マーケティング的な観点で技術動向を調査するにあたっての有用な一手法として、Google Trendsの活用を挙げることが出来ます。このGoogle Trendsを用いることにより、ある検索語の人気度合いを確認することが出来るため、例えば、IT業界で明日の飯の種を探ることが、より容易になります1。
Google Trendsを用いた長期トレンド分析時に何を注意しなければならないのか?
大昔(2007年頃より以前)においては、Google検索のユーザー層は現在とは大分異なっていました。Google検索は、Google Trendsを用いた時系列分析の始点にあたる2004年時点でようやく検索エンジンのシェアトップを獲得し、Yahooと肩を並べました(参考:ComScore on top search engines for December 2004: Google - 35%, Yah00 -32%)。以降、Google検索は着実にシェアを獲得するものの、2007年時点でもそのシェアは60%強に留まっています(参考:Hitwise: August 2007 Search Share Favors Google, Yahoo – Microsoft Drops)。つまるところ、大昔のGoogleユーザー層は、現在より大分Geek色が強かったと考えられます2。
そのため、Google Trendsを用いたトレンド分析の結果は、2007年頃より以前では、よりGeek色が強いユーザーの関心を反映したものとなっているはずです。更に端的に言ってしまうと、2007年頃より以前では、情報技術関連の検索語の人気度が顕著に高くなります。
上記の裏づけを示すため、Google Trendsでの(流行の影響を受けづらい)典型的な情報技術用語("Server"、"Computer"、"Software")の人気度の時系列推移を以下に示します。
では、どうすれば良いのか?
情報技術に関連する用語に対して、Google Trendsを用いた長期トレンド分析を行う場合には、典型的な情報技術用語("Server"、"Computer"、"Software"...etc.)と比較する形での分析を行うことを推奨します。
この推奨に反した場合にはどうなるかと言うと、例えば、「Java」キーワード単体に対してGoogle Trends分析を行うと、「Java言語は継続的に衰退している」としか解釈しようが無い時系列グラフが表示されてしまいます(下図)。
一方で、上述したようなミスリードを避けるために、「Software」キーワードと比較しつつ、「Java」キーワードの人気度の推移を確認すれば、「(Google検索のユーザー層の変化により)情報技術関連の用語が全般的に人気度を落としている一方で、Java言語に対する検索ニーズは相対的には安定している」、というような新たな結果解釈の余地が生ずることとなります(下図)。
補足
実は、Google Trendsには「カテゴリ」の概念があるので、仮に、Java言語の人気度の推移を見たいのならば、「プログラミング」カテゴリ内に閉じた形での人気度の推移を見るのが本来あるべき素直な対応だったりもします。しかしながら、「Java(プログラミング言語)」カテゴリを指定した上での「Java」キーワードの人気度が右肩下がりになっている結果(下図)を見ると、「カテゴリ」内に閉じた形で人気度を分析する戦略が上手く機能している気がせず...
-
Qiitaでの投稿で言うと「google trendによるプログラミング言語のトレンド」記事で、プログラミング言語の人気度合いに関するGoogle Trendsを活用した調査結果が紹介されていたりもします。 ↩
-
異論は認めます。ただ、2007年におけるiPhoneの登場と、それに続くスマートフォンの普及は、インターネット検索の「カジュアル化」をもたらしたと考えます(その結果として、インターネット検索の世界におけるGeek要素は薄まった...はず)。 ↩