はじめに
2015/11/26, 27に開催された「DOCOMO R&D Open House 2015」に、2日目(11/27)のみ参加してきました。
http://docomo-rd-openhouse.jp/
その中で行われた3つの講演についてまとめてみました。
専門がソフトウェアに偏っているため、持ち帰った情報に多少の偏りがあることをご了承ください。
「ビッグデータによる社会イノベーションの実現」
(株)NTTドコモ 栄藤 稔 氏
SlideShare: http://www.slideshare.net/minoruetoh/ss-55677875
前提
この内容は、データセンターなどのリソースを持った大手ICT企業でなくとも利用可能である。
- ハードウェアとしてのデータセンターではなく、ソフトウェアとしてのデータセンターを用いることが前提(AWSなど)。
- データセンターのソフトウェア化により、セキュリティやデータマイニングなどのシステムを瞬時に非ICT分野に展開可能。
当面のAIは、「ビッグデータ+機械学習パラダイム」である。
- 昔から理想とされているAIは、「記号接地問題」が解決できること
ドコモにおけるビッグデータ
概要
ペタバイト級のデータ+機械学習+並列計算処理をもって、様々な分野においてビジネスイノベーションやデータイノベーションをもたらす
事例
- Twitterにおけるツイートから通信障害を検知する
- 小さな振る舞いから、重大な障害を予測することができる
- ブレイクするお笑い芸人を予測する
- フォロワー(いわゆるミーハー)ではなく、イノベーター(その道に詳しい人、能動的に情報を取りに行く人)に注目されている芸人を抽出する
- サービス終了の判断材料とする
- 翻訳
- 「ルー大柴変換」(言語構造を合わせてから、単語単位の整合を機械学習にて行う)
- IoT
- 「儲かるモデルを構築する」という観点では、ネットワークやデバイスよりも膨大なデータが重要であると考えられる
ポイント
- **「極低頻度の異様な振舞い」**の把握
- ニッチなニーズの開拓や、データの悪用の検出などに役立つ
- データのキュレーション(解釈)ができるIT人材を会社のど真ん中に置く
- 外部にキュレーションを委託すると「夏にサンダルが、冬にブーツが売れる」といった、誰でも納得できるような解析に陥りやすい
- キュレーションと経営判断のリンクが重要
- 大事なのは、技術をどう使うか
- 最先端の技術は必要ない、枯れた技術を最適に使い切る
- ドコモでは、データの量で勝負する
イノベーション実現のためのヒント
- セキュリティ、ロボティクス、メディア理解は要素技術分野として有望?
- 製造業、農業、医療などのICT化による伸びしろは大きい(IoTと親和性が高そう)
- AIは産業の最適化に貢献できそう
- 故障予測、産業最適化、生産調整など
感想
- 同じビッグデータを扱うのにも、どう解釈するかで得られる情報が変わってきそうだと思いました。ビッグデータに限らず、何を使うか以上にそれをどう使うかが大事であると考えさせられました。
- データのキュレーションができる人間が会社の内部にいると、キュレーションの結果を会社の経営に直結できるという大きな強みができると感じました。
「DOCOMO 5G toward 2020 and beyond」
(株)NTTドコモ 中村 武宏 氏
5G計画
- ITU-R
- 2020年 仕様完成
- 日本
- 2020年 オリンピックを目処に先駆け導入
- 2018年頃 先駆け導入に向けて仕様完成の必要あり
- 5G+
- 5Gのサブセット
- 202x年 導入予定
5G先駆け導入に向けて
サービス開発
技術だけでなくend-to-endのサービス
- IoT
- クリティカルコミュニケーション
ニーズ(needs)よりシーズ(seeds)
- 何をお客様に提供したいか(できるか)
- ヒアリングしても普遍的なアイデアしか出てこないことが多々ある
- リーズナブルにぶっ飛んだ発想が重要
- アイデアソンやハッカソンにより共創
- プロモーションビデオ
- VR, ARの技術を取り込んだHMDでオリンピック観戦
現在の取り組み
- シミュレータやマッシブアンテナなどを用いて伝送実験中
- 動いている車の中でも2Gbps出ているなどの結果
5Gへの誤解
- 高周波数帯のみ対応
- 既存の周波数帯も含め、100GHxまで考慮
- 多くのスモールセルが必要
- あらゆるセルに対応している
- スモールセルが必要なのはトラフィック対策が必要なエリアのみ
感想
- 5Gについて情報を収集する良いきっかけになりました。
- 発想を重視し、アイデアソンやハッカソンなどで多くの外部の人を巻き込んでいく動きに共感しました。
- IoT, VR, ARはどこに行っても話題に挙がっていると改めて感じました。ソフトウェアの観点で私も貢献できたら良いなぁと思いました。
「ロボット時代の創造」
(株)ロボ・ガレージ 高橋 智隆 氏
ロボット紹介
-
KIROBO
- 2013年、世界で初めて国際宇宙ステーションへ飛び立つ
-
EVOLTA
- Panasonic EVOLTA乾電池 CM出演
- グランドキャニオン登頂、ルマンサーキット24h連続走行など
-
Gabby
- NHK教育「英語ルーキーGabby」主役
- etc...
ロボット制作工程
- 考案・デザイン・制作・発表など全工程を一人で担当
- 設計図は使わない
- 設計図ベースだと、部品を水平・鉛直に配置してしまう
- スケッチを描いて、具体的なデザインや部品配置は作りながら決める
ロボットの未来像
小型ヒューマノイドが人間を支える
- 家電、ホームセキュリティなどと連携し、なんでもこなす
- スマートフォンがこの小型ヒューマノイドの役割を果たすことができる
ロボットの必要性
- スマートフォンの音声認識があまり使われていない
- 言葉の分からないペットに話しかける
- 重要なのは、音声認識技術ではなく生命を感じるかどうか → ロボットの出番では?
「キラーハードウェア」が時代を築く
- 過去にはウォークマン、ファミコン、iPhoneなど
- 革新的なプラットフォーム
「キラーハードウェア」の普及のために
-
RoBoHoN
- ロボット型の電話
- 電話、メール、カメラなどに加え、撮った画像を投影するプロジェクター機能も搭載
- 普及のためのデザイン
- キャラクタ
- ヒューマニティ
- サイズ
- 普及のステップ(いきなり最終系を追求しない)
- 例:電気自動車をいきなり売るのではなく、ハイブリッドカーから売る
- ニーズから発想へ
1人1台小型ロボット端末を持ち歩く未来を実現したい
最後に
- 自分の「好き」が基準
- とにかく手を動かす
- 迷ったら、ユニークな選択肢を選ぶ
感想
- 「キラーハードウェアが時代を築く」という考え方はこれまで私自身が一度も触れたことがなく、驚きました。かつ、説得力も感じました。
- キラーハードウェアの普及を助けるのはそれに付随するコンテンツなのではないか、というのが私の見解です(スーパーマリオブラザーズなど)。
- RoBoHoNのデモで、胸ポケットに小型ロボットが入っている絵面が面白かったです。
おわりに
「ニーズに応える」だけでなく「価値を創造する」ということが、これから特に重要になってくると強く感じました。
こういったイベントは刺激を受けるので、定期的に行きたいと思いました。