2025年4月よりAzureを触りだしたので、思ったことをつらつらと。
はじめに
Azure Functions を活用したアプリケーション開発において、Cosmos DBとの接続は頻繁に発生します。しかし、Function App が複数に分かれたり、Function数が増えると、Cosmos DBへの接続構成が複雑になり、Private EndpointやDNSの管理が煩雑になります。
そこで本記事では、Cosmos DBアクセス専用のFunctionを1つに集約する設計アーキテクチャについて、その利点・構成・考慮点を解説します。
構成の課題:FunctionごとにCosmos DBへ直接アクセスする場合
- 各Function Appごとに Cosmos DB への接続が発生
- Private Endpoint(PE)をFunctionごとに構成しなければならない
- Private DNSのリンク、NSG/UDR設定、コストもFunction数に比例して増加
- 管理・保守・トラブルシュートが煩雑化
解決策:Cosmos DBアクセス用の専用Functionを1つに集約!
アーキテクチャ構成
+-------------------+ HTTP/API +-----------------------------+
| Function A |---------------->| |
| Function B | | Cosmosアクセス専用Function |
| Function C |---------------->| (PE + DNS構成済) |
+-------------------+ +--------------+--------------+
|
v
[ Cosmos DB ]
メリット
- Private Endpointを最小限(1つ)にできる
- データアクセスの責務が明確化し、設計がシンプルになる
- 他のFunctionからはHTTP/API通信で呼び出すだけなので、Functionの追加・変更が容易
- セキュリティポリシーやNSGも集中管理可能
実装上の考慮点
通信方式
- Functions間は HTTPまたはManaged Identity経由の呼び出しを推奨
- 必要に応じてFunction KeyやAPIMなどで認証制御
スキーマ管理
- Cosmosアクセス専用Functionは **明確なAPI契約(JSONスキーマなど)**を持たせると運用がスムーズ
ネーミングと設計方針
-
CosmosProxyFunctionApp
などの名前で明示 -
/api/cosmos/queryItem
や/api/cosmos/upsertDocument
のようなREST設計で統一
レイテンシ
- Functions間の通信は 同一リージョン+バックボーン経由ならmsオーダーで影響はほぼない
拡張性と保守性の向上
- Function追加時にCosmos接続処理を実装し直さなくてよい
- Cosmos DBの構成変更(DB名・パーティションキー等)もProxy Functionのみ修正で済む
- 将来的に APIMやgRPC、Service Bus経由にリファクタリングしやすい
パフォーマンスとスケーリングの最適化
Azure Functions(特に従量課金型)の課題として知られる「コールドスタート」は、
アプリケーションの応答性に大きく影響します。これを軽減する上でも、Cosmos DBアクセスを1本に集約する構成は効果的です。
コールドスタートとは?
- Azure Functions は、一定時間アクセスがないとインスタンスを停止します。
- 停止状態から再起動する際に、数秒〜十数秒の遅延が発生します。
なぜ集約構成でコールドスタートが起きにくくなるのか?
- 全てのリクエストが Cosmos DB 専用Function に集中するため、
- この Function は 常にトラフィックが流れる「水が流れる構造」 となり、
- スケールインされにくく、ウォーム状態が維持されやすいのです。
分散構成との比較:
構成 | コールドスタートの可能性 | 備考 |
---|---|---|
各Functionが分散してDBに直接アクセス | 高い | 呼ばれないFunctionがコールドになる |
Cosmos DBアクセスを1本に集約 | 低い | 常にリクエストが流れているためインスタンス維持されやすい |
結果として、応答時間の安定性・パフォーマンス向上にもつながる構成となります。
まとめ
観点 | 集約型アーキテクチャのメリット |
---|---|
コスト | PEやDNS構成が最小限で済む |
運用 | Cosmosアクセスを1箇所で管理可能 |
セキュリティ | NSGや認証制御が一元化できる |
拡張性 | 新規Function追加がスムーズ |
Azure Functions が複数ある構成でも、Cosmos DBアクセスは専用Functionにまとめることで、セキュアかつスケーラブルなアーキテクチャが実現できます!
今はベストな整理構成を未来の自分にプレゼントする時代!
設計の一手間が、開発効率と運用安定性を何倍にもしてくれるよ。