はじめに
Microsoft Entra テナント に対して、カスタムドメイン を構成したい場面があるとおもいます。
通常は、ドメインを取得するには レジストラでドメインを購入して、外部DNSサーバーを運用する必要があります。つまり他社のサービスと組み合わせて利用する必要があります。
しかし、今回の記事では「App Service ドメイン」を使って ドメインを購入し、「Azure DNS ゾーン」で 外部 DNSサーバー を運用し、Microsoft Entra テナント の「カスタムドメイン」を構成するという方法を ご案内したいと思います。
つまり、テナント、ドメイン、外部 DNS が、Microsoft で完結できる方法となります。
カスタムドメイン とは?
Microsoft Entra テナント では、テナントを取得すると、"xxx.onmicrosoft.com" という形式で ドメイン名が発行されます。"xxx" の箇所を任意で選べはしますが、自社のドメイン名を使う事はできないため、企業のブランディングや 社員のメールアドレスとして使うには、あまり適切な状態とは言えません。
そのため、各企業が独自に取得したドメインを テナント に割り当てて使う事が可能です。
その機能が "カスタムドメイン" というサービスとなっています。
以下の記事にて、機能の紹介と ドメイン取得 や 外部 DNS サーバー の選択について まとめて解説しています。
本記事では、上記の記事で紹介している いくつかの選択肢のうち、 Azure(App Service ドメイン と DNS ゾーン)をつかう方法を説明しています
App Service ドメイン とは?
通常は、外部レジストラ(JPRS や お名前ドットコムなど)で 外部ドメインを購入するのが一般的です。
しかし、App Service ドメイン を使うと、ドメインを Azure で購入する事が可能になります。
そのため、外部サービスを一切使うことなく、ドメイン を保有することができる、なかなかスゴイサービスです。
App Service ドメイン で購入できる ドメイン は、"com、net、co.uk、org、nl、in、biz、org.uk、co.in" に限定されています。
".co.jp" などの JPドメイン は購入できません。
App Service ドメインは、以下の公開情報でしか説明が見当たらないのですが、この内容を見ても判るように、Azure の "App Service" という Webサイト で利用するために用意されたサービスだと考えられます。
上記サイトの "前提条件" の説明では、"App Service" が必要であることが書かれていて、これを真に受けると 混乱してしまいます。
しかし、単に App Service ドメイン で購入したドメインを テナントの カスタムドメイン として利用する場合は、特に制限はありません。
この記事の手順を参考に 作業を進めていただけば、構成できますので、ご安心ください。
なお、App Service ドメインは、非常に安価(年間で 1,800円弱)ではありますが、有料のサービスです。
(上記画面は、以下の URL「App Service ドメイン の価格」より抜粋)
https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/app-service/windows/
Azure DNS ゾーン とは?
Azure で提供される 外部DNS のサービスです。
外部レジストラで購入した ドメイン を使って、Webサービスの ホスト名 を DNSの機能を使って公開することができます。
外部レジストラで、"xyz.co.jp" どいうドメインを購入した場合は、DNS ゾーンで xyz.co.jp のゾーンレコードを構成しておきます。
そして、外部レジストラには NSレコードを構成してもらい、"xyz.co.jp" ドメインの名前解決を Azure DNS ゾーン に 委任してもらいます。
DNSゾーンでは、A レコードとして www = 203.154.25.4 というレコードを発行することで、www.xyz.co.jp という FQDN 名の Webサイト(IP=203.154.25.4) を外部に公開することが可能になります。
通常は 外部レジストラで購入したドメインを使うのですが、実は "App Service ドメイン" で購入したドメインも使える・・・というのがミソです。
そのため、App Service ドメイン と、DNS ゾーン を組み合わせることで、Microsoft Entra テナント の カスタムドメイン を構成するための要件を満たすことができます。
前提事項
本作業を行う前に必要なもの
① Microsoft Entra テナント の手配
以下の記事を参照して、Microsoft Entra テナントを 手配してください。
② Azure サブスクリプション のサインアップ
以下の記事を参照して、Azure サブスクリプション を手配してください。
③ App Service ドメイン を 購入し DNSゾーンを作成する
以下の記事を参照して、Azure Service ドメイン を手配してください。
カスタムドメイン の構成手順
(操作概要)
- Microsoft Entra ID で、カスタムドメイン名 を作成する
- カスタムドメイン名 に表示された TXTレコードの情報を DNSゾーン に登録する
- カスタムドメイン名 を プライマリ に変更する(任意)
- 既存ユーザーの ユーザープリンシパル名 の変更
- カスタムドメイン名で サインインのテスト
- Microsoft 365 サービスのための DNS 設定を行う
1. Microsoft Entra ID で、カスタムドメイン名 を作成する
- 事前に作成済みの Microsoft Entra テナント のアカウントを使って、Azure Portal に サインイン します。
https://portal.azure.com
- 以下のテナントの画面で、意図したテナントになっているのかを確認して、「カスタムドメイン名」を押します。
- 下図の通り、初めは xxx.onmicrosoft.com という 既定のドメイン名 だけが 一覧に存在しています。ここで、「+カスタムドメインの追加」ボタンを押します。
- さきほど App Service ドメイン で発行した ドメイン名 を下図の通り入力し、「ドメインの追加」を押します。
- 下図のように 表示されれば OK です。
まだ「確認」ボタンは押さないでください(押すとエラーになります)
なお、稀に、このタイミングで ドメイン名が 他人に使われていて 利用できない旨のエラーが出る事があります。過去に 他の利用者によってテストなどで利用され そのまま放置されている場合が考えられます(ドメインとしては解放されているが、テナント側では残っている状態)
その場合は サポートに問い合わせて 対応を依頼してください。
このタイミングで「確認」ボタンを押すと、該当のドメイン内に TXT レコードが存在するかどうかのチェックが行われます。しかし まだ Azure DNS ゾーン に TXTレコードの登録が行われていないため、エラーが発生します。
2. カスタムドメイン名に表示された TXTレコードの情報を DNSゾーン に登録する
- 下図のとおり、左側に テナントのカスタムドメイン名 の画面、右側に Azure DNS ゾーン の画面を表示させます。
赤枠の「+レコードセット」を押します。
- 下図の通り、左側の画面の値を、右側の画面の同じ色の場所に転記して「OK」を押します。
なお、TTL の 3600 秒は、1 時間 を意味しています。
- 以下の赤線のように TXT レコードが追加されたら、左側の「確認」ボタンを押します。
- 通知欄に「ドメイン名の確認」が正常に行われた旨が表示されます。
左上部の「カスタムドメイン名」の箇所をクリックします。
ここでエラーが出た場合は、DNSの反映よりも早く操作してしまった可能性があるため、少し待ってから「確認」を押してみてください。
※この画像のみ、作業時の画像を紛失したため、別の作業時に取得した画面を使用しています。
- 以下のように、一覧に 取得した 赤枠(カスタムドメイン名)が追加されていれば OK です。この時点では、緑枠 のように 既定のドメイン名 (xxx.onmicrosoft.com) が "プライマリ" になっています。
反映が遅れる場合があるので「更新」ボタンを押してみてください。
以上で、テナントに カスタムドメイン名 が追加され 利用できる状態になっています。
3. カスタムドメイン名 を プライマリ に変更する(任意)
さらに お勧めの設定は、カスタムドメイン名 を プライマリ へ変更することが挙げられます。
新規ユーザーを追加する際に、「プライマリ」に設定されているドメイン名が 自動で選択されるようになります。
- 以下の画面で、赤枠のドメイン名の箇所を クリックします。
- 以下の画面で「プライマリにする」を押します。
- 以下の確認画面で「はい」を押します。
- すると、以下のエラーの通知が届くのですが、気にしなくても大丈夫です。
ここでエラーが出るのは、数年前から バグ みたいで改善されていないようです。
- 以下の画面で、カスタムドメイン の方が「プライマリ」に変わっていれば OK です。
4. 既存ユーザーの ユーザープリンシパル名 の変更
既に、作成済みのユーザーであっても、ドメイン名の変更が可能です。
- Microsoft Entra テナント の「すべてのユーザー」を表示して、変更したユーザーの 緑枠 の箇所を押します。
- 下図の画面で、赤下線 を見ると 既定のドメイン名(xxxxx.onmicrosoft.com)になっています。
「プロパティの編集」を押します。
- 下図の画面で、赤枠を押してから、一覧表示されたドメイン名から 橙枠(カスタムドメイン名)を選択します。
※キャプチャは qiitatest.0am.jp になっていますが、carol226.com に読み替えてください。
- 以下の赤枠のように変更されたことを確認して「保存」を押します。
- 下図のように、ドメイン名 が変更されたことを確認します。
5. カスタムドメイン名で サインインのテスト
以下のように、カスタムドメイン名を使って、Azure Portal にサインインできることを確認します。
- 既存のブラウザセッションは、サインアウトし、その後 Azure Portal にアクセスします。
https://portal.azure.com
- 下図の通り、新しいカスタムドメイン名を付与した ユーザー名 でサインインします。
- 以下の通り、新しいドメイン名で サインイン する事ができました。
6. Microsoft 365 サービス のための DNS 設定を行う
前章までの設定で カスタムドメイン名 を使って テナントへサインインすることができますが、その他 の Microsoft 365 サービスを利用するためには、それ以外にも設定が必要です。
この設定を行っていないと、メールボックスに メールが届きません。
- Microsoft 365 管理センター へ テナントの グローバル管理者でサインインします。
https://admin.microsoft.com
- 左ペインから、「設定」-「ドメイン」を選択して、赤枠(カスタムドメイン名の箇所)をクリックします。
- 以下の画面で、「セットアップを続ける」を押します。
- 以下の画面は、「続く」を押します。
なお、緑枠のリンク先は 以下の URL になっていました。
https://learn.microsoft.com/ja-JP/microsoft-365/admin/get-help-with-domains/dns-basics?view=o365-worldwide&WT.mc_id=365AdminCSH_inproduct
- 以下のように 取得したカスタムドメインに関して、外部DNSに 追加すべき DNSレコードが表示されます。これらの情報を 後述する Azure DNS ゾーン に設定します。
- 前項で示した図内の色枠に合わせて、以下の通り Azure DNS ゾーン に値を設定して「OK」を押します。
- 前項で示した図内の色枠に合わせて、以下の通り Azure DNS ゾーン に値を設定して「OK」を押します。
- 前項で示した図内の色枠に合わせて、以下の通り Azure DNS ゾーン に値を設定して「保存」を押します。
- Microsoft 365 管理センター の画面に戻り、「処理中」のボタンを押します。
- テナント側から、Azure DNS ゾーン に追加されたレコードのチェックが行われて、問題がなければ 以下の画面になります。
- もし、レコードのチェックでエラーがあると、以下のような画面になります。エラーになったレコードに関して、 Azure DNS ゾーン へ登録したレコード内容を チェックしてください。
以下は、3レコードとも 未登録の状態で チェック を行った場合です。
- 正常に登録されると、以下の画面で「状態」が「正常」になります。
- 最終的に Azure DNS ゾーン には、以下のレコードが登録された状態になっています。
以後、このテナントでは、新しいドメイン名を使って、Microsoft 365 のサービスを利用することができます。
(参考/手順 2: DNS レコードを追加して Microsoft サービスに接続する)
https://learn.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/admin/get-help-with-domains/create-dns-records-at-any-dns-hosting-provider?view=o365-worldwide#step-2-add-dns-records-to-connect-microsoft-services
さいごに
この記事で紹介をさせていただいたとおり、App Service ドメイン と Azure DNS ゾーン を利用する事で 他社サービスを使うことなく、カスタムドメイン の構成を 構成することができます。
Next Step
カスタムドメインの構成が終わったら、次は テナント で ライセンスを購入して、Microsoft 365 のサービスの利用を試してみましょう(無料試用版の説明も記載してあります)
参考情報
App Service ドメイン ではなく、無料の MyDNS を使って、カスタムドメインを構成することも可能です。以下の記事で紹介していますので、併せて参照ください。