この記事は、Craft Eggアドベントカレンダー2022、6日目の記事です。
5日目は重谷康輔さんの『プロジェクトで起きる問題への向き合い方 ~今日この問題を伝えてくれてありがとう!~』でした。
株式会社Craft EggでUnityエンジニアをしています東です。
私は現在キャリアとしては二年目ですが、インゲーム・アウトゲームの開発にくわえ、社内活性化や採用活動へのコミットなど、様々な業務に携わらさせていただいています。
ゲーム開発人材の採用活動にあたっては、以下のような質問をよくいただきます。
私はゲームエンジニアを目指しているのですが、現在、大学院に進学するか学部卒で就職するか悩んでいます。どちらの方が良いでしょうか?
本記事ではこちらについて、自分なりに感じたメリット・デメリットを書かせていただこうかと思います。(スマホゲーム業界に所属する一個人としての見解となります)
■メリット
専門的な知識が身に付く
院進学といってまず初めに挙げられるのはやはり専門知識の深掘りです。
何を専攻するかにもよりますが、中でも画像処理系やソフトウェア工学系の分野は相性が良いのではないかと思います。また、専攻内容を直接業務に活かせなかったとしても、深い知識があれば、「それをどこで活かせるか?」などといった応用力が身に付くはずです。
コンピュータサイエンス全般の知識が身に付く
何か一つの分野を深掘りするとはいえ、研究していく上ではさまざまな知識が必要になります。
私は、VRやARといった分野の専攻でしたが、研究の際にはUnityを使用するだけでなく、Pythonを使ってサーバを用意して外部のAPIを利用したり、Dockerで環境を構築したり、実験結果の統計処理のためにPythonやRといった言語を使用しました。これにより、業務でのアセットの置き換え作業やテストなど、何かしらを自動化するにあたってShellやPythonを触ることもありましたが、すんなりと入っていくことができました。
数学や英語への抵抗が薄くなる
研究を行う上で、数学や英語の知識は必須と言っても良いでしょう。
私自身、日々英語の論文を調査し解読していましたし、三角関数や行列演算を用いたプログラムを書いたりしてきました。
ゲームを作っていると、数学的な処理や、日本語の資料が少ない外部ライブラリを使用するケースも少なくありません。そういった時に抵抗を感じずに自走できるような能力が身に付くと思います。
事象の調査能力・資料の作成能力・タスク管理能力などの素養が身に付く
日々、答えのない問題と向き合う必要があるので、事象の調査能力が身に付きます。わからない問題に直面した時に、どうやって調べて解決すれば良いか、どういった資料を参照すれば良いか、といったスキルが感覚的に身に付きます。
また、ゼミ発表や学会発表などもあるので、資料作成・タスク管理の能力も自ずと身に付いていきます。
■デメリット
キャリアのスタートが遅れる
なんといってもキャリアのスタートが遅れることが最大のデメリットだと思います。
修士卒だと、学部卒で就職した同期はいきなり三年目の先輩になります。開発サイクルが早く流動性の高いスマホゲームの業界だと、ここの二年の差は意外と大きく感じるかもしれません。
とはいっても業務で年次ではなく年齢で評価されるというようなことはないので、私は、本人が気にするかどうかだけの問題だと思っています。
早く実績がほしい、現場で実務経験を積んでいきたい、という人には合わないかもしれません。
金銭的な問題
当たり前ですが、追加で二年学校に通おうと思うと学費がかかります。国立でも入学金と合わせて100万以上はかかります。
私も奨学金を借りて進学した身ですが、この金額は精神的な負担にはなります。
ただ一方で、その分の経験をできたとも思っているので、これも、本人が気にするかどうかの問題だと感じています。
その他
就職に有利になるかどうか
会社によるのかもしれませんが、個人的な体感としては特に有利になったり不利になったりすることはないです。
ただ、就職活動まで期間が二年長いこと・整った環境で専門的な活動を行えることを考えると、研究や学問に向き合う時間が増えるだけでなく、単純に時間的猶予ができるという意味でも、実質的に有利になるという側面はあるかもしれません。
最後に
ゲームエンジニアは業務としてゲーム作りに勤めますし、院生は一研究者として世の中の謎や新しい発見に向き合います。
学部卒であれば早めに現場でゲームエンジニアとしてのキャリアを積むことができますし、院卒であれば、広く深い知見や洞察を身に付けることができるかと思います。
将来のことを考えるとどちらが自分に得があるか悩んでしまうと思いますが、最終的には自分のワクワクする方を好奇心で選んでみるのが一番かと思います。