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Rancher v2.4.0の主要機能を触ってみた

Last updated at Posted at 2020-03-31

本記事は、Rancher v2.4.0で追加した主要な機能の紹介及び検証を纏めたものです。
クラスターのセキュリティスキャン(CIS Kubernetes Benchmark)
k3sクラスターのメンテナンス機能
ゼロダウンタイムのクラスターのアップグレード
クラスターのバックアップとロールバックの機能増強
helm3のサポート
その他

クラスターのセキュリティスキャン

Kubernetesクラスターに対して、CIS Kubernetes Benchmarkの(チェックリスト)でスキャン実行とレポート生成の機能です。

概要

主なの機能

・クラスターのスキャンの実行
・定期スキャンのスケジュールの設定
・セキュリティレポートの生成と結果通知
・Rancher APIのサポート

制約事項

・v2.3.x以前のバージョンは、CIS Benchmarkチェックマニュアル手順でのチェックとなります。
・v2.4.0の時点は、RKEクラスターのみの対応となります。(import、custom、マネージドk8sクラスター方式で作成されたクラスターは未対応)
・v2.4.0の時点は、CIS_Kubernetes_Benchmark_v1.4.0(Kubernetes 1.13+のクラスターを対象)を対応しております。
・RKEディストリビューションの仕様(k8sコンポネートをコンテナで動くなど)により、一部CIS Benchmarkチェック項目が実施不要(N/A)となっています。

検証Goal

■やること:
 クラスターに対して、スキャン実行とスキャン結果確認を行う
 クラスターに対して、定期スキャン実行スケジュールとスキャン結果通知を設定

■前提条件:
Rancherサーバー上に、スキャン対象のRKEクラスターを用意されたこと(構築手順はこちらをご参照ください)

スキャン実行とスキャン結果確認

・[Cluster名]→[Tools]→[CIS Scans]メニューをクリックし、CIS Scans画面に遷移させ、[Run Scan]ボタンをクリックします。
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・CIS Scansのプロファイル選択画面に、下記のようにプロファイルを設定して、[Run]ボタンをクリックします。
 ※v2.4.0の現時点に、選択できるプロファイルは下記となります。
 RKE-CIS-1.4 permissive :一部項目をスキップで実行
 RKE-CIS-1.4 hardened :スキップなしで実行
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・スキャン実行完了まで待ちます。
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・スキャン履歴名をクリックし、スキャン結果確認画面に遷移させます。
 結果種類は下記の4種類となります。
「Pass」:成功
「Fail」:失敗(Descriptionに対策が書かれてる)
「N/A」:非該当 ✳︎1
「Skipped」:スキップ ✳︎2
  ✳︎1 RKE固有仕様(k8sコンポネートをコンテナで動くなど)により、実施不要な項目。詳細はこちらをご参照ください。
  ✳︎2 トレードオフの結果(AlwaysPullImagesにより、帯域幅消費が増えるなど)により、遵守しない方がよい項目。詳細はこちらをご参照ください。

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・スキャン結果確認画面に、[Download]ボタンをクリックし、スキャン結果をダウンロードします。
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スキャン結果が「Fail」の項目の対応

・スキャン結果に、「Fail」の項目がある場合、「Description」の対策に従い、クラスターの設定変更を行うことで解消できます。
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・対策に従い、クラスターのPodSecurityPolicy設定変更を行います。
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・クラスターの設定変更後、スキャンを再度実行し、スキャン結果が「Pass」になったことを確認します。
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スキャン定期実行、スキャン結果通知を設定

・CIS Scans画面に、[Add Schedule]ボタンをクリックし、クラスター編集画面に遷移させます。
・クラスター編集画面のCIS Scans設定項目のところに、スキャン用プロファイル、スケジュール、保存世帯数を設定して、クラスター変更内容を保存します。
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・CIS Scans画面に、[Add Alert]ボタンをクリックし、スキャン結果のアラーム通知設定画面に遷移させます。
・アラーム通知設定画面に、Slackやメールなどの通知先を設定して、設定内容を保存します。
 通知先の作成手順は、こちらをご参照ください。
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・スケジュールに指定している時間になったら、通知先のSlackにスキャン実行結果が届いたこと、を確認します。
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k3sクラスターのメンテナンス機能

Rancherは、インポートしたk3sクラスターをk3sとして認識できます。また、リモートでk3sクラスターをメンテナンスできるようになりました。
※アップグレード為のコントローラーは、k3sのローカルに動きます。

概要

主な機能

Rancherから、リモートでk3sクラスターのアップグレード処理を行う
Rancherから、k3sクラスターの設定情報などを参照する

制約事項

・v2.4.0時点は、クラスターのアップグレードのみで、クラスターの設定情報がまだ変更できない

検証Goal

■やること:
 k3sクラスターを作成して、Rancherにインポート
 インポートしたk3sクラスターをアップグレード

k3sクラスターを作成して、Rancherにインポート

・k3sクラスターを用意します
 k3sクラスターの構築手順はこちらをご参照ください。
 k3sクラスターは、下記の構成(master:1台、worker:3台)となります。
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・Rancherで、import方式でクラスターを作成し、k3sクラスター上にimport用のkubectlコマンドを実行します。
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・インポートしたk3sを確認します。
 <クラスターのDashboard>
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 <クラスターのノード一覧>
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インポートしたk3sクラスターをアップグレード

・クラスターのDashboard画面に、右上の「Edit」メニューをクリックして、クラスター編集画面に遷移させます。
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・「Kubernetes Version」項目に、最新のバージョンを選択し、「Save」ボタンをクリックします。
 その他の設定項目は必要に応じて設定してください。
  「Drain Control Plane Nodes」項目:アップグレード前にDrain実施要否
  「Drain Worker Nodes」項目:アップグレード前にDrain実施要否
  「Control Plane Concurrency」項目:同時にアップデート可能のNode数(ローリングアップデートのバッチサイズ)
  「Worker Concurrency」項目:同時にアップデート可能のNode数(ローリングアップデートのバッチサイズ)
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・クラスターがUpgradingモードに入り、しばらく待つと、クラスターが選択したバージョンに更新されます。
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ゼロダウンタイムのクラスターのアップグレード

v2.3以前のバージョンでのクラスターアップグレード処理には、クラスターのノードを並行でアップデートを行う為、ダウンタイムが発生します。(※kube-proxy変更によるiptables書き換えにより、対象ノード上のPODに一時アクセスできないなどが原因)
v2.4からは、ノードのローリングアップデータ方式を採用し、アプリケーションを中断せず、Kubernetesのクラスタとノードをアップグレードすることができるようになりました。

概要

主なの機能

各ノードのアップデータ方式の変更
・etcdノード (変更なし)

v2.3 v2.4
1つずつ 1つずつ

・control Planeノード 

v2.3 v2.4
並行(max 50) 指定したサイズでローリングアップデータ

・workerノード 

v2.3 v2.4
並行 指定したサイズでローリングアップデータ

ノードのステータス遷移は、下記となります。
Active → Cordoned → Draining (if drain is enabled) → Drained (if drain is enabled) → Upgrading → Upgraded → Active

検証Goal

■やること:
 ローリングアップデータのバッチサイズを指定して、 control Planeノードとworkerノードのアップデータ動作を検証します。

※RKE CLIもゼロダウンタイムのクラスターのアップグレード機能が対応されておりますが、今回は、検証対象外とします。

検証用のクラスターを作成

・検証用のクラスターの作成画面に、各種類のノードプールを下記のような構成で設定します。
 クラスター構築の詳細手順はこちらをご参照ください。
 etcdノード:3台
 control Planeノード:3台
 workerノード:3台
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・後のアップグレード処理が行えるように、「Kubernetes Version」をv1.15.11に設定します。
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・「Advanced Options」の設定ところに、Workerノードの1回の最大同時アップデート数(ローリングアップデータのバッチサイズ)を設定します。
 「Maxiumum Worker Nodes Unavailable」(最大同時アップデート数):1
 「Drain nodes」(アップデート前のDrain処理要否):no
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・control Planeノードの1回の最大同時アップデート数は、「Edit as YAML」ボタンから開くyaml設定画面から設定します。
 「max_unavailable_controlplane」(最大同時アップデート数):1 ※デフォルト値のまま
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クラスターのアップグレード処理を実施

・クラスター作成後、クラスター編集画面に、「Kubernetes Version」をv1.15.11からv1.16.8に変更し、保存します。
 クラスター設定変更の詳細手順はこちらをご参照ください。
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・control Planeノードが1台ずつでアップデートされていくことを確認します。
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・workerノードが1台ずつでアップデートされていくことを確認します。
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クラスターのバックアップとロールバックの機能増強

v2.3以前のバージョンでは、etcdデータしかバックアップできなくて、クラスターのアップグレード処理を行ったら、etcdのスナップショットだけで処理前の状態に戻れないです。
v2.4.0は、k8sバージョン情報とクラスター設定情報も、etcdデータと一緒にバックアップでき、またセットでロールバックすることもできます。

概要

主なの機能

・クラスターのバックアップ機能
 「etcdデータ」 + 「k8sバージョン情報」 + 「クラスター設定情報」をセットでバックアップ
・クラスターのロールバック機能
 下記の3つの方式でロールバックを行うことができる
  「etcdデータ」のみのロールバック
  「etcdデータ」 + 「k8sバージョン情報」のロールバック
  「etcdデータ」 + 「k8sバージョン情報」 + 「クラスター設定情報」のロールバック

検証Goal

■やること:
・検証用クラスターを作成します。
・検証用クラスターに変更を加えます
・「etcdデータ」 + 「k8sバージョン情報」 + 「クラスター設定情報」のロールバック方式を検証します。

検証用のクラスターを作成

・後のアップグレード処理が行えるように、検証用のクラスターの作成画面に、「Kubernetes Version」をv1.15.11に設定します。
 クラスター構築の詳細手順はこちらをご参照ください。
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・作成したクラスターの各ステータスは下記となります。
<ノード情報>:1ノードのみ
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<Kubernetes Version>:v1.15.11
<1ノードあたり最大のPOD数>:110
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<defaultプロジェクト配下のワークロード>:なし
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検証用クラスターに変更を加え

・「etcdデータ」に更新を加える為、任意のプロジェクトに1つのワークロードを作成します。
 ワークロード作成の詳細手順はこちらをご参照ください。
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・クラスターのアップグレードと、クラスター設定変更処理を同時に行います。
 クラスター設定変更の詳細手順はこちらをご参照ください。
 「k8sバージョン情報」に更新を加える為、クラスター編集画面に、「Kubernetes Version」をv1.15.11からv1.16.8に変更します。
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 「クラスター設定情報」に更新を加える為、「Edit as YAML」ボタンから開くyaml設定画面に、kubelet設定のところに、「1ノードあたり最大POD数:250」のパラメータを追加します。
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・クラスター設定変更後に、「k8sバージョン情報」と「クラスター設定情報」が更新されたことがDashboard画面から確認します。
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ロールバックを実施

・ロールバックの選択画面に、下記のように、スナップショットとロールバック方式を選択して、「Restore」ボタン押下でロールバックを実施します。
 ロールバックの詳細手順はこちらをご参照ください。
 「Available Snapshots」(スナップショット):v1.15.11-rancher1-3 ※クラスター構築直後に自動生成したスナップショット
 「Restoration Type」(ロールバック方式):「etcd, Kubernetes Version and cluster config」 ※全てをロールバックする方式
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ロールバックした後の結果検証

・「etcdデータ」が、クラスター構築直後の状態に戻ったこと確認します。
<defaultプロジェクト配下のワークロード>:なし
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・「k8sバージョン情報」が、クラスター構築直後の状態に戻ったこと確認します。
<1ノードあたり最大のPOD数>:110
・「クラスター設定情報」が、クラスター構築直後の状態に戻ったこと確認します。
<Kubernetes Version>:v1.15.11
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helm3のサポート

RancherのCatalog機能のベースとなっているHelmのバージョンについて、v2.4からは、既存のhelm2以外に、helm3もサポート開始です。

概要

主なの機能

・helmのChartをhelm2/helm3バージョン指定で、Catalogにアプリを追加できる
・helm3バージョン指定で追加したCatalogアプリは、helm3でライフサイクル管理(インストール、アップグレードなど)される
・helm2バージョン指定で追加したCatalogアプリは、helm2でライフサイクル管理(インストール、アップグレードなど)される

制約事項

・v2.3.x以前のバージョンに追加したCatalogアプリについて、v.2.4.0にバージョンアップしても、helm2バージョンのままで、管理されます。

検証Goal

■やること:
 helmのChartをhelm3バージョン指定で、Catalogに追加します。
 Catalog機能で、追加したCatalogアプリをクラスターにインストール、アップグレードします。

helmのChartをCatalogに追加

・Catalog追加画面に、検証用のhelmのChart情報を設定します。
 Catalog追加の詳細手順はこちらをご参照ください。
 「Helm Version」:Helm v3 ※helm3バージョン指定
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Catalogアプリをインストールとアップグレード

・Catalog画面に、先ほど追加したCatalogアプリを選択して、アプリバージョン=0.9でインストールします。
 Catalogアプリのインストールの詳細手順はこちらをご参照ください。
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・インストールしたCatalogアプリを選択して、アップグレード(バージョン:0.9→1.0)します。※操作手順はv2.3以前のバージョンと変わらないです
 Catalogアプリのアップグレードの詳細手順はこちらをご参照ください。
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その他

一部な機能だけを説明と検証させて頂きました。残りの下記のv2.4追加機能も簡単に紹介せていただきます。

スケーラビリティの改善

v2.4はスケーラビリティが大幅に改善されてました。最大に2000クラスターと100000ノードを管理できるようになりました。
今後、マルチクラウド上のクラスター管理や、各エッジローケーション上の大量な小さいラスターを管理する場合には活用できます。

k3sベースのrancherのインストール方式

既存の「RKEクラスター」と「Dockerコンテナー」ベースのインストール方式以外に、k3sクラスターベースのrancherのインストール方式もサポート開始です。
メリットとしては、下記となります。
・構築作業は、RKEクラスターベースの構築より、簡単になりました。
・k3sのメモリ使用量は、Vanilla Kubernetesの半分ぐらいになり、またHAクラスター構成は、2ノードからも可能になりました。
・クラスターのストレージは、etcd以外にPostgreSQL、MySQLなどもサポートしておりますので、既にDB環境がお持ちの場合は、そのまま活用できます。

アーキテクチャ構成は下記となります。
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詳細のドキュメントはこちらをご参照ください。

Shibboleth認証プロバイダーの対応

Shibboleth認証プロバイダー経由で、Rancherにログインすることが可能になりました。
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詳細のドキュメントはこちらをご参照ください。

ユーザーグループへのグローバルロール権限の付与

ユーザーグループにグローバルロール権限を付与することが可能になりました。
※この機能は、ユーザーグループの作成管理機能を持つ認証プロバイダーに限って、利用できます。
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詳細のドキュメントはこちらをご参照ください。

サポート対象OS追加

下記のOSがサポート対象となりました。
・SLES 12 SP5(SUSE Linux Enterprise Server 12 SP5)
・Oracle Linux 7.7

OPA GateKeeper統合(体験版)、新しい管理UI(体験版)

★体験版の為、今後仕様大きく変更される可能性が高いです。★

OPA GateKeeperは、Kubernetes環境におけるポリシの適用とガバナンス強化を支援するCNCF配下のOSSプロジェクトです。
V2.4に統合され、クラスターに対しての制約テンプレート定義と制約定義を、UIから管理できるようになりました。

・「Try Dashboard」ボタン押下で、新しい管理UIに遷移させます。
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・OPA GateKeeperの管理メニューは、左側にあります。
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・コンテナーイメージのリポジトリなどの制約テンプレートをUIから管理できます。
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おわり

V2.4.0の主要な機能を説明と検証させて頂きました。詳細な変更情報は、リリースノートをご参照ください。

今後、エッジ向けの大量なクラスターをグループ化して管理する機能や、Rioとの統合機能は、新しいバージョンでリリースされていきます。

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