はじめに
まずは、このちょっとエッジの効いたタイトルをお許しください。
「お前らのOKRは間違っている」なんて強気な言い方をしていますが、これはあくまで注意喚起というか、ちょっと刺さる見出しにしたかっただけです。深い意味はありません。
でも、実際にOKRがうまく機能していない事例って結構多いんですよね。そんな現状を「いやいや、もったいない!」と思いながら書いています。
そもそもOKRってなんだ?
OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、
- Objective(目標): チームや個人が実現したい「野心的なゴール」
- Key Results(主要な成果指標): そのゴールを達成できたかどうかを測るための「定量的な指標」
のセットです。
よく言われるのは「Objectiveはワクワクする未来像、Key Resultsはその実現度合いを数値化したもの」という表現です。
OKRはIntelやGoogleをはじめ、IT企業を中心に多くのグローバル企業で使われている有名フレームワークなので、「とりあえず導入しとけばイケてるっぽい」と飛びつく会社が後を絶ちません。
ですが、勢いだけでOKRに手を出すと、たいてい痛い目に遭います。
なぜなら、 OKRは単なる目標管理ツールではなく、チームや企業のカルチャーそのものを変える可能性を秘めた「運用体系」 だから。
適当に「今期は売上1.2倍!」なんて雑に立てると、あちこちに歪みが出まくるわけです。
よくみる失敗例
ここでは、筆者が経験した事のある失敗パターンをざっと挙げてみます。
もし身に覚えがあったら、OKRの運用を見直すきっかけにしてみてください。
1. Key Resultsがタスクになっている
- ありがち度: ★★★★★
-
タスク例: 「新しい営業資料を作る」「月2回ブログを書く」
- Objectiveを達成するための行動リストが、そのままKR(主要成果指標)になってしまうパターン。
- KRは測定可能で、数値の変化を見るための指標でないと意味がないのに、やることリストに終始しているケース。
2. Objectiveが無難すぎる(または抽象的すぎる)
- ありがち度: ★★★★☆
- 「売上目標を達成する」「チームワークを高める」みたいな、よく聞くけどまったくワクワクしないObjective。
- 逆に「イノベーションを起こす」みたいに抽象的すぎるケースもNG。結局「何を目指してるんだっけ?」となりがち。
3. 評価ともろに紐付けてしまう
- ありがち度: ★★★☆☆
- OKRの達成度をそのまま人事評価に直結すると、メンバーは“達成しやすい安全な目標”しか掲げなくなります。
- 本来、OKRは「挑戦と学習」を促す仕組みなので、評価とは分離して運用するのが基本です。
4. 終了後の振り返りが雑
- ありがち度: ★★★★☆
- 「期末になってみたけど、数字もちゃんと追えてないし、なんとなく終わった感…」となるパターン。
- せっかく定量化してるのだから、振り返りで成功・失敗を具体的に学び、次に生かすのがポイント。
5. ボトムアップで作ってしまい、全体の方向性が見えなくなる
- ありがち度: ★★★☆☆
- 各チームやメンバーが勝手にOKRを立てているうちに、最終的に「会社全体がどこへ向かっているのか」が見えなくなる。
- たとえばトップが「コストダウン」とは言ってるが、OKRを導入した部署ではまったく別の指標を追いかけていてチグハグ…なんて例も。
- ボトムアップの自発性は大事ですが、上位レイヤー(企業のビジョンや経営計画)との整合性は最低限とる必要があります。
6. 名前だけOKRで、フレームワークとして利用していない
- ありがち度: ★★★★☆
- 「うちOKR導入しました!」とアピールしているが、実態は“いつものKPI管理”や“タスク管理”と何ら変わらないケース。
- 週次・月次のチェックインや期末の振り返り、評価と切り離した挑戦的な目標設定など、OKR特有の運用要素が全くない。
- これはもう、形骸化の極み。名前だけに踊らされず、フレームワークの本質を取り入れることが大事。
7. 「上位OKRを仮置きすらせず」、自チームのOKRを独立して決めてしまう
- ありがち度: ★★★☆☆
- トップから明確な目標が示されない場合、上位のOKRを仮置きすることなく、いきなり自チームのOKRだけを設定して始めてしまうケース。
- これは一見スマートなようで、全社方針とのリンクが曖昧になり、結果的に「チームの成果が会社全体としてどう生きるのか」分からなくなりがちです。
- せっかくOKRを回しても、組織の方向性と噛み合わないと上層部からの理解や評価を得にくいし、長続きもしません。
- 仮でもいいので上位レイヤーのObjective(例:経営理念、ビジョン、トップのちょっとした口頭コメント)を拾っておき、それを踏まえて自チームのOKRにつなげるだけでも、会社全体として筋の通った運用になります。
正しい(というか効果的な)OKR運用のポイント
では、どうすればOKRをうまく回せるのか。いくつかポイントを挙げます。
1. Objectiveは「野心的かつ方向性が明確」
- 「達成できたらめっちゃ嬉しいし、会社の未来が変わるかも!」くらいのワクワク感が大事。
- 同時に「要は〇〇を目指すんだよね」と周りに説明できる具体性も必要。
2. Key Resultsはシンプルで定量的
- KRはなるべく数字で測れるもの。たとえば「NPSを+10上げる」「新規顧客を50社獲得する」「月間ユーザー数10万人」など。
- 「作業リスト」や「ブログを週に2回書く」みたいな行動指標ではなく、成果指標にするのがポイント。
3. 評価とは切り離して「挑戦」を促す
- 70~80%達成でも「いいじゃん、頑張ったね!」と思えるカルチャーが鍵。
- 達成できなかったとしても学びがあればOKという雰囲気づくりが大切。
4. 運用サイクルをきちんと回す
- 設定して終わりではなく、定期的なチェックイン(週次や月次)と期末の振り返りをセットで回す。
- 「今どのくらい?」「問題は何?」と、チームで話し合う場をしっかり確保する。
5. トップが意志を示し、実際に使う
- マネジメントが「やっといて」だけだと100%形骸化します。
- 目標の進捗や成果をトップ自らコミュニケーションし、OKRを意思決定の場で使うなど、経営層が本気で取り組むのが理想。
6. フレームワークはまず素直に使う(いきなりカスタマイズしない)
- 「Googleはこうだからうちも真似+オリジナルアレンジを…」と最初から拡張しすぎると、だいたい失敗します。
- まずはオリジナルに近い形でOKRを回し、運用の感触をつかむことが大切。
- そこから「微調整」すれば十分です。
致し方なく中間部署から導入する&トップから目標が示されない場合は?
「うちのトップはOKRに興味ないし、経営目標もほとんど出してない…。でも、自部署としては導入したい!」というケースに向けて、いくつか事例を紹介します。
ステップ1. トップや会社の“言葉”を拾う(目標がない場合でも、ミッションやバリュー、口頭の方針を探す)
- 「社長が『うちの強みはサービス品質だ』とポツリと言っていた」「公式HPに『業界をリードする存在になる』と書いてある」など、何らかのビジョンや価値観は存在するはずなので、それを探します。
- たとえ数値目標がなくても、組織としての価値観や方向性を「仮の上位Objective」として設定してみる。
- これをすっ飛ばす(=何も仮置きせずいきなり自チームのOKRから始める)と、成果を組織全体に還元しづらいし、他部署やトップからの理解も得にくいので注意。
ステップ2. 部署レベルでOKRを立てる(仮置きの上位Objectiveを踏まえる)
- たとえば「サービス品質向上」という方針を上位Objectiveに据えたら、部署ごとにそれを踏まえたObjectivesとKey Resultsを設定する。
-
具体例:
- Objective(部署レベル): 「当社の強みであるサービス品質をさらに高め、お客様の満足度を今までになく向上させる」
-
Key Results(例):
- 顧客満足度(NPS)を+15引き上げる
- 問い合わせ・クレーム対応時間を30%短縮する
- リピート購入率を10ポイント向上する
ステップ3. 実際にOKR運用を回して成果を可視化し、トップに報告する
- 週次や月次でKey Resultsの進捗をチェックして、期末に「NPSがどこまで上がったか」「対応時間がどれだけ短縮したか」などを振り返る。
- その結果を「部署としてはこういう形で会社の強みをさらに伸ばしました」とトップに報告すると、「おお、なんかいい感じじゃん」というリアクションを引き出しやすい。
- こうして 「OKRは役に立つ仕組みだ」 と認識してもらえれば、最終的にはトップが目標を掲げるようになったり、社内で正式導入が広がったりする可能性が高いです。
もしミッションやビジョンすらないとしたら…?
- 企業理念も社長の方針も「特にない」というなら、「じゃあそこから作ってみません?」と前向きに捉えるチャンスかもしれません。
- 自部署で 「仮のビジョン」 を考え、そこにOKRを当てはめて成果を出すことで、周囲が「なんかあの部署元気だぞ」と気づく。
- そこから「うちの会社もビジョンを言語化してみようか」という流れが生まれるかもしれません。
まとめ: 「お前らのOKRは間違っている」を糧に
ちょっと挑発的なタイトルをつけてしまいましたが、それだけOKRという仕組みには大きな可能性があります。
とはいえ、導入プロセスでありがちな失敗を放置すると、「OKRやってます(形だけ)」の状態に陥りがち。
そうなると、せっかくのポテンシャルを十分に活かせないのが本当にもったいないんですよね。
- OKRは野心的なObjectiveと測定可能なKey Resultsのセット
- 挑戦を促すために、人事評価とは切り離す
- 継続的なチェックインと振り返り、トップのコミットが不可欠
- まずはフレームワークを“そのまま”導入してみて、理解を深めることが重要
- トップが何も目標を示さない場合でも、仮の上位Objectiveを置き、自チームだけの独立したOKRにしない
- やるなら組織のビジョンや理念と最低限リンクをつくって運用する
もし皆さんの組織で「OKRあんまりうまくいってない…」「トップが目標を出してくれない…」「上位OKRなしで独立運用してるけど、これでいいの?」と思っているなら、ぜひ今回挙げたポイントを試してみてください。
きちんとハマれば、OKRは“単なる目標管理”に留まらず、組織カルチャー自体をガラッと変え得る強力な仕組みです。
では、また。