような課題があって解決されるか、それを最初に伝えておく必要があります。
「何を知ってほしいのか」「どんな成果物を得られるのか」を最初に示し、全体の道筋を聞き手に提示します。そうすることで、聞き手が「今、どこを走っているのか」を把握しながら話を聞けます。
話が長くなる場合
解説の内容が濃く、最初の段階では最後のゴールまでの道筋を聞き手に伝えることが困難な場合もあります。
その場合も、暗闇の中を走るのではなく、常に少し先の中間地点を示しながら解説することが大事です。
例えば
例として、「Dockerコンテナでパケット処理を行うソフトウェア」(架空の内容です) を解説するとします。
このプレゼンの本質は、今までアプリケーションを扱うことが多かったDockerコンテナでIPやトンネリングといったパケット処理を行うという点を解説することになります。
この場合、丁寧に説明すべき“前提”となるのは次の2点です
- Dockerなどのコンテナ実行環境の存在意義とそのメリット
- 今回コンテナ化しようと思っているパケット処理それ自体
私が聞き手を想定するのであれば、「目的となるパケット処理は理解しているがコンテナについて知らない」「コンテナについては理解しているが、普段パケット処理のようなネットワークプログラミングをしていない」「両方理解は深くないが、何となく雰囲気はわかる」ぐらいの聞き手を想定すると思われます。
裏を返せば、「コンテナのことも知っている、パケット処理も理解している、ただしDocker上ではやったことがない」と言ったようなピンポイントな聞き手だけを想定することはしないということです。
自分が思う以上にそのような聞き手は存在しません。
全体を一度理解した人から見ると、Dockerそのものの説明や、通常のパケット処理の説明を丁寧にすることは時間の無駄のようにも思ってしまいますが、この前提の共有こそがプレゼンの重要度の8割以上を占めます。
この前提さえ理解できれば、実際にどうやったらできるのか、ということは極端に言うと資料に書いてさえあればいいのです。
まとめ: まずは迷子を出さない解説を目指そう
解説、ひいては理解の核となる「前提」を端折ると、途中で聞き手が追いつけなくなり、最終的に高度な内容まで届かないという問題が起こります。反対に、前提にしっかり時間を使うことで、少し高度な部分はざっくり説明しても理解の土台があるため、聞き手は“なるほど”と納得しやすくなります。
ブログやプレゼンを通して技術を共有したいときこそ、まずは迷子を出さない丁寧な前提共有を意識してみてください。そうすることで、聞き手に「わかりやすかった」「もっと知りたい」というポジティブな感情を持ってもらえるはずです。
今後の技術解説の場面で、ぜひ実践してみてください。