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SORACOMDay 4

WIo LTE ケースのLTに出していない話


WIo LTE ケースのLTに出していない話


はじめに

LTで何回かお話させていただいたWio LTE用ケースの話を制作サイドから書いてみようと思います。そもそもSORACOMと関係あるのかといわれるとちょっと疑問ではあるのですが、他にネタが尽きているのでご勘弁を。。。


Wio LTEとは

Wio LTEについては既に皆さまご存知かとは思いますが簡単に説明を。

Seeed社が開発してSORACOMさんが販売している、IoT向けのLTE通信モジュール搭載の組み込みボードです。

https://soracom.jp/products/module/wio_lte/


Wio LTE用ケースとは

Wio LTEは基盤だけの販売なので、扱うときにむき出しの基盤を触ることになります。流石に基盤むき出しは不都合が多いので、専用のケースを開発しました。

現在DMM.makeのクリエイターズマーケットにて販売中です。


ここからが本題

LTは割と軽めのノリで話していますので、今回は想定環境や設計思想に関してまじめに書いてみようと思います。


設計思想

SO-0001とSO-0003は「お客様のもとへご提案に伺う際の格納用ケース」という位置づけの製品です。そのため、アンテナやセンサー類はすべてケースの中に格納されることを想定しています。センサー類は1x2程度の小型のものであれば上部スリットに縦に差して使えるように、2x2以上の大型のものは横にしてスリットにビスあるいはM2もしくはM3程度のねじで固定することを想定しています。

SO-0002は「開発者が一時的に基盤を保護する、もしくは他の製品に組み込む際の保護」を主たる目的として設計しています。SO-0002を拡張する拡張キット類もプランには上がっていますが、現在検討中という位置づけになっています。


想定環境

ケースはDMM.make側機材の関係で「積層方式のナイロン素材」で出力されます。そのため高温多湿環環境への長期保存の場合に層と層の隙間が剥離を起こす可能性があります。よって、あまり高温多湿になる環境への長期設置は想定していませんが、Wio LTEのボードが持ちこたえる程度の環境には追従できるように考えています。またWio LTEの特性を考えると、農業用ビニールハウスへの設置などが想定されますが、SO-0001やSO-0003はそれを想定としています。

SO-0002は開発者が卓上で使うことを想定していますので、ボードそのものの落下や不用意な接触による静電気、落下物からの保護が必要になる環境を想定しています。室内であれば高温多湿になるという事はあまりないでしょう。


ケースの設計時の工夫とか苦労話


角は可能な限りRを取る

各辺は可能な限りRを取って丸めたほうが引っ掛かりにくくなるので安全ですが、どれくらい丸めるか、出力した際にRが再現できるのか、丸めたことで強度を損なわないかなどの検討が必要です。角を丸め込んだことで内側の加工をどうするかという問題もあります。内側にもRをつけると基盤の角と干渉することもありますので、そこは場合によってはあきらめる必要があります。この場合Rを取っている部分と内側の角の部分に対しての厚さの問題がありますので、強度に対する考慮が必要です。意図的に片方の面を厚くすることで、角からRに対しての最短距離がいびつになるようにし、衝撃を厚い面に受け流せるようにするなどの工夫が必要となります。


面は厚すぎず薄すぎず

ケースの主たる構成要素である各面は厚くすれば強度は増しますがその分重量が増して廃熱や電波の通りに影響を与えます。しかし薄くしすぎると今度は強度が減っていきますのでこの点のバランスが必要です。およそ1.5mm~2.5mmくらいであればバランスが取れますが、構造によっては3mm程度の厚みにしないと支えられないこともあります。


廃熱のエアフローを考える

IoT機器に使うマイコンボードは基本的にファンレスで、ヒートシンクすら搭載していないことが多いです。そのためCPU表面のメタルと空気の接する面のみが熱交換を行いますから、ある程度空気が滞留せず、空気の流れを以て外部との熱交換ができることが好ましいといえます。その際ケースの内部にどの程度の余裕を持たせるかが悩ましいところですが、少なくとも空気がIN/OUTできるようにしておく必要があります。これが小型のケースで完全密封のものを作るのが難しい理由でもあります。金属などの熱伝導効率がよい素材であれば完全密封したケースでも問題ありませんが、熱を遮ってしまう樹脂製素材ですと、CPUの熱暴走につながってくるため、ハードルは非常に高くなります。


内外の配線をどうするか

IoTが単純なノードと比べて難しいところは、何らかのセンサーあるいは駆動系と直接繋がっているところです。つまりボードとセンサーの間にはほぼ確実に何らかの配線がありますから、配線が通ることを事前に想定しておかなければなりません。また多くのボードはUSBなどのポートを使って外部から給電を受けて動作します。特にUSBケーブルは接続部が狭く、曲がりませんので、それなりに大きな開口部を必要とします。またケーブルは突然90度に曲がる様にはできませんので、ある程度Rを考慮しておかなければなりません。そしてUSBケーブル自体も接続部の近くはかなり太いのでその分の余裕を持たせておかないといけませんが、そうするとケースの開口部が大きくなってしまします。そのバランスを取るためにいかにソケットを外に寄せるか、開口部を絞れるか、というところがポイントです。


ボードを支える方法

中に入っているボードをどのように保持するかというのはケースにとってなかなか悩ましいところです。可能な限り衝撃が伝わらないようにするためにはある程度の余裕があった方がよいですが、余裕を持たせすぎると今度はケースの内部でボードが暴れてしまいます。また実装部品やソケット類を避ける必要もありますので、実際にボードを当てながらどこを保持してどこを保持しないかを調整する必要があります。


3Dプリンタ固有の個体差

金型を利用した射出形成などに比べると、都度積層形成を行う3Dプリンタは比較的個体差が出やすい傾向があります。これは3Dプリンタの構造上やむを得ないところですが、これを考慮して3Dモデルを作成しておかないとモノとして使い物にならないものになってしまいます。サイズが大きくなるとある程度ゆとりが出てきますが、小さくなるほど個体差の影響が大きくなってくるため、これをどのようにデザインに落とし込むかというところが難しいところです。例えば接する面を広くするとその分耐衝撃性は増しますが、その反面造形後に面が合わなくなる可能性も増えます。このバランスがどの程度なのかという事は複数回出力して確認してみるしかありません。


SORACOM-UGに寄り添う

SO-nnnnシリーズは基本的に、可能な限り無印のものとSORACOM-UGマーク入りの両方を用意できるようにしてあります。これは「ビジネスですぐに使える無印のもの」と、「プライベートでも工作にいそしむUGの仲間のためのもの」という考えから来ています。(SORACOM-UGのマークは製作者の方のご厚意で使わせていただいております。)

機能上差異があるのかといわれると特にないでしょう。ですが同じ技術に取り組んでいる仲間がいるという事が可視化されるという事は、それそのものに意味があるのではないか、と思っています。SORACOM-UGしかり、各種SORACOMさんのイベントしかり、IoTがつないでいるのは実際には人と人なのかもしれませんね。


ということで、SORACOM Advent Calendar 2018用に、Wio LTEケースの制作に関する内容を書かせていただきました。

機会を頂いたSORACOMさん、ありがとうございました。

少し早いですが、皆様もよいお年を迎えられますように。