はじめに
SESは悪の権化!絶対にやるな!入ったら死ぬぞ!
という記事や意見が散見されますが、この記事はそんなSES業界をポジるわけでもネガるわけでもなく、なるべく中立な目線から記載したものになります。
SES業界ってどんなところなんだろう、と悩んでいるという方はぜひ一読いただきたい内容かなと思います。
ちなみにアフィリエイトとかなにかを喧伝するような記事ではないのでご安心ください!
筆者のこと
- SES歴6年目のAWS/インフラエンジニア
- 時々フロントやバックエンドもやってたりします
- 最近はPLとかのポジションに就いたりしてマネジメントもやってたりします
SES業界とは
有り体に言うと、クライアントが抱える案件に参画して案件推進を支援することを主業務としている業界です。
実際に行う支援の業務内容は案件ごと多岐にわたりますが、一般には以下のような業務を担当します。
- プロパー(クライアントの社員)の作業の手伝い
- 各種コーディング
- APIの設計や仕様書の作成
- 設計書面の作成
- 環境の構築
etc etc...
つまり、案件に参画しているエンジニアの一人として、プロダクトのリリースまでを頑張ってやっていこうね!
というのが主目的であり、我々SESエンジニアが行う業務となります。
また、案件がハイクラスの物になってくると以下のような業務を行う案件も出てきます。
- 要件定義や基本設計などを主導で対応する
- 各種技術選定の実施
- 顧客への技術的な説明やスケジュール調整含めた顧客折衝
- 各ステークホルダーの進捗管理
- 他メンバーの作業進捗管理、コードレビュー、技術指導
ここまで来るとさながらPLやPMといった業務領域に入ってきますが、
こういった経験をいろいろな案件で沢山積めることもSESの魅力の一つだったりします。
勘違いしやすいこと
「SESはエンジニアじゃない!」「そもそもSES企業は派遣企業であってIT企業ではない!」などと言う人が居ますが基本的には誤り です。
おおよそ普通のSES企業で働く方はエンジニアで、おおよそ普通のSES企業はIT企業です。
それも、SESではいろいろな案件を渡り歩いていくことから、エンジニアとして生きていく上で必要な知識やスキルを効率的に身につけることができる 、ある意味で一番エンジニアをしている業種とも言えるかもしれません。
いかんせん様々な案件に入っていかなければ食っていけないという構造をしていることもあり、資格勉強や効率的なスキルの向上などが必要になってきますので。
ただ、「SES企業は派遣企業であってIT企業ではない!」という意見については一理あります 。
そもそも大前提として、SESは法律上や契約上は派遣ではなく準委任や委任形式の企業が大多数のはずなので、派遣ではないです。
とはいえ実態としては派遣に近い(もしくはほとんど一緒)働き方を要求してくる案件とその現場もあったりするので、結果としては認めざるを得ない部分があります。
ですがもしも「SES企業は派遣企業であってIT企業ではない!」の「IT企業」がいわゆる自社サービスを作っていたり運用していたりする会社のみを指すのであればそれは認識が誤っています。
それであればSIerや請負開発を専門としている会社もIT企業と呼べなくなってしまいますからね。
なので私はSES企業もIT企業の一つと考えています。ここは人それぞれかもしれないですね。
SESに入ると何がいいの?
SESの強みは大まかに以下のとおりです。
- 単一の会社に所属しつつ複数の案件を経験できる
- 案件が選べる会社であれば自分が望むようなキャリアパスを描ける
- 面倒な人間関係やしがらみが無い
- 単価/稼働という概念があるため無茶な残業は発生しない
◯単一の会社に所属しつつ複数の案件を経験できる
これは文字通り、単一のSESの企業に所属しながらいろいろな経験を積めることがメリットその1です。
単一のプロダクト開発をやっている企業だと、もし仮にやっている業務や作成しているプロダクトに魅力を失ってしまったとしても別の会社に転職しない限り業務内容や扱う技術を変えることはなかなか難しいです。
ですがSESなら、別にやりたことが出来た場合は資格取得等で下準備をすることで、別の技術体系へ移行することが可能です。
例えばJAVAからGoに移行したり、C++からSwiftやKotlinに移行したり。
極端な話、開発からインフラに移行して、そこから更にフルスタックやSREに転向することも可能です。
◯案件が選べる会社であれば自分が望むようなキャリアパスを描ける
これは上記に関連しますが、自分のやりたいスキルセットを作成しやすいというのもメリットです。
例えばLaravelのスキルを一気に集中して積みたいとしたら、Laravelを扱う案件のみを集中して数年やるなどが可能です。
また、繰り返しになってしまいますが新しいことにチャレンジしたいから案件を変えて別の系統に移行するなんてことも可能です。
それと、このような理由から自社開発や請負だとどうしても発生してしまう「スキルセットの単一化/固着化」を防ぎやすいこともメリットかもしれないですね。
◯面倒な人間関係やしがらみが無い
これは人によってはデメリットにもなるかもしれませんが、会社に対する帰属意識が必要ないため自分本位で仕事がしやすいということもメリットに挙げられるかなと思います。
いわゆる自社オフィスの存在しない企業が多い業態なので、毎日同期や同じ部署の社員の顔を見たりする必要がなかったり、やりたくもない会社の飲み会に参加させられる…みたいなことも基本ないと思います。
◯単価/稼働という概念があるため無茶な残業は発生しない(はず…)
SESエンジニアは、単価(つまり月ごとの契約金)と精算幅という概念があります。
これは「毎月120時間~160時間の間で稼働してくれたら単価を満額支払います」という契約です。
おそらく大多数のSES企業がこの形式でクライアントと稼働に関して契約を結んでいると思います。
なので大多数のSESエンジニアはこの精算幅に収まる範囲で業務を行っています。
逆に言えば、この幅を超えて稼働させると超過扱いとなるので、単価とは別に割高の支払いが発生します。
なのでクライアントとしては無駄な料金の支払いを防ぎたいから残業をさせない、というスタンスを取っていることが非常に多いです。
つまり稼働時間の制限や成約があるため基本的に無茶苦茶な稼働が発生しづらい環境になる、ということです。
…概ねは。
火のないところに煙は立たない
とはいえインターネットにSESの良くないところや悪評が大量にあるのも、また事実です。
これらはすべて事実無根の悪評です! と一蹴したいところなのですが、
実態としては一部は紛れもなく事実 です。
原因は、悪質なSES企業がまだまだしぶとく生き残っているからです。
薄利多売でエンジニアを売り飛ばし良識のかけらもないような方法で金を稼ぐ、
まさしく唾棄すべきような会社がSESには何故か存在しているからです。
もしもそういった企業に所属してしまった場合、まさしくネットで見たような最悪の状況になりかねません。
- 想定していた業務をやらせてもらえない
- 炎上案件へぶち込まれた上に案件の変更ができない
- 残業がありえないほど発生する
- 賃金が低すぎる
- 僻地に飛ばされる
実際に私も、過去のいた会社で上記のような経験をしたことがあります。
どうしてこういう企業が存在するのか
基本的にはブラック企業、つまり法令に違反している企業でよくある話です。
こういったブラック企業は
- SESエンジニアをとにかく安い単価で
- 法令を遵守しているか解らないクライアントの案件に放り込んで
- 雑用や時間外労働を重ねさせて
- クライアントから受け取った単価から大多数を掠め取り
- 残った僅かな金額を給与として支払う
という悪魔のような商売をしています。
そしてこういった悪質なSES企業においては、所属するエンジニアには高度なIT知識が必要なく、
単価が安くてもとにかく適当な案件に放り込めたらそれだけで黒字という構造をしているので、
未経験や知識の浅いエンジニアを採用しては使い捨てる傾向にあります。
こういった事情から、ブラックSES企業がまだまだ生き残っているのです。
ではどういう企業がSESとして良い企業なのか
基本的には以下のような企業が良いと思います。
- 案件選択制
- 想定される案件などを開示してくれる会社
- 未経験はお断り、経験者のみを募集する会社
- 単価(もしくは年収)をきちんと公開してくれる会社
- 評価制度が明白な内容でしっかりしていて評価理由が開示されている会社
- もしくはいい意味で評価制度が無い会社
※自社評価が年収に連動せず、顧客の評価や案件の単価で年収が決まる会社など
- もしくはいい意味で評価制度が無い会社
どういう企業がSESとしてダメな企業か
基本的には以下のような企業は避けるべきかと思います。
- SNSで意識が高いキラキラ系の発信をしているが、会社に関しての発信は皆無
- 未経験大募集!誰でもOK!みたいな募集の会社
- 手厚い研修したあとは自社提携先に入ってもらいます!みたいな会社
- 自分の価値や評価がわからない、分かりづらい会社
- 年収が異様に低かったり、単価が公開されなかったりする会社
- ランクごとに給与が決まっているが、昇給基準や実際に昇給している社員が不透明な会社
最後に
みなさん良く勘違いしがちですが、SESは本来エンジニア業務経験者を対象とした業態です。
厳しい言い方をしますが、SES業界はそもそもとしてある程度のベーススキルが必須な業界です。
エンジニア未経験、IT業界未経験でやるような業界では有りません。
ですが逆にある程度の経験がありスキルを持っている人からすると、
自分の望むスキルを集中して積んでキャリアパスをよりよい物に組み立てあげることができる業界でもあります。
またSES業界の人材は流動的な環境であることからサクッとスキルを積み上げて、自社開発やフリーランスに転向する方も非常に多いです。
前述した通り、SES業界は確かに悪評が立ちやすい業界です。
ですがきちんと情報収集をして、スキルを積んだ上でチャレンジするのであればこの上なく成長の機会の多い業界でもあります。
もし興味が湧いたらぜひともチャレンジしてみてはいかがでしょうか。