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有限群の指標論(第一章)のメモ

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% based on [Qiita で集合や添字の数式を書こうとしてブチギれるその前に](https://qiita.com/BlueRayi/items/7965798ba1127d269ebb)
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はじめに

本『Character Theory of Finite Groups』(Isaacs, I.Martin)を読んだときのメモです。

1. Algebras, modules, and representations

この本では関数や作用が一般の表し方と異なり、$fg(x)$でなく、$(x)gf$と表すことがある。

体上の代数(Algebra)

体$F$に対し、$A$が$F$-代数であるとは、$A$が$F$-ベクトル空間であり、かつ、$A$が非自明な環で、1
さらに、$c\in F,\ a,b\in A$に対し、

  • $c(ab)=(ca)b=a(cb)$

が成り立つことである。

また、$F$-代数$A,B$に対し、$\phi:A\to B$が$F$-代数の準同型であるとは、
$\phi$が$F$-線形写像であり、かつ、環準同型であることである。

F上の代数の例

$A$を$F$-代数とする。

  • $I$を$A$の右または左イデアルとすると、$A$は1を含むため、$I$は$A$の部分空間となり、$A/I$は$F$-ベクトル空間となる。$I$が両側イデアルであるとき、$A/I$は$F$-代数となる。
  • $F\cdot 1$は$F$-代数である。
  • 体$F$上の行列環$M_n(F)$は$F$-代数である。
  • $V$を$F$-ベクトル空間とすると、$V$の線形写像全体の集合$\text{End}(V)$は$F$-代数である。
  • 体$F$上の多項式環$F[x]$は$F$-代数である。
  • $G$を有限群とすると、$F[G] = \set{ \sum_{g\in G} a_gg | a_g\in F }$は$F$-代数で、群代数と呼ばれる。(つまり、$G$の元を基底とする)

代数上の加群(Module)

$A$が$F$-代数で、$V$が$A$-加群であるとは、$V$が有限次元$F$-ベクトル空間であり、$A$が$V$にある種双線型的に作用するということ。正しくは、$c\in F,\ a,b\in A,\ v,w\in V$に対し、以下が成り立つことである。

  • $(v+w)\cdot a=v\cdot a+w\cdot a$
  • $v\cdot(a+b)=v\cdot a+v\cdot b$
  • $(v\cdot a)\cdot b=v\cdot(ab)$
  • $c(v\cdot a)=(cv)\cdot a=v\cdot(ca)$
  • $v\cdot 1=v$

また、$A$-加群$V,W$に対し、$\phi:V\to W$が$A$-加群の準同型であるとは、$\phi$が$F$-線形写像であり、作用について保存することである。(つまり、$(v)\phi\cdot a = (v\cdot a)\phi$) 2

次の記法を導入しておく。

  • $a\in A$に対し、$a_V:V\to V$を$v\mapsto v\cdot a$で定義する。($A$-加群の定義より、$a_V$は$F$-線形写像である)
  • また、$a_V$をすべて集めたものを$A_V\subset \text{End}(V)$とする。

代数上の加群の例

  • $A \subset \text{End}(V)$が$F$-代数であるとき、$V$は$A$-加群である。
  • $\text{Hom}_A(V,V)$は$F$-代数であり、$\text{End}(V)$内での$A_V$の中心化群である。(なぜならば、$f\in \text{End}(V)$3 が任意の$a_V\in A_V$4 と可換$\Longleftrightarrow ((v)f) \cdot a = (v \cdot a)f \Longleftrightarrow f\in \text{Hom}_A(V,V)$であるから)。$\text{Hom}_A(V,V)$を$\textbf{E}_A(V)$と表す。$V$は$\textbf{E}_A(V)$-加群である。
  • $A$を$F$-代数とすると、$A$は自然に$A$-加群となる。(つまり、$A$を$A$に右作用させる)これを$\text{regular}\ A-module$とよび、$\mathring{A}$と表す。
  • $A$の右イデアル$I$は$\mathring{A}$の部分加群となる。

既約(irreducible)な加群

$A$-加群$V$が既約であるとは、$V$が$A$-加群として自明な部分加群を持たないことである。(つまり、既約な$A$-加群の部分加群は$\set{0}$と$V$のみである)

シューア(Schur)の補題

$V,W$を既約$A$-加群とし、$\phi:V\to W$が$A$-加群の準同型であるとする。このとき、$\phi$が同型写像であるか、$\phi=0$である。

証明:

$\phi$を準同型とすると、$\ker\phi$は$V$の部分加群である。$V$が既約であることから、$\ker\phi=\set{0}$または$\ker\phi=V$である。$\ker\phi=V$のとき、$\phi=0$である。$\ker\phi=\set{0}$のとき、$\phi$は単射であり、$\phi$は同型写像である。

:

$F$を代数閉体とし、$V$を既約$A$-加群とする。$\textbf{E}_A(V)=F\cdot 1$である。5

証明:

$\phi\in \textbf{E}_A(V)$とする。$\phi$は有限次元ベクトル空間$V$上の線形写像より、$\phi$が零写像でないならば、固有値$\lambda$を持つ。$\phi-\lambda 1$は、$A$-加群の準同型である。$\phi-\lambda 1$は同型写像でない6 から、シューアの補題より、$\phi-\lambda 1=0$である。よって、$\phi=\lambda 1$である。

完全可約(completely reducible)な加群、半単純(semisimple)な代数

$A$-加群$V$が完全可約であるとは、任意の部分加群$W\subset V$に対し、加群$W'$が存在し、$V=W\oplus W'$となることである。

既約な加群は完全可約である。
また、上で加群をベクトル空間に読み替えると常に成り立つ。

代数$A$が半単純であるとは、$\mathring{A}$が完全可約であることである。

マシュケ(Maschke)の定理

$G$を有限群、$F$を標数が$|G|$を割り切らない体とする。このとき、すべての$F[G]$-加群は完全可約である。
(標数とは、1の加法的な位数、ただし位数が無限大ならば0とする)

逆に、任意の$F[G]$-加群が完全可約であるとき、$F$の標数は$|G|$を割り切らない。

補題:
$V$を$A$加群とする。

  • $Vが$完全可約 $\iff V$は既約な加群の直和で表せる
  • $V$が既約加群$V_\alpha$を用いて$\sum V_\alpha$のように表せるとき、$V = \oplus V_\alpha$である。

よって$F[G]$-加群について知るにはすべての既約加群を知るだけでよい。

記法:

$V$を完全可約な$A$加群、$M$を$A$の既約な加群とする。$V$の$M-homogeneous\ \text{part}$を$M(V)$と表し、$M(V)$を$V$に含まれる$M$と同型なものすべての和とする。

補題:

  • $M$と同型な$V$の部分加群全体の個数は分解の仕方によらない。
  • $A$を$F$-代数とする。どんな既約$A$加群も$\mathring{A}$の剰余加群と同型になる。特に$A$が半単純であるとき、それらは$\mathring{A}$の部分加群と同型である。

補題:

$V = \oplus W_i$(ただし、$W_i$は既約な$A$-加群)とし、$M$を$A$の既約な加群とする。このときいかが成り立つ。

  • $M(V)$は$V$の$\textbf{E}_A(M)$-部分加群である。
  • $M(V)=\sum \set{W_i \mid W_i\cong M}$
  • $M$と同型な$W_i$の数は$V$の分解の仕方によらない。(この数を$n_M(V)$と表す)

ウェーダーバーン(Wedderburn)の定理

$A$を半単純代数とすると、$M$を$A$の既約な加群とすると、以下が成り立つ。

  • $M(A)$は$A$の極小イデアルである
  • $W$が既約なら、$W\cong M$でない限り、$M(A)$の元を$W$に作用させると、$0$になる
  • 写像$a \mapsto a_M$4 は$M(A)$から$A_M \subset \text{End}(M)$への全単射である
  • $A$の既約な加群のうち、$V$に同型なものが含まれるものの集合を$\mathcal{M}(A)$とすると、$\mathcal{M}(A)$は有限集合である。

注記:
$A=\oplus_{V\in \mathcal{M}(A)}M(V)$と表せる。各$M(A)$は代数であり、単位元は$A$の単位元$1$の構成要素である。(各$M(A)$の単位元の和が$1$になる)。$a\mapsto a_M$は$A$の代数構造を$M$に移す写像である。

$M \not \cong W$のとき、$M(A)W(A)=0$より、$M(A)$のイデアルは$A$のイデアルでもある。$M(A)$は$A$の極小イデアルより、$M(A)$は単純代数である。(単純代数とは、非自明なイデアルを持たない代数)

標数零の体上の群代数は半単純で、半単純な代数は、単純な代数$M(A)$の直和で表される、$M(A)$は$A_M$と同型なので、$A_M$のみを考えればよい。

Double Centralizer Theorem

$A$を半単純代数とし、$M$を$A$の既約な加群とする。このとき、$D = \mathbf{E}_A(M)$5 とすると、$\mathbf{E}_D(M)=A_M$である。
(まず、$M$は$D$-加群であり、$\textbf{E}_D(M) \supset A_M$である。本定理は、$\textbf{E}_D(M) \subset A_M$を示している)

:

$A$を代数閉体$F$上の半単純代数、$M$を$A$の既約な加群とする。以下が成り立つ。

  • $A_M=\text{End}(M)$
  • $\dim(A_M)=\dim(M(A))=\dim(M)^2$
  • $n_M(\mathring{A})=\dim(M)$
  • $\dim(A) = \sum_{M\in \mathcal{M}(A)}\dim(M)^2$
  • $\dim(Z(A)) = |\mathcal{M}(A)|$

表現(Representation)

$A$を$F$-代数とする。$A$の表現とは、代数準同型$\mathfrak{X}:A\to M_n(F)$である。

2つの表現$\mathfrak{X},\mathfrak{Y}$が同型とは、$\mathfrak{X}$から$\mathfrak{Y}$への$F$-線形写像$\phi:M_n(F)\to M_n(F)$で、$\phi\circ\mathfrak{X}=\mathfrak{Y}$となるものが存在することである。($\phi$の表現行列を$P$とすると、任意の$a\in A$に対し、$\mathfrak{X}(a) = P^{-1}\mathfrak{Y}(a)P$となる)

次に、表現と加群の関係について述べよう。

実際のところ、表現と加群は1対1に対応する。

  • 表現から加群を作る:

    $\mathfrak{X}$を$A$のn次表現とすると、$V = F^n$(横ベクトル)に$A$の作用を次のように定義する。
    $v\in V, a\in A$に対し、$v\cdot a = v\mathfrak{X}(a)$とする。このとき、$V$は$A$-加群となる。

  • 加群から表現を作る:

    $V$を$A$-加群とすると、$V$の基底を一つ選び、$a\in A$に対し、$\mathfrak{X}(a)$を$V$の基底に関する$a$の行列表示とする。このとき、$\mathfrak{X}$は$A$の表現となる。

表現が同値であることと、対応する加群が同型であることは同値である。

表現が既約であることも、加群が既約であることと同値である。

  1. $1 \neq 0$ が成り立つ環、零環でない環

  2. この本では、$fg(x)$でなく、$(x)gf$と表すことがある。

  3. $\text{End}(V)$は、$V$の線形写像全体の集合

  4. $a\in A$に対し、$a_V:V\to V$とは、$v\mapsto v\cdot a$という作用による線形写像のこと。 2 3

  5. $\textbf{E}_A(V)$とは、$\text{Hom}_A(V,V)$のこと。 2

  6. 固有ベクトルがゼロベクトルに送られるので、逆写像が存在しない。

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