はじめに
.cursor/rules/*.mdc
ファイルでプロジェクト固有のルールをAIに教えられるようになってから、「これって、もしかしてコーディング規約だけじゃなくて、もっと色んな『知識』をCursorにインストールできるんじゃない?」って思い始めました。
例えば、プロジェクト管理のバイブル「PMBOK」とか、データマネジメントの教科書「DMBOK」とか。ああいうカッチリした知識体系をCursorが理解してくれたら、日々の業務がめちゃくちゃ捗るんじゃないか…?
そんな「Cursor × 専門知識体系」について、興奮が冷め上がる前に記録を残しておきます。
Cursorに「専門知識」を叩き込むって、どういうこと?
まず、おさらいですが、CursorのAIって賢いですよね。コードの提案はもちろん、チャットで質問すれば答えてくれるし、ドキュメント(@docs
)を読み込ませれば、その内容に基づいて回答してくれます。
これまでは、主に技術的なコンテキスト、例えば「このプロジェクトではこの書き方で」とか、「このAPIの仕様はこう」みたいな情報をAIに教えて、開発効率を上げてきたと思います。
でも、ちょっと待ったぁああですね。まだCursorの真価を発揮しきれていない。
もし、プロジェクト管理のベストプラクティス集であるPMBOKとか、データマネジメントに関する羅針盤となるDMBOKのような、もっと広範で体系化された「方法論」や「原則」をCursorが理解したら、単なるコードアシスタントじゃなく、専門分野における頼れる相談役にワープ進化しますよね。
なぜ「Cursor × 知識体系」がこんなにアツいのか?
私が「Cursor × 専門知識体系」の組み合わせに可能性を感じている理由は、主にこんな感じです。
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圧倒的な一貫性:
プロジェクトメンバー全員が、同じ知識ベース(PMBOKの原則とか、DMBOKの用語定義とか)に基づいてAIのサポートを受けられるようになります。これで、「あの人はこう言ってたけど、こっちの資料では…」みたいな認識のズレが減るはず! -
学習コストのショートカット:
新しいメンバーがプロジェクトに参加したとき、専門知識のキャッチアップって大変ですよね。でも、AIが基本的な知識を補ってくれたり、関連ドキュメントをサッと提示してくれたりすれば、立ち上がりがグッと早くなる(めっちゃ楽になる...!) -
うっかりミス防止のチェックリスト:
PMBOKのチェックリストやDMBOKのデータ品質基準みたいなものをAIに参照させておけば、「あ、この観点抜けてた!」っていううっかりミスを防ぐのに役立ちそうです。AIが「これ、確認しましたか?」ってリマインドしてくれるイメージ。 -
面倒なドキュメント作成からの解放:
「プロジェクト憲章のたたき台、作っといて!」「この用語の定義、DMBOKに基づいてまとめてくれる?」みたいな依頼をAIにできるようになる。定型的なドキュメント作成が楽になれば、もっと本質的な作業に集中できますよね。 -
思考の壁打ち相手、爆誕:
「今、プロジェクトがこの状況なんだけど、PMBOK的には次に何をするのが定石かな?」とか「このデータの不整合、DMBOKの観点からどうアプローチすべき?」みたいに、AIに専門的な相談ができるようになります。一人で悩む時間が減り、先輩への「今お時間いいですか」も減らせる! -
「組織の知恵」をAIで継承:
ベテランの頭の中にしかないノウハウや、過去プロジェクトの教訓。これらをMarkdownとかでドキュメント化してCursorに読み込ませれば、組織の知識がAIを通じて参照・活用しやすくなります。まさに「組織の知恵袋AI」ですね。退職者が出た時や異動時のオンボーディングにきっと役立つ。
実践編①:Cursor × PMBOK (プロジェクト管理をAIと二人三脚で!)
PMBOKって、プロジェクトマネジメントの知識体系ですよね。「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」っていう5つのプロセス群があって、それぞれで色々なドキュメントを作ったり、活動したりします。
これをCursorと組み合わせると、例えばこんなことができそうです。
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主要ドキュメントのテンプレート化&AIによる作成支援:
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プロジェクト憲章_template.md
やWBS作成ガイド.md
を.cursor/docs/
に用意。 - AIに「このテンプレートに沿って、〇〇プロジェクトのプロジェクト憲章の草案を書いて」と依頼。
- 「リスク登録簿に記載すべきリスクを、このプロジェクトの特性を踏まえて10個提案して」なんてことも。
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PMBOK原則のルール化:
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.cursor/rules/pmbok_principles.mdc
を作成。--- description: PMBOKの基本的な考え方やチェックポイントをAIに意識させる globs: "**/*.md" # プロジェクト関連のドキュメント全般 --- - 全ての計画は、ステークホルダーの期待値を明確にすることから始める。 - リスクは早期に特定し、定性的・定量的に評価し、対応策を計画する。 - コミュニケーションは計画的に行い、適切な情報を適切なタイミングで共有する。 - (以下、重要な原則をリストアップ)
- こうしておけば、関連ドキュメントを作成・レビューする際に、AIがこれらの原則を踏まえた提案や指摘をしてくれる…かもしれません!(期待大)
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実践編②:Cursor × DMBOK (データマネジメントをAIと整備!)
DMBOKは、データマネジメントの知識体系。「データガバナンス」「データ品質」「メタデータ管理」など、11の知識エリアがあります。データって本当に奥が深いですよね…。
この「Cursor × DMBOK」については、実際に私がCursorで試してみたリポジトリがありますので、具体的なファイル構成などはこちらも参考にしてみてください!
さらに、このリポジトリの内容や、CursorとDMBOKを組み合わせるアイデアについて、より詳しく解説したDeepWikiページも作成しました。初めて試してみたのですが、良い感じです!ぜひ見てみてください。
これをCursorと組み合わせると、こんな活用が考えられます。
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データ関連ドキュメントの標準化&AIによる効率化:
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ビジネス用語集_template.md
やデータ定義標準.md
を.cursor/docs/
に。 - AIに「このシステムで使われている『顧客』という用語の定義を、ビジネス用語集のフォーマットでまとめて」と依頼。
- 「このテーブルのデータ品質を向上させるためのルール案を、DMBOKのデータ品質ディメンションに基づいて5つ提案して」みたいなブレストも。
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DMBOK知識の参照ポイント化:
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.cursor/rules/dmbok_metadata.mdc
を作成。--- description: メタデータ管理に関するDMBOKの要点をAIに参照させる globs: "**/data_definitions/*.md" # データ定義関連ファイル --- - データ項目には、必ずビジネス上の意味、技術的な仕様、データオーナーを明記する。 - データリネージ(データの発生源と変換経路)を可能な限り追跡・記録する。 - (以下、メタデータ管理の重要なポイントをリストアップ)
- データ定義書を作成する際などに、AIがこれらのポイントに基づいて「この項目のデータオーナーは誰ですか?」と質問してくれたら、品質向上に繋がりそうですね!
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「Cursor × 〇〇」を実現するためのアプローチ案
じゃあ、具体的にどうやってCursorに専門知識を「インストール」するの?って思いますよね。私が今考えているのは、こんなアプローチです。
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知識のMarkdown化が第一歩:
参照させたい知識体系の要点、チェックリスト、テンプレート、用語集などを、まずはMarkdownファイル(.md
)で作成します。これがAIの養分になります。 -
.cursor/docs/
フォルダを知識ベースに:
作成したMarkdownファイルを、プロジェクトルートの.cursor/docs/
ディレクトリに格納します。これで、AIチャットで@docs
を使って、これらの知識を参照させることができます。 -
.cursor/rules/*.mdc
でAIの思考回路をチューニング:
これはまさに前の記事で解説した内容ですね!汎用的な指示だけでなく、特定の知識体系に基づいた「思考のクセ」や「アウトプットの型」をルールとして定義します。
例えば、「PMBOK流の進捗報告書なら、この項目は必須!」みたいなルールを.mdc
に書いておくイメージです。 -
AIチャットでの「対話」も大事:
AIに質問するときは、「PMBOKの観点からアドバイスが欲しいんだけど…」「DMBOKのデータ品質フレームワークで考えると、これはどう?」のように、どの知識体系に基づいて考えてほしいかを明確に伝えるのがコツな気がします。 -
小さく始めて、大きく育てる:
いきなり知識体系の全てをAIに教えようとすると大変なので、まずは一つの知識エリア、一つのドキュメントテンプレートから試してみるのが良さそうです。効果を実感しながら、徐々に範囲を広げていくのが現実的ですね。
「Cursor × 〇〇」の組み合わせを考える
PMBOKやDMBOKを例に出しましたが、この「Cursor × 専門知識体系」の組み合わせって、本当に色々な分野で応用できると思います。
- Cursor × ITIL: ITサービスマネジメントのプロセス改善に。
- Cursor × デザイン思考: 新規事業のアイデア出しや課題解決の壁打ち相手に。
- Cursor × マーケティングフレームワーク: SWOT分析や4P分析のフレームワークをAIに教えて、戦略立案をサポート。
- Cursor × 各種法令・ガイドライン: 個人情報保護法や業界特有の規制について、AIに要点を参照させてチェック漏れを防ぐ。
専門分野や取り組んでいる課題に合わせて、色々な「Cursor × 〇〇」が考えられるはずです。
おわりに
どうでしたかね。専門業務を爆速化する未来、見えましたかね。笑
私は最近新しくデータマネジメントに関する業務に携わっています。分厚いDMBOKを辞書がてら、学びながらあれこれ試行錯誤していますが、学び方自体をアップデートする良い機会だと思っています。
従来なら本を読んで時間をかけて自分の血肉に変えていくプロセスしかありませんでしたが、今のAIネイティブの時代、抜本的に変える必要があるなぁと。壁打ちの試行数や検証回数によって、これまで以上に爆速で知識が体系化されている実感もあるため、35歳で未経験の領域ですが、楽しみながら一つずつ身につけていきたいなと思います!