はじめに
みなさん、こんにちは。昨今、グローバルでは単なるクラウドの活用から一歩先に進み、クラウドのビジネス価値を最大化するための取り組みである「FinOps」の実践が当たり前になりつつあります。また、日本においても徐々にFinOpsの関心が高まっています。
今回は、The Linux Foundationの公式プロジェクトのひとつであり、FinOpsの普及や標準化をグローバルでリードする「FinOps Foundation」、および「FinOps Foundation Japan Chapter」について紹介します。
FinOps Foundationとは
FinOps Foundation(F2)は、ベストプラクティス、教育、標準を通じて、FinOpsの分野を推進することに注力しているLinux Foundationのプログラムであり、Cloud Native Computing Foundation(CNCF)などの姉妹プロジェクトとも連携して活動を推進しています。本記事では、次の図に示す4つのカテゴリーに沿ってもう少し補足をしていきたいと思います。
出典: Intro to FinOps slides by FinOps Foundation (CC BY 4.0)
コネクションとコミュニティー
FinOps Foundationは、2024年12月時点でグローバル15,000社以上の企業から61,000人以上が参加する活気のあるコミュニティーであり、次のようなコミュニケーション手段を通じて、グローバルなメンバー同士で技術的な質疑応答や特定のテーマに沿った議論などが行われています。
- FinOps Community Slack: メンバー全員が参加する情報交換の場
- Community Call: 地域ごとのメンバー同士による情報交換の場(隔月)
- Virtual Summit: APACなどの複数地域のメンバーによる情報交換の場(不定期)
- FinOps X: グローバルのメンバーが集まる情報交換の場(年次)
なお、最近のグローバルコミュニティーにおけるホットなテーマとしては「FinOps for AI」、「Cloud Sustainability」、「FinOps Scopes」などが挙げられます。国内のFinOps事例では、単純なクラウドコストの可視化や最適化といったFinOpsの中でも基本となる部分の事例紹介が現時点では多い印象ですが、コミュニティー界隈ではもう一歩二歩先に進んだ次元で、より複雑な課題に対する議論が進められている印象です。
出典: FinOps Foundation Overview by FinOps Foundation (CC BY 4.0)
教育と認定
FinOps Foundationは、さまざまなトレーニングコンテンツと認定資格を提供しており、これらのコンテンツを通じてFinOpsに関する知識を深めることができるようになっています。なお、2024年8月時点におけるFinOps認定資格の保有者はグローバルで10,000人以上いますが、日本では約225人と正直かなりマイナーな資格の部類と言わざる負えません。
とはいえ、資格試験は申し込みから1年間の有効期間があり、1回の支払いで2回までリトライできる(つまり3回試験を受けられる)親切仕様です。また、イベントの参加特典やサイバーマンデーの際などに割引クーポンが発行されることもありますので、こういった機会に運よく遭遇した場合はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
個人的には、まず無償の「Introduction to FinOps(FinOps入門)」と「Introduction to FOCUS(FOCUS入門)」からはじめ、FinOps Certified Practitionerの取得をまずはめざしていただくことをお勧めします。
出典: Intro to FinOps slides by FinOps Foundation (CC BY 4.0)
ベストプラクティスと標準
FinOps Foundationでは、FinOpsのデファクト手法である「FinOpsフレームワーク」の策定をはじめ、FinOpsを進める上で有用となるさまざまな「FinOpsアセット」、組織へFinOpsを導入する際に参考となる「FinOpsの採用」をはじめとする各種ホワイトペーパー、「FinOpsの現状」に関する市場調査結果などの開発をサポートしています。
現時点ではコンテンツのほとんどが英語版のみとなっていますが、FinOpsを進める上でとても有意義な情報が集まっていますのでぜひ参考にしていただければと思います。
出典: Framework Overview by FinOps Foundation (CC BY 4.0)
FOCUS
FinOps Open Cost and Usage Specification(FOCUS)は、FinOps Foundation主導で各クラウドプロバイダーが協力して作り上げたクラウドのコストと使用量の課金データに関するオープンソースの技術仕様で、クラウドプロバイダー各社のクラウド請求書のデータフォーマットを統一規格で扱えるようにするものです。
主要なクラウドプロバイダーはすでに対応しており、今後は主要なSaaSプロバイダーなどにも広がっていくことが見込まれています。まだ過渡期ということもあり、ほとんどの方は現時点で気にする必要はありませんがぜひ今後の動向には注目しておいてください。
出典: What is FOCUS? by FinOps Foundation (CC BY 4.0)
FinOps Foundation Japan Chapterとは
FinOpsの国内普及をさらに加速させるため、FinOps Foundaitonの各種コンテンツの日本語化をリードするとともに、日本国内のコミュニティメンバー同士でもっと気軽に日本語を使って情報交換を行える場所を作りたい、ということで2024年11月に活動を開始しました。
画像引用: FinOps Foundation Japan Chapter
FinOps Foundation Japan Chapterの活動状況
FinOps Foundationのメンバー企業、国内のFinOps実践者などによって運営されるJapan Chapterでは、主に次のような活動を行っています。
- FinOpsの普及促進のためのミートアップの開催
- FinOps Foundationの各種コンテンツの日本語化の推進
- 各種メディアを通じたFinOpsに関する情報発信
ミートアップの開催実績
Japan Chapter設立前も含めてこれまでに3回のJapan FinOps Meetupイベントを開催し、FinOpsに関するプレゼンテーションやディスカッション、参加者とのネットワーキングを行ってきました。
主なプレゼン内容
- 国内ユーザー企業によるFinOps事例の紹介
- FinOps Xなどの大型イベントで発表された最新動向や事例の紹介
- FinOps Foundation幹部による基調講演など
回次 | 開催日 | 会場 |
---|---|---|
第1回 | 2023年12月13日(水) | メルカリ六本木オフィス |
第2回 | 2024年08月26日(月) | メルカリ六本木オフィス |
第3回 | 2024年12月13日(金) | ソニー・インタラクティブエンタテインメント |
現在は大型カンファレンスの直後などの不定期での開催となっておりますが、将来的には四半期ごとに開催をしていきたいと考えています。最新のイベント情報についてはFinOps Foundaiton Japan Chapterサイトなどでも発信をしていきますのでぜひチェックしてみてください。
日本語コンテンツの拡充状況
FinOpsフレームワークポスターなどの最優先コンテンツの日本語化から着手しはじめたばかりの状況です。今後は、教育コンテンツや用語、フレームワークなどの活用頻度の高いコンテンツを優先的に日本語化していきたいと考えています。
出典: Framework Overview by FinOps Foundation (CC BY 4.0)
各種メディアを通じた情報発信
現時点ではコミュニティーメンバー個人の活動によるところが大きいですが、WebメディアなどへのFinOpsの最新動向や技術ノウハウなどの情報発信を通じて、FinOpsの普及促進へ貢献しています。
最後に
ということで、The Linux Foundationの公式プロジェクトのひとつであり、FinOpsの普及や標準化をグローバルでリードする「FinOps Foundation」、および「FinOps Foundation Japan Chapter」についてのご紹介でした。
国内ではFinOpsの知名度は依然として低く、コストを最適化するFinOpsの継続的な活動は、エンジニアから時間を奪うだけの存在だと考える現場もいまだに多い状況です。しかし、グローバルからはやや遅れてではあるものの近い将来、日本でも盛り上がりを見せてくるのではないかと推測しています。
もしFinOpsへ興味を持たれた方がおられましたら、ぜひこの機会にコミュニティー活動への参加を検討してみてはいかがでしょうか。日本のFinOps業界をぜひ一緒に盛り上げていきましょう!
- The Linux FoundationおよびCloud Native Computing Foundationは、The Linux Foundationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
- その他、本記事に記述してある会社名、製品名は、各社の登録商品または商標です。